カテゴリ:本
両国広小路の薬種屋・仁寿堂の通用口に月二回ほど、黄昏時に深編み笠をかぶった男が腰掛けと机を出す。
机に被せた覆いの垂れには"お話、聞きます"とある。 人の話を聞くだけ、料金はお客様の志。 そんな奇妙な男を怪しむ往来の人あり、楽しみに待つ人あり― 過去も現在も、人の住むところにそれぞれの話あり。 薬種屋のご隠居を中心とした江戸の人情話。 聞き屋与平・ 隠居を機に店の裏に月二回、人の話を聞くために席を設ける男あり。 与平は話をしに来た娘・およしが父の借金返済のために働かない母親に身売りされそうなのを知り、助けの手を差し伸べる。 どくだみ・ 千床で髪結いを営む千蔵は実はスリの親玉でもある。 知りながらも何食わぬ顔で話を聞き、金は入ってないが、手紙が入っていた財布は千床の柱に括りつけて持ち主が現れるのを待てばよいとアドバイス。 悪戯で同僚の手紙の入った財布を盗んでしまった小僧にも優しく手を伸ばす与平。 雑踏・ 後継ぎの出来ないうさぎ屋に婿入りした次男・作次は遊び歩いていると知った与平。 だが、子供が本当に出来ないのかと思っての所業だったと知り、家に戻ることを許す。 後継ぎを望む両親の重圧もあって作次に離縁されたが、好きあっていたので、元妻・おなかは与平の聞き屋にあらわれる。 開運大勝利丸・ 聞き屋の客・中野良庵は与平に切り傷、しもやけ、肌あれにも効果がある赤膏の調合法を買わないかともちかける。 その客が実は押し込み集団の一味だと鯰の長兵衛はにらんでいた。 赤膏の調合法を買おうかと思う与平だったが、現店主・藤助は浪人が出した怪しげな"開運大勝利丸"という薬の販売権を得ていた。 とんとんとん・ 仁寿堂の先々代店主・為吉の元妻・おうのは為吉亡き後、店を平吉に譲り、再婚していた。 だが、そこはあまり裕福ではなく、借金も返済し、繁栄している元仁寿堂に、元女中だったおせきに嫉妬。 火事は、為吉の死は与平か平吉の策略だと言い出す。 夜半の霜・ 富蔵と結婚し、与平の義娘となったおよし。 気立ての良い彼女はすんなり家族となったが、彼女の母・おまさは娘が金持ちに嫁いだと金遣いが荒くなる。 ―人物メモ― 与平:仁寿堂十代目 おせき:与平の妻 藤助:与平の長男 おさく:藤助の妻。大工棟梁・源次の娘。 作次:次男。 おなか:作次の妻。薬種屋うさぎ屋の一人娘。 富蔵:三男。 平吉:与平の父。仁寿堂のかつての番頭で、主亡き後、看板を譲ってもらい九代目に。 為吉:遊びまわって借金をこさえた仁寿堂八代目の主。火事で焼死。 おうの:為吉の妻。彼亡き後蝋燭問屋の後添えに。 鯰の長兵衛:岡っ引き。以前あった仁寿堂の火事中の為吉の死は平吉か与平の仕業となにかと与平に絡む。 徳市:仁寿堂(通用口)向かいに住む按摩 聞き屋の客(一部) およし:与平が救った聞き屋の客。後に富蔵に嫁ぐ。 千蔵:千床の髪結。スリの親玉でもある。 依田覚之助:江戸詰め武士のひとり。顔に痣があり、持ち込まれた縁談も信用出来ずにいたが、与平に聞いてもらうことで気が楽になり、縁談がまとまる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 8, 2006 10:45:02 PM
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