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ケングルーヴが出したDVD戦場ロマンシリーズ独編 第3弾のひとつ「グストロフ号の悲劇」。一般的にはガストロフ号と言っているが、このDVDではグストロフ号となっている。このガストロフ号はナチス党員ガストロフ(暗殺された)にちなんで名付けられたドイツ民族の象徴として建造された客船で、ナチ党支持者であれば格安の費用で平等に船旅が楽しめるという国家意識高揚の宣伝でもあった。1945年の1月にはソ連軍の侵攻から逃れようとする東プロイセンの難民を大量に乗せてドイツ本国に向けて出港するが、ソ連潜水艦によって撃沈され多くの市民が死んでいったという史実に基づいて製作されている。映画中では乗客は6000名となっているが、後の調査で10000人は乗っていたとされているそうだ。
さて、この映画はベルリンの美貌の女性アナウンサー「マリア」を主人公としている。マリアが同僚の婚約者クルトと戦前の1939年に豪華客船グストロフ号でクルーズしている場面から始まる。まだ、戦前でのどかな時代だ。しかし、対連合軍、対ソ連と戦争が始まり、結婚したクルトも戦地に赴いてしまう。マリアはクルトの両親とベルリンに住むが、毎夜の空襲などに精神共々疲れ、ふとした隙に友人の従兄弟ハンス(海軍中尉)と寝てしまい、子供を身ごもってしまう。マリアは罪の意識にさいなまれ、東プロイセンのラスヴェーゼンに疎開している友人宅に身を寄せ、子供を産む。しかし、東プロイセンもソ連軍に侵攻され、負傷した夫クルトと出会い、ともに海路で東プロイセンから脱出を図るが、これが奇遇にもあのグストロフ号であり、乗船している船員はあのハンスだった。そして、運命の潜水艦雷撃。 とにかく、いろいろな事象が複雑に絡んでいる。しかし、話の筋にあるのものは、戦争に翻弄されるマリアの姿である。銃後を守る女性の苦しさ、つらさ、そして甘さ。戦争さえなければ狂うことなかった人生を描いている。気丈にふるまうマリアを演ずるソニヤの演技力も素晴らしい。また、疎開先で世話を受けるロイス男爵夫人も名演技である。毅然としたプロイセン貴族らしさを見事に演じている。このほか、様々な女性を登場させ、銃後の女性の混乱をひとつの戦争背景として浮き彫りにする。そして、グストロフ号の悲劇が悲惨さに輪をかける。たしか、ロイス男爵夫人の台詞だったと思うが、「この戦争の責任は女にもある。男どもを勇敢だの名誉だのとはやし立てて送り出したのは女だからだ」というような内容の台詞がある。この映画に見事にマッチした見事な台詞である。 1959 西ドイツ 監督:フランク・ヴィスバール 出演:ソニヤ・ズィーマン、エリック・シューマンほか 97分 モノクロ 興奮度★★★ 沈痛度★★★★ 爽快度★★ 感涙度★★ ガストロフ号の悲劇 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004年05月04日 10時00分29秒
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