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2007年06月19日
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カテゴリ:戦争映画
ビデオ2006 ドイツ  監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演者:ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホほか
138分 カラー 



 映画館へ見に行ってきました。比較的抑揚のない映画でしたが、かなり良かったです。感動的でもあるし、政治史的にも興味深いものでした。もうすぐ、DVDも出るようですので是非ご覧あれ。

  1989年のベルリンの壁崩壊まで存在した社会主義国家、ドイツ民主共和国(DDR)、通称東ドイツで、恐怖社会を作り上げた秘密警察(国家保安省)シュタージ(STASI)を題材にしたヒューマンドラマ。シュタージは、ドイツ社会主義統一党の独裁を維持するため、反抗分子や危険分子を徹底的に排除・監視するために組織され、正規局員1万9000人のほかに、密かに密告する非公式協力者(IM)が17万人も存在したとされる。こうした非公式密告システムは、北朝鮮、中国、旧ソヴィエトなどの共産主義国家には必ず存在するもので、自由や文化を徹底的に束縛し、さらには生命さえも脅かす恐怖の根元となっている。ベルリンの壁崩壊から20年近くになるにも関わらず、シュタージの存在はいわばタブーのようにされてきており、こうした映画等で公然と著されるのは珍しい。2006年度アカデミー外国語映画賞受賞。
 今なお旧東ドイツ出身者と西ドイツ出身者の格差や差別は顕著であると言われるが、本作は主役のシュタージ所属大尉役を、東ドイツ出身で、自らも妻の密告でシュタージの監視を受けていたというウルリッヒ・ミューエが演じる。製作関係者にも東ドイツ出身者がおり、若き監督はシュタージに関する徹底的なリサーチをこなしたとされる。それだけに、演じられる内容は実にリアルで真に迫るものがあり、シュタージの呪縛から解放された東ドイツ出身者の傷ついた心と、それを融和させていこうとする社会の変革までを描くことに成功している。
 
 本作は、詳細なリサーチによって製作されているが、ドキュメンタリーではない。実在した人物をモデルにはしているようだが、むしろ登場人物を普遍化することによって、視聴者を映画に同化させることに成功している。国家権力側であるシュタージ職員と監視対象となる文化人たちの構図は、まさに好対照で、東ドイツ国家の縮図でもある。シュタージはもちろん悪玉ではあるのだが、登場人物を単なる善玉、悪玉感で描いていないのも好感だ。
 主役であるシュタージのヴィースラー大尉は、寡黙な中年男なのだが、我々自由主義社会の人間とは異なる無機的な人物を演じる。密告社会で誰も信じることが出来ず、一人孤独な暮らし。性欲のはけ口はシュタージ専属売春婦。システムの歯車として機械的に監視をこなすことだけが、自分の身を救うのだ。ひたすら、他人の性生活まで覗き続ける姿は、まるでストーカーか変質者のような気色悪さを覚える。もし、我々が社会主義国家に身を置いたら・・・、そんなことを想像させるおぞましい姿だ。
 一方、監視対象の脚本家のドライマンと恋人である女優のクリスタらは、文化人らしく豊かな感情をもって行動する。しかし、それでいて体制の監視に怯え、時と場合によっては体制を利用するしたたかな生き方も見せる。西側文化への憧憬と自身のプライドが、監視という閉塞感の中、行き場のない葛藤として描かれる。
 その血も涙もないヴィースラー大尉が、ドライマンとクリスタを監視していく過程で、次第に心の変化を見せはじめていくのだが、そのきっかけや行動は実に劇的だ。ドライマンの部屋から持ち出した東ドイツの芸術家ブレヒトの詩集。監視のヘッドホンから流れてくる、「善き人のためのソナタ」。この曲を本気で聴いた者は、悪人にはなれない、という言葉通り、大尉は溶けていく氷のように人間味を取り戻していく。体制に身を任そうとするクリスタを、一ファンとして思いがげず諭してしまう瞬間、彼のささやかな憧憬は、次第に命さえ厭わない大きな希望へと変わっていく。寡黙にそして時に雄弁に・・・。
 ベルリンの壁崩壊後は、東ドイツ国民にとっては必ずしも希望ばかりではなかった。ヴィースラー大尉もまたそうであり、本作は感動的なエンディングで生きる希望を与える。淡々とした流れの中でサラリと演じられるこのシーンは、たった十数秒の出来事ではあるが、まさに旧東ドイツ国民の希望と未来を象徴しているかのようだった。

 本作は、ヒューマンドラマとしてはかなり完成度が高い。登場人物の量や性格付けが適度で、無駄なシーンが少ない。無機的なシュタージと感情豊かな文化人の対比も鮮やかで、人々の刻々と変化する心境の変化も刺激的だ。主役のヴィースラー大尉役のウルリッヒ・ミューエは、最後まで一度も笑みを漏らさぬ寡黙で平凡な中年男を快演。女優クリスタ役のマルティナ・ゲデックは40歳過ぎとは思えぬ、妖艶でかつ存在感のある名演技。また、「善き人のためのソナタ」をはじめ、挿入される音楽はガブリエル・ヤレドの手によるもので、物語にマッチしている。2時間を超える作品にも関わらず、しっかりと見入ってしまった。
 さらに、本作は政治的な題材としても完成度は高いと言える。詳細な国家保安システムについては解説されていないが、大臣、国家保安省部長(中佐)、局員である大尉の関係、シュタージの秘密監視の手法、それに怯えるシュタージ職員自身を含めた国民の動揺などが良く伝わってくる。
 こうした意味で、本作は東西ドイツの融合を象徴する歴史的作品となったのではないだろうか。

興奮度★★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★★
感涙度★★★★


!(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)
 1984年の東ドイツ。東ドイツのシュタージ(国家保安省)職員のヴィースラー大尉は、職務に忠実な寡黙な中年男だ。演劇脚本家ドライマンの恋人である女優クリスタに目を付けたヘムプフ大臣からの命令で、シュタージ文化部長のグルビッツ中佐は、ドライマンの反体制的証拠を見つけ出すよう命じられる。大臣に取り入って出世を目論むグルビッツ中佐は、ヴィースラー大尉に命じ、ドライマンの部屋に盗聴器を仕掛け、屋根裏部屋の監視室を設けて監視を始める。
 ドライマンとクリスタの生活を監視するドライマンと部下の軍曹は、彼らの会話と性生活までを詳細に記録し報告する。しかし、集まる反体制文化人とは裏腹に、ドライマンの反体制的な証拠は見つからない。ドライマンらの楽しげな生活を24時の監視し、一人家に帰るヴィースラー大尉は、娼婦を呼んで性の満足を得ようとするが、空しさを覚える。
 クリスタはヘムプフ大臣に強制的に関係を求められ、女優生命を絶たれる恐怖から断り切れない。これを知ったヴィースラー大尉はドライマンに情事を目撃させ、二人の仲を悪化させようとする。また、ヴィースラー大尉はドライマンの部屋からブレヒトの詩集を拝借して読む。次第に大尉の中で何かが変りはじめる。
 シュタージから目を付けられ、仕事が禁止されていた演出家のイェルスカが自殺する。友人だったドライマンは衝撃を受け、イェルスカが残した「善き人のためのソナタ」を弾く。この曲を本気で聴いた者は、悪人にはなれない、とされるその旋律をヘッドホンで盗聴していたヴィースラー大尉の目から涙がこぼれる。
 ある日、大臣に呼ばれて出かけようとするクリスタをドライマンが引き留める。しかし、女優生命のためにドライマンを振り切って家を出て行く。一部始終を聞いていたヴィースラー大尉は、バーでクリスタに遭遇し、一ファンとして大臣のもとに行くべきではないと諭す。クリスタは心を動かされてドライマンのもとに戻る。
 イェルスカの死が公表されないことに怒りを覚えたドライマンは、ついに反体制活動に手を染め始める。東ドイツの自殺率が高いことを西ドイツの雑誌に投稿しようというのだ。盗聴で反体制家たちとの作戦の一部始終がヴィースラー大尉の耳に入ってくる。しかし、ヴィースラー大尉は報告には台本を書いていると嘘の記述を記す。さらに、共に監視を続けていた軍曹を担当からはずすようグルビッツ中佐に頼み、単独での監視を始める。
 ドライマンらは家が監視されていないかどうかを試すため、偽の越境計画を流す。ドライマンは本部に連絡しようとするが、今回だけは見逃してやると通報しない。ドライマンらは監視されていないと確信し、タイプライターを持ち込んで本格的な原稿作りに着手する。原稿は西ドイツに持ち込まれて掲載される。グルビッツ中佐はヘムプフ大臣から叱責を受けるが、ヴィースラー大尉は心当たりがないとしらを切る。
 大臣はクリスタがやってこないことに腹を立て、薬物使用の罪で逮捕させる。クリスタは自身の保身から、記事についてドライマンの関与をほのめかしてしまう。グルビッツ中佐はドライマンの家宅捜索をするが、証拠品のタイプライターを見つけることが出来ない。そこで、ヴィースラー大尉に進退をかけて尋問させることとなり、クリスタとヴィースラーは再会する。ヴィースラーの尋問についにクリスタが隠し場所を吐いてしまう。グルビッツ中佐はすぐさまドライマンの家へ急行する。しかし、隠し場所のはずの敷居下からはタイプライターが見つからなかった。実はヴィースラー大尉が先回りしてタイプライターを他に移動したのだ。釈放されたクリスタだったが、裏切ったという自責の念で大通りに飛び出し、トラックに轢かれて死亡する。ヴィースラーは、降格され地下の郵便検閲業務に追いやられる。1989年のベルリンの壁崩壊をヴィースラーは地下の郵便業務室で聞く。

 ドライマンは、クリスタのショックから、ドイツ統一後に脚本を一つも手がけていなかった。数年たってシュタージの記録が公開されるようになり、自身の記録を調べてみたドライマンは、自分がずっと監視されていたという事実に驚く。何十冊にも及ぶ報告記録を見ていたドライマンは、雑誌投稿計画時の報告について虚偽がつづられており、報告書にサインしてある「HGW XX/7」という人物が自分を救ってくれたのだと気づく。HGW XX/7がヴィースラーであることを突き止めたドライマンは、郵便配達をしているヴィースラーを見つけるが、声をかけずに去る。
 ドライマンは新しい脚本を書き上げる。書店でドライマンの書籍を見かけたヴィースラーは、表紙をめくる。そこには、「HGW XX/7に感謝の意を込めて」の文字がつづられていた。


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最終更新日  2007年06月22日 08時34分16秒
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