2011年:万年桜メンツバレンタイン小説万年桜だった大きな桜の木の下。わいわいと騒がしいのはいつものこと。けれど、今日は少しだけ。いつもと違う様だ。 「はーいっ、皆にチョコレート!」 杏はそう言うと傍らに置いてあった紙袋を一度掲げてから、一人ずつ違うチョコレートを渡していく。 「お、サンキュー」 大介には珍しい生姜チョコレート。 「ありがとな」 純には生チョコ。 「ありがと、杏」 美郷にはチョコレートボンボン。 「わー! ありがとう杏ちゃんっ」 悠にはブラックチョコレート。 「あら、私にも? ありがとう」 カレンにはオランジェだ。 「ちゃんと全員違うんだな……」 「杏は気が聞いてるからだろ? 誰かさんと違って」 大介が感心していると、美郷は杏なら当たり前だと言わんばかりに言って、余計な一言を付け足す。 「んだとお!?」 「誰もお前のことだとは言ってないだろう? 餓鬼」 「んの、クソ姉貴っ!!!」 「ああもう、ここで姉弟喧嘩すんなよ……」 取っ組み合いが始まってもおかしくないような状況に、純は頭を抱えながら呟いた。 「美郷ちゃんも大介ちゃんもチョコレート食べてよー」 ねっ。と杏の微笑み。 「ま、そうだな。せっかく杏がくれたんだから早速頂くよ」 「杏が、言うなら……食うよ」 「うんっ。ありがとー」 二人が杏にだけは弱いんだよな。と、チョコレートを手にすると、えへへーと笑う杏。大介はそんな杏をわしわしと撫でた。照れてんなこいつ。と内心笑うのは美郷だ。 「じゃ、あたしからはこれっ」 そう勇ましく宣言して、チョコレートを渡し始めたのは悠だった。 「手作りだー!」 「頑張ってみました」 「へえ、お前でも作れるんだな」 「何それ酷いよ、大介」 「んなことねーって」 覗きこむ様に悠の後ろからチョコレートを見た大介に、ぷうっと頬を膨らます悠。 そんな悠を余所に、大介はひょいっと悠の持っていたチョコレートを食べた。 「どれ……お、美味いじゃん」 「マジ? じゃ、俺もいただきます」 もぐもぐと食べる大介の感想に、純がもらったチョコレートを一つ口に入れると、 「あたしもいただこうかね」 「杏もー!」 と、次々と食べ始めた。 「ん……? これ、酒とか入ってないか?」 何か普通のチョコと違うぞ。と純。 「え? 別に入れてないけど」 首を傾げる悠に、 「ちょっと悠! これ魔力入ってるじゃないっ!」 「えっ、ホント!?」 カレンが理由を突き止め言った。二人が慌てるのも虚しく 「純―……姉貴がさあー……」 「ちょ、大介。お前どうした!?」 いきなり純に抱きついた大介は涙を流しながら「姉貴が、姉貴が」と繰り返す。そして、顔が真っ赤だった。 「酔ったわね……」 カレンがふぅ……とため息を吐く。 「魔力って酔うものなのー?」 「普通の人からすればお酒に近い感じなのよ」 「ほえー」 「料理にも魔力入れられるもんなのか」 「悠は料理とか作るのに頑張りすぎると、何故か入っちゃうことがあるのよ。そうそうないんだけど」 今回は随分張り切ったのね。と、いつの間にか撃沈していた大介を見ながらカレンは呟いた。 「通りで……あー、ちょっと酔い回ってきた」 純がそう言いながら、ごろん。と横になる。 「純ちゃんも酔ってるのー?」 「まぁ、少しな。大介ほどじゃないけど」 「純はホント顔に出ないね。馬鹿弟と違って」 「や、そんなことないですって。それにしても、美郷さんと杏は何ともないのか……」 「うん。杏は平気―」 「あたしも平気だわ」 少しだけ辛そうな純と爆睡している大介とは違い、二人はなんともなさそうにケロッとしている二人に、すげーなーと感心する純。 「さて、あたしも配っとこうかしらね」 もうそろそろ日も暮れるし。そう言って、カレンはチョコレートを配り始めた。 「ありがとー、カレンちゃん」 杏にはハート型チョコレート。 「ありがとう、カレン」 悠にはブラックチョコレート。 「お、すまんね。あたしまで」 美郷にはコーヒー風味のチョコレート。 「どういたしまして」 そして、 「っ林檎チョコ!! 俺の大好物っ! サンキュー!!」 渡されたパッケージを見た純が珍しく叫んだ。カレンは、杏の言った通りね。と内心小さく笑う。 「そんなに好きなのね」 「ああ! これ以上に美味いチョコはないと俺は思ってる。ホントサンキュー」 「ふふっ、どういたしまして」 来年も林檎チョコレートを買おう。そう決めたのは秘密だ。 「さ、この馬鹿も爆睡してることだし。お開きにすっかねー」 「だなー。俺も帰って寝たい」 「ごめんな……」 美郷の担いだ大介と少しフラフラ歩く純に、悠が小さく謝る。こんなつもりじゃなかったんだけど……と半分泣きそうだった。 「別にいいって。気にすんな。大介もこれぐらいじゃ何も言わねーよ」 「うん……」 元気出せよー。そう言って純はそのまま帰路につく。 「じゃ、また」 「まったねーっ」 美郷の後に元気よく言ってすぐ、杏の体がふわっと浮きあがった。 「わ、わわわっ」 「あら、杏には相性がよかったのね。大丈夫、降りたいと思ったら降りれるわ」 「降りたい降りたい降りたーいっ」 杏が声に出しながらそういうと、すーっと下に降りた。 「どうだった? “魔法”は」 「ふっしぎな感じ! 楽しいけどいきなりは怖いよー」 「ふふふ。それは一時的なものだから、もう飛べたらいいなとか思っちゃ駄目よ?」 途中で落ちたら危ないから。と、カレンは杏に伝える。杏はバレちゃったと笑うってから、 「はーい!」 大きく手を振り上げて、そのまま振った。 あとがきは酔ってません バレンタイン当日と言うことで! 大介はきっとお酒にも弱いです。そして泣き上戸。 多分杏と美郷さんがいい勝負で杏の勝ちじゃないかなー・・・(お酒の強さ) しかし、頑張って書いてみたんですが、即席過ぎてあれです。 本当に載せていいのかこれ・・・ 多分今週中にはいったん消します。多分。 またその内ちゃんと書き直してもっかいあげたいです。 あー、早く万年桜の下も完結させなきゃっ。 2011.02.14. ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|