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2010年11月22日
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カテゴリ:戦争映画
ビデオ2010 若松プロ 監督:若松孝二
出演者: 寺島しのぶ、大西信満、粕谷佳五、篠原勝之、河原さぶほか
84分 カラー caterpillar

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 中国戦線で四肢を失う負傷を負った軍人が軍神として凱旋し、その世話をする妻との奇妙な生活を描いたサスペンス風ドラマ。公式には出てこないが、ストーリーや設定等は江戸川乱歩のミステリー小説「芋虫」をネタにしていると思われ、題名のキャタピラーとは英語で芋虫のことからも関連性が伺われる。本作はパンフや解説等でも反戦社会風刺ドラマとして位置づけられてもいるようだが、私的な見解ではそうした反戦的風刺はあまり感じられず、むしろエログロ的サスペンスとして理解した方が良いと感じた。
 監督の若松孝二は「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」など特殊作で知られるが、全般に的確に社会風刺をした作品はなく、むしろ社会的間隙を縫った異端作品、悪い言い方をすればうけ狙い的な要素が強い。本作も結局はその域を脱しなかったという印象だ。

 そもそも江戸川乱歩の「芋虫」はエログロ的倒錯をネタにしたサスペンス小説だったわけで、四肢を失った姿を芋虫と称し、芋虫のような姿で勲章を貰う滑稽さや、その姿で性交を行う異常さ、妻側の倒錯した欲望を描いたものだ。それを無理に反戦的企図を潜り込ませて映画化した時点で、本作には無理がある。
 本作では勲章、中国人女性暴行、村人の全体主義意識など、反戦に結びつく事象を用意し、中国人暴行シーンや原爆投下シーンなどの記録映像を多用した。だが、これらは恣意的であることが見え見えで逆にしらけてしまううえ、エログロシーンとはまるで乖離していたのだ。
 エログロシーンは、四肢のない人間がどのように人としての尊厳を維持していくかが嫌でも焦点となり、人権の発達した現代においては単なる滑稽では済まされない部分がある。先の乱歩の「芋虫」は単にサスペンスとして描いたもので、そこに正義や理屈は存在する必要はない。だが、本映画のように社会派を気取った場合、そこには正義や理屈が必要なのであり、それが例え戦争であっても軍神の四肢のない男を反戦のネタとして利用することに違和感を感じるのだ。つまり、笑うべきところで笑えない。余計に恣意的な反戦的メッセージが悪趣味に感じられてくるのだ。
 また、エンディングの元ちとせの歌「死んだ女の子」挿入、反戦的浮浪人役の篠原勝之の起用も悪趣味のきわみ。全く必要ないだろう。
 このように、本作は社会派反戦ドラマ部分とサスペンス的エログロ部分が、最後まで融合することなく終わっていった。むしろ、エログロ部分のインパクトが強すぎて、反戦メッセージ部分は余り印象に残らないままであった。エログロ部分に関して言えば、四肢を失った主人公久蔵と妻シゲ子の心情変化の描写はなかなか秀逸であったし、久蔵がおかしくなる理由を除けば、その終わらせ方も悪くなかった。変な反戦メッセージを挿入せずに、単にサスペンスとして構成しておけばもっと秀作になったかもしれない。

 妻役は寺島しのぶでヌードを披露。演技も昭和的な妖艶さでなかなか良かったが、エッチシーンはややグロ調。寺島しのぶが上になるのは普通だが、夫が上になるシーンは変な興味ばかりが先行して不思議な感覚。エロさはさほどでもないが。

 なお、主人公久蔵が四肢を失ったのは、終戦間際ということで、第二次大戦の中国戦線と思われるが、敵陣に先陣を切って突入したことによるようだ。中国戦線での爆弾三銃士的なイメージなのだろうか。出征時は一等兵の襟章をつけており、それなりに昇進したのち負傷して少尉に特進したものと思われる。
 また、四肢を失った兵士を描いた作品としては「ジョニーは戦場に行った(1971米)」があるが、内容的にはかなり別物。勲章を題材にしたものに「勲章 (1954日本)」というものがあり、勲章に固執する旧軍人の姿を描いている。

 特に反戦映画として評価できるものでもなく、サスペンス部分の良さが帳消しににもなっており、なんとも中途半端な作品だった。単にエログロを見たいだけにしても、思ったほどインパクトはないかも。

興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★
感涙度★



!(以下 あらすじ ネタバレ注意 反転でご覧下さい)

 ある田舎の村で若い兵士の出征行進が進む。その隊列に逆行するように日本陸軍の乗用車が黒川家に入っていく。以前に出征し中国戦線で肉弾突撃の大功績を挙げるも、四肢を切断し顔におおやけどをおった黒河久蔵少尉の凱旋である。久蔵は3つもの勲章を授与されるも耳が聞こえにくく話すこともできない。妻のシゲ子は変わり果てた久蔵にショックを受ける。だが、周囲の久蔵の父、妹は久蔵を軍神としてたたえ、面倒を見てもらうことにする。久蔵の弟忠だけはシゲ子を支えようとする。村人たちもシゲ子に同情を抱きながらも軍神の久蔵に敬意を示すのだった。
 寝ること、食べることしかできない久蔵にシゲ子は戸惑いを隠せないが、軍神の妻として立派にお世話をしようと努力する。だが、やはり話すことさえできない久蔵にいらだちも隠せないのだった。さらに、久蔵はシゲ子の服を引っ張って、夜の営みを要求する。シゲ子はそれに答えていくが、軍神として多少の頂きものはあるものの、自分が働き、今後将来久蔵の世話をしていくことに絶望感を感じるのだった。
 次第にシゲ子は動けず話すことさえできない久蔵に虐待的行為をすることで優位感を感じるようになる。勲章をつけて村の中をリヤカーに乗せて久蔵を引き回す行為に、久蔵は見世物のようで不快感を示すが、シゲ子は楽しかったですねえと無視する。また、夜の営みも自分から「ご褒美」と称して強要するようになり、久蔵はたたなくなってしまう。そんな自分の行為にシゲ子は嫌気がさすこともあり、一生一緒に生きていきましょうと思い直すこともあった。
 久蔵はシゲ子に営みを強要される際に、中国戦線で犯した中国女のことを思い出し、次第に気がおかしくなっていく。
 そして終戦の日を迎える。田んぼで終戦を聞いたシゲ子は笑みを浮かべる。一方久蔵は地べたを這って、池に入水自殺を図るのだった。





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最終更新日  2010年11月22日 19時46分42秒
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