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文庫最新刊。
同時並行的にQED式の密室を読んでいたので、おお!と思うことしきり。 土蜘蛛などが土着の民を蔑視する呼び名だということは以前から知ってはいた。 けれども、それを他の文にも同様に隠れてあるということを同じにみてなかった。 そうだよな。 そう改めて思って読むと、浮かび上がる場景が変わる。 意味ももっと深くなる。 晴明の台詞、博雅や天上人らの価値観、道満の存在が際立つ。 ああ、知っていても、応用して理解できてないのは分かってないことと同一だと反省。 いや、それ(高田氏のもちいた説の他)にも諸説あるのだろうが、 それだけでも説得力のある、真実のように思える。 術に使われた犬、潰された蛙、潰した草、虫、そして鬼、 それらはすべて天上人である「人」・朝廷の人々が朝廷に抵抗した土着の民の蔑称として定めた呼び名である。 と考えれば、陰陽師の世界は決して夢物語、昔話に終わらず、 現実にあった歴史としてもっと輪郭がハッキリする。 そして、天上人に鬼などが見えないというのはルールであったためで、 鬼や式が存在するしないの問題ではなかった。 見るか見ないか、認めるか認めないか、人の心の決めたものの問題だった。 そういうことを前提に改めて読み返しても、この陰陽師の中では、人のような鬼、とか、 酒を注ぐ式・密虫などの存在もその他のモノも考えれば人としてもちゃんと読めるような構成になっている。 唐よりの伝来品から逃げ出した蛇を式神にというのも異国から連れてこられた下働きか、奴隷のような民のことだったのだろう、とか、 ああ、ここも、ここもか!!と思って読むと楽しさ倍増である。 そうやって、文章の中に隠語、暗号のように織り込められていろいろな隠された歴史があるのだろうなぁ。 そういうものを分かりやすく、興味深い形で読ませてくれるこういった小説は入口としても大変ありがたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 17, 2005 11:25:03 PM
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