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お茶かけごはん と ねこまんま

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オカリナの思い出

オカリナの思い出
 
中学生の頃。
 私はたまらなくオカリナが欲しかった。オカリナ吹きだった訳ではない。たまたま楽器店で見つけた、瑠璃色に輝く小さなオカリナに魅入られたのだ。
 その頃は親元を離れて寮生活。お小遣いで買えるような金額ではなかった。その店を覗くたび、私は愛しい人を見つめる乙女になった。

 そしてその年の誕生日プレゼントに、父にオカリナをねだったのだった。誕生日は夏休みに差し掛かる頃だから、ちょうど帰省していた。父は「オカリナぁ?」と不審がりながらも、買ってくれると約束した。そして、きれいに包まれた小箱が私の手元にやってきたのだ。

 ときめく胸。頬は高潮していたに違いない。そっと包みを解いて箱のふたを開けるとそこには、ずんぐり、どっしりとした“オカリナ”が確かに…。しかもなんとクリーム色と朱色のマットなマーブル模様。
 違う!これは私のオカリナじゃない!そのときオカリナにも色々あることに、私は初めて気づいたのだった。


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