カテゴリ:本
The Eyre Affair
なんとも興味深い話。 舞台は1985年のイギリス。 なのだけれど、クリミア戦争がいまだ終結せず、帝政ロシアとの戦争が131年目を迎えたという世界。 国は事実上、ゴライアス社なる超巨大企業に支配されており、ウェールズは共産化して独立していたりする。 タイムとラベル術を駆使して過去・未来を自由に行き来するものあり、 クローン技術が発達していて、様々な絶滅種(並びキメラ)がペットとして飼われている。 その一方で、コンピューターはないらしく、紙媒体が重要視されていたり、飛行機がないので飛行船が飛んでいたりする世界。 警察組織とは別に存在する特別捜査機関は独特で、クリミア戦争の帰還兵でもある主人公のサーズデイ・ネクストが所属するのはロンドンにあるSO-27課リテラテック(文学刑事局)。 戦争で兄を失い、そのことが原因で恋人と別れたことなどを未だに引きずる彼女は36才。 元SO-12クロノガード(時間警察隊)の父は歴史を正す為、時空の中を逃げ回りながら様々な質問(仕事上の、歴史上の人物などに関するもの)をしに彼女の前に現れる。 普段は原稿紛失や盗作などの地味な事件を担当しているが、いくつもの顔をもつ凶悪犯アシュロン・ヘイディーズを知っていることから捜査に加わることに。 周囲の音を拾うことが出来、人の心の隙につけこみ、操る力を持つ彼は「マーティン・チャズルウィット」の原稿を盗み逃亡中。 参加した作戦が失敗した後、故郷スウィンドンのリテラテックになったサーズデイの前に元恋人ランデンが現れる。 そんな時、彼女の変人にして天才発明家の伯父マイクロフトが彼の発明した<文学の門>とワーズワースの本(水仙)に入ったままの伯母と共に攫われ、また、「ジェイン・エア」の原稿も盗まれた。 本の中へ入ることができ、その中のものを持ち出すことも可能な装置<文学の門>を狙うゴライアス社の役員ジャック・シットと彼らを誘拐したヘイディーズと三つ巴の戦いが始まる。 サーズデイは伯父らを救い、「ジェイン・エア」に入り込んだヘイディーズを倒し、物語を再構築することが出来るのか? また、ランデンとの恋の行方は― 冒険、過去の傷、栄光、挫折、挑戦、事件、発明、恋、駆け引き、奇妙で、甘く、残酷にしてお馬鹿と魅力盛りだくさん。 音読することで物語に入れるという力(ナカジマ夫人を別とすれば<文学の門>は虫を使って開けるが)は「魔法の声」「魔法の文字」でも描かれているが、本の中に入ったり作用したりと言うのは「はてしない物語」などもあるように定番の設定なのかも。 それぞれが魅力的。 現実世界の人が本に入ることで起こる影響に関しては、直筆原稿ならばすべての本に影響が。印刷されたものならばその本だけに影響があるらしい。 今回は本だけでなく、クロノガードの父があちこち暗躍し、歴史の上書きも行なわれている。 本筋と並行するようになされるシェークスピアの正体も、この父にかかればなんと!という面白いいい結末が待っている。 続編も出ているので楽しんで読み勧めていきたい。 つれづれメモは→コチラ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 22, 2007 04:25:45 PM
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