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2009年05月18日
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カテゴリ:戦争映画
ビデオ1978 松竹 監督:山本薩夫
出演者:渡瀬恒彦、吉永小百合、山本圭、三国連太郎、滝沢修、高橋悦史、山崎努ほか
140分 カラー 


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 元自衛官らが政権奪取と自衛隊の国軍化を目指して武力クーデターを試みるというフィクションドラマ。サスペンス的な乗りもあるが、社会派ドラマのようなヒューマンドラマのような中途半端な印象が強い。映像的にも、ストーリー的にも、今となってはひどくしょぼく感じられる作品だが、逆にカルト的なメモリアル作品としての価値があるような気がする。
 監督は共産党員でもあった山本薩夫で、どうしてこのような作品を手がけたのか不思議だ。確かに、軍国復古を目指す自衛隊員や与党腐敗政治家の陰謀を描くことで、右翼批判的なものを試みたのかも知れぬが、今となっては信じられないくらいに非リアルな内容だけに、右翼自衛隊員、内閣調査室ともなかなか格好良いじゃんという印象しか残らない(笑)。
 原作は小林久三の推理小説だが、小説ではサラリーマンの石森(山本圭)視点によるものだが、映画ではクーデター指揮官藤崎元一尉(渡瀬)が中心に据えられている。そのため、謎解き推理ものというよりは、自衛官クーデター事件ものという側面が強い。しかも、クーデター自衛官を演じる渡瀬(藤崎元一尉役)、山崎務(東上元一尉役)、三上(小森一尉役)らが男気溢れる演技をするものだから、なおさら格好良く見えてくる。民間人の犠牲も厭わぬ無茶な政府転覆を企てる悪者のはずなのに、何故か肩入れしている自分がいるのだ(笑)。そう言う意味では、山本薩夫的には大失敗だったのではないだろうか。

 本作を見ていると、随所に三島由紀夫の写真が登場する。明らかに1970年の三島由紀夫市ヶ谷割腹事件に強く影響されていることは間違いない。三島の檄文内に「・・・われわれは四年待った。最後の一年は猛烈に待った。もう待てぬ。・・・これを骨抜きにしてしまった憲法に体をぶつけて死ぬ奴はいないのか。・・・」という有名な一節があるが、本作中でも藤崎元一尉が「我々は5年待った。もう待てない。・・・憲法を変えるために死ぬ奴はいないのか・・・」というフレーズがあり、そのまんまなのである。藤崎元一尉が制服をきちんと着こなし、熱く語る姿はまるで三島由紀夫そのものなのである。
 また映画中にも出てくるが、1961年のクーデター未遂の三無(さんゆう)事件もモチーフにしているようだ。三無事件は九州北部出身の元軍人らによる政府転覆計画だったのだが、本作も九州の元自衛官らを核とした武装蜂起となっている。

 上記のように、実際の事件等をモチーフに仕立て上げられているとは言え、構成、演出、映像ともにかなり稚拙だったため、そのリアル感や緊迫感は思い切り阻害されてしまっているのが残念だ。社会派と称される山本監督だが、私は映画監督してはかなり下手な部類だと思っている。個人の性格付けはもとより、場面毎のつながりとテンポが著しく悪いのが特徴で、ドキュメンタリーのような平坦な作品ならともかく、ストーリーの起承転結を作るのが実に下手だ。本作では著名な役者をたくさん起用しているのに、彼らの演技の良さが全く引き出されず、いわば役者殺しのようなものだ。特に江見陸将補役の三国連太郎、内閣調査室長利倉役の高橋悦史は酷いもので、個性派俳優らしからぬ平凡さだ。ラストシーンの三国のフランケン状態は・・・・(爆)。また、ヒロインに吉永小百合を起用するものの、三角関係の恋愛がまるで盛り上がらない。こんな程度の女のために命を賭す男二人に心情移入などできなかった。石森役の山本圭はストーリーの鍵を握っているようで・・・ただ叫んでいるだけ。唯一渡瀬のほとばしる熱情が見所だとはいえ、もっと効果的に著すこともできたであろう。
 なお、松竹の遊び心だろうが、ほとんどストーリーに関係なく「寅さんシリーズ」の渥美清が登場したりするが、うーん、いかがなものか。

 本作のクーデター名は「皇帝のいない八月」。政治家やCIAを黒幕として、西部方面の元自衛隊員蜂起部隊に呼応して、北部方面旭川第2師団、中部方面金沢第14普通科連隊、東北方面青森第5普通科連隊、東部方面静岡第34普通科連隊、第1師団市ヶ谷駐屯地らが参加することとなっていた。多くは未然に防がれるのだが、武力鎮圧も実行され、幾度かの銃撃戦シーンが描かれている。64式自動小銃は沢山出てくるが、はっきり言ってしょぼい。
 西部方面の実行部隊が乗っ取る列車は特急「さくら」。長崎・東京間を結ぶブルートレインだったが、2005年に廃止となっている。列車を爆破するシーンがあるということで旧国鉄の協力は得られなかったそうで、セットを用いているのだとか。また、同様に自衛隊の協力も得られなかったので、ヘリコプターがミニチュアだったり、陸自装備もほとんど出てこない。
 
 全般に、典型的B級映画なのだが、何だか気になる作品でもある(笑)。良い作品でも何度も見たいとは思わないものが多い中、また見たくなる不思議なカルト作品なのであった。

興奮度★★★
沈痛度★★★
爽快度★
感涙度★


!(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 8月14日、岩手県の国道4号線で不審なトラックを追跡したパトカーが銃撃され炎上する。調査にあたった仙台の陸上自衛隊から、銃弾は5.56mmのもので、日本では用いていない米国の輸出用だと報告される。内閣調査室長の利倉は、アメリカが一枚かんだクーデターの可能性を考える。
 鹿児島県で妻の墓参りをしていた陸上自衛隊幕僚監部警務部長の江見為一郎陸将補は、利倉からすぐに帰京するよう命じられる。その途中福岡の第4師団司令部で、危険思想の持ち主である「特定退役者」の情報を仕入れ、娘杏子の夫藤崎顕正元一尉が運送会社を経営していることを聞く。さらに、藤崎のアパートへ赴くが、藤崎は不在で杏子だけがいた。杏子から藤崎の状況を聞き出すが、特に不審な点はなかった。
 だが、江見が帰ると、杏子のもとに藤崎から手紙が届き、杏子は藤崎が5年前に失敗したクーデターを起こそうとしていることに気づく。杏子は駅に向かい、夫を捜す。その時、靴メーカーで働く、元の恋人石森と出会う。石森は5年前自分の前から忽然と消えた杏子を詰問しようとするが、杏子は何も答えない。駅から特急「さくら」に乗ろうとする石森は謎の男達に切符を奪われそうになるが、なんとか「さくら」に乗り込む。男達は自衛隊の靴を履いていた。
 利倉は現首相佐橋と対立する元総理大畑周造が怪しいとにらむ。時期政権を握ろうとする大畑派の小山田建設大臣とも結託しており、右翼の巨頭大日本菊花会長兵藤や右翼的経済人の日本経営連合会会頭氷山ともつながりがある人物だ。更に自衛隊の真野陸将とも繋がりがあり、今回のクーデターの黒幕と目された。
 案の定、真野陸将を拘束するとアメリカ軍G2のトーマス中佐と一緒にいた。真野陸将を元憲兵隊だった江見が尋問するが、真野は舌をかみ切って自殺する。だが、ついに江見は車の天上から「皇帝のいない八月」計画の書類を発見し、クーデター計画の全貌が明らかになる。佐橋内閣を倒し、小山田が総理となり軍事内閣を組閣、左翼を武力鎮圧しようというものだった。
 利倉は指揮をとりたがる統合幕僚会議議長の三上陸将や江見陸将補を制止して、治安出動の実行指揮をとる。函館の皇帝幹部を逮捕、練馬の第1師団が不参加表明、富山・長野県境で金沢部隊を武力制圧、千葉習志野第1空挺団不明、青森第5連隊武装解除、市ヶ谷駐屯地の皇帝主力部隊武力鎮圧、神奈川県で皇帝静岡部隊を武力制圧、さらに藤崎隊と合流予定だった東上一尉の部隊も第13師団によって武力制圧される。

  「さくら」に乗った石森は列車の下に爆弾をつける人影を見る。停車駅で車掌に確認させるも、発見できない。そして杏子から5年前に藤崎にレイプされ、結婚したことを告白される。そんな時、ついに藤崎隊が列車内の制圧を開始する。乗客360名、乗員5名を人質に東京を目指す。第13師団が停車駅で取り囲むが、藤崎は起爆装置を片手に投降しない。さらに、ホームに連れてこられた瀕死の東上一尉と会釈して撃ち殺すのだった。
 娘杏子が乗っていることを知った江見陸将補は、安全な方法をとるため自分が指揮をとりたいと申し出るが、利倉は民間人の犠牲もやむを得ないとして最終突撃を決断し、江見を拘束する。また、事件をかぎつけていた毎朝新聞の正垣政治部長や有賀報道部員らは、利倉の画策した報道規制により報道ができなくなった。国民には列車事故にみせかけようというのだ。
 一方、大畑は姿をくらませていたが、裏でつながっていた佐橋首相が毒ワインを飲ませてひそかに暗殺していた。大畑を追っていた利倉は佐橋の魂胆を薄々感じ始める。

 列車の中では藤崎が30分過ぎたことから車掌の一人を射殺する。それを見た部隊の一人、島三曹は人質を殺した藤崎を見限り、起爆装置を奪うことを計画。杏子と石森に協力を頼む。しかし、銃を藤崎に向けたまま撃つことが出来ない石森と藤崎らの間で膠着状態が続く。
 その時、列車が急停車し、自衛隊の急襲部隊が突入してくる。起爆装置を落とした藤崎と杏子は銃弾を受けて倒れる。島三曹も撃たれ、乗客らも流れ弾に当たって死んでいく。石森はなんとか列車外に逃げ出すが、杏子の身を案じて再び列車に駆け寄り、銃弾を浴びて死亡。瀕死の藤崎はようやく杏子の手をふりほどいて起爆装置を入れ、列車が爆発を起こす。

 事件は世間には列車転覆事故として扱われる。佐橋も利倉もようやく仕事が終わったと安堵し、アメリカ軍の武官も何事もなかったかのように挨拶して過ぎる。そして、頭を手術し記憶を奪われた江見が車いすで静かに通っていくのだった。





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最終更新日  2009年05月18日 20時32分16秒
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