テーマ:皇室(559)
カテゴリ:歴史 傳統 文化
平成十七年五月三十一日(火)午後四時~ 於三田共用会議所大会議室 (続き) 一案といたしますれば、現在、皇室会議というものがございます。その議員に皇族の代表が二人いらっしゃいます。しかし、皇室会議は実に限られた権限しか規定されておりませんので、その中に皇室典範の改正についての、どのような形でどのような手順でやるかどうかは別といたしまして、最低でもそうした権限を皇室会議に持たせることも一案ではないかと私は考えます。 このような典範自体の改正規定についてまず一つの改正を行ってから、例えば女帝問題を含む皇位継承問題など具体的な改正の議論に入っていくべきではないだろうか、手順的にはかようにすべきだと思います。 これまで、るる大急ぎで、限られた時間で私見を述べてきました。この新しい皇統の危機に際しまして盛んな議論が行われ、今日お集まりの委員の先生方も御多忙の中、何度も何度も会合を重ねていらっしゃることに対しまして深甚なる敬意を表する次第でございます。 しかし、私は最後に先生方にお願いしたいと思うのは、少なくとも二千年もの皇位継承の歴史というものをやはりきちんと踏まえていただきたい。そのことは重々御承知であろうと私は存じておりますが、あえてここで重ねて申し上げたい。 それは、過去の皇位継承の危機に対して、我々の父祖たちは大変苦労しながらさまざまな方策を講じてきました。 その父祖たちに対する大きな責任が我々にあるわけでございます。 そして、責任は更に子孫に対してもあります。先ほど言いましたように、女系をそのまま容認するといういまだかつてないことは、この父祖に対する責任、そして子孫に対する責任を考えますと、そう簡単に決めてよいものであろうか。 事柄は、安易に拙速に決定すべきことではございません。そして、深刻な対立点を残したままで結論を急ぐべきではない。ましてや今秋までに報告書をおまとめになって、来年の通常国会で法改正を行うというようなことは、私は大きな危惧と強い不満を覚えるところでございます。 先生方には、そうした重大な責任をお持ちでございます。過去、我々の父祖たちがさまざまな危機を乗り越えてきた輝かしい実績があります。 それぞれの時代の人々が叡智を出し合って切り抜け、そして落ちつくべきところに落ちついてきたということが、これから先、現在の皇統の危機につきましても私は可能であろうと確信しています。 その意味では、何度も繰り返しますけれども、父祖に対する重大な責任、子孫に対する重大な責任を踏まえた上で慎重に御検討をしていただきたいと切に思う次第でございます。 おおよそ時間が経ちましたものですので、まとまらない話でございましたが、私見を述べさせていただきました。 御清聴ありがとうございました。 ○ 吉川座長 大原先生、どうもありがとうございました。委員の方から何か御質問ございますか。 ○ 園部委員 園部でございます。本日はどうもありがとうございます。貴重な御意見、大変ありがたいと思います。 二つ御意見を伺いたいんですが、御意見といいますか、私の理解が間違っているかもしれませんのでお願いしたいんですが、旧皇族の皇籍復帰と養子の制度は典範の改正でできないことはないんですけれども、御承知のように旧典範は明治の初期から約六十年続きました。それから、戦後の新しい皇室典範も実は六十年続いております。したがって、私は青年期までは旧宮家の人たちのお姿というものをいろんな形で存じております。 しかし、その後、戦後は全く外へ出られたものですから、国民は旧皇族についてはほとんど認識がない。調べればわかりますけれども、イメージが浮いて上がってこない。そういう状況の下で、もし旧皇族を、もちろん、御本人の意思もありますし、皇室の方の御意向も聞かなければいけません。 仮に復帰させたとして、もしその方が天皇になられた場合に、国民の感情として、これは天皇として、国民の象徴として支持できるというふうに国民が思うかどうか。これが第一でございます。 それから、皇族の養子制度につきましては、やはり御養子になられる旧皇族の御意思もさることながら、皇室の方での受け入れということが果たしてできるかどうか。また、そういう人を養子にしたときに、先ほどと同じように、養子として迎えるのがいいのか、あるいは女性天皇の相手方として、お婿さんとして迎えるのがいいかは別としまして、そういう言わばかなり国民から遠ざかっていた方々を今の段階で復帰させて、国民感情というのはそれをどのように受け入れるであろうかということがございます。 制度としてはもちろん改正は可能だと私は思いますが、その点は先生はどのようにお考えでございましょうか。 ○ 大原教授 時間が限られていますから簡単に申し上げます。まず大前提は、女系という前代未聞の制度を採用することに対するものすごい大きな危惧というものがあるわけです。それが前提でありますがゆえに、男系を維持するために旧皇族復帰だとか養子制度とかになれば、今おっしゃられたような御懸念とかはよくわかりますが、こちらの方が相対的に危険が少ないであろうというのが第一点です。 それから、これは私自身のまだ個人的な思いつきになるかもしれませんが、要するに、旧皇族が復帰されてそのまま天皇につかれるということよりも、例えば廃絶する可能性がある宮家を継がれる場合もあれば、あるいは旧宮家の名前で復帰されることもある。これらの場合、新たにお妃ももらわれるわけですから、そこに男子が生まれる可能性もありますので、その方が皇位継承の候補者になることもあり得れば、 今、女性皇族がいらっしゃるところにいわゆる婿養子の形で入られて、そこで男子がお生まれになるならば、これはすべて男系に属するわけでございます。 そういうようないろんなバリエーションがあります。現実にどの程度の可能性があるかどうかという問題はもちろんおっしゃるとおりでございますけれども、そのように考えていきますならば、今日の世論は女系の天皇ということの重大性にあまり気付かずに女性天皇でもいいのではないかと簡単に考えているようですが、一部かもしれませんが、皇室の権威そのものも否定するような論が一方で出ているということもある。これは杞憂のことではない。そういったようなことから、私はこのような説を申し上げているわけでございます。 ただし、すべての手段を尽くした後にどうしてもという時になって来れば、その時には国民が叡智を出せば、私は落ち着くところに落ち着くだろうと思います。 しかし、今の時点で軽々にそのような結論を出すのはいかがなものであろうかということであります。 その意味で、この会議の先生方にお願いしたいのは、時間をかけて慎重にこうした点までも御配慮して検討していただければと思うところでございます。 ○ 園部委員 どうもありがとうございました。 ○ 吉川座長 どうもありがとうございました。 (大原國學院大学教授退室) 配付資料 資料一「大原 康男 國學院大学教授 説明資料」 平成十七年 十月三十一日 エマーソン、レイク&パーマー「石をとれ」を聴きながら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年12月26日 13時05分20秒
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