テーマ:皇室 三(37)
カテゴリ:歴史 傳統 文化
旧暦三月廿一日、弘法大師忌。弥生、虹はじめてあらわる。 本日から四回に渡って「日本の息吹」平成十八年二月号、中西輝政京都大学教授の「万系一世は神の末裔」をご紹介する。 今次の 万系一世は神の末裔 インタビュー 京都大学教授 中西輝政 男系による万世一系の系譜こそ、神の末裔なる皇統の意識を高めてきた。一方、女系とは即ち王朝の交代に他ならない。 ◎イギリス、デンマ─クは男子優先 ─ 本日は、「皇室典範に関する有識者会議」(以下、有識者会議)の報告書の内容について、「第一子優先」及び「女系天皇容認」の二点について、お伺いしたいと思います。 中西 まず、「第一子優先」についてですが、私は、有識者会議のこの結論を見て正直いって愕然といたしました。これは日本国民一般の社会通念とおよそ相容れないものです。 例えば、今日でも先祖供養とかお墓の管理など家庭祭祀はやはり大抵は男子優先でやっているわけです。 それから、よくマスコミ等が比較に出すのがヨーロッパの君主国です。確かにオランダやスウェーデンなど、第一子優先の王位継承システムを採っている国もありますが、スペイン、イギリス、デンマークなどのように男子優先を採っている国もあります。ただ、二千年にわたる歴史を持つ日本の皇室と高々二百年以下の歴史がほとんどのヨーロッパの王室とを同列に論じること自体、無理があります。 例えば、スペインは共和制と王制との交替を繰り返してきた国です。オランダは、ナポレオン戦争後のウィーン会議(一八一四~一五)で国際政治上の必要性があって、共和国が王国となり、王室もその中の一貴族から格上げになった王室です。 ベルギーは、一八三〇年代の独立戦争時、フランスに併合されようとしたとき、イギリスが同じ王制を採らせればこれを阻止できるとして、共和国になるはずが王国にさせられたという経緯でできた王室です。スウェーデン王家は、ナポレオンの副官でありながらナポレオンを裏切って連合国側に寝返ったベルナドット将軍が、その功績によりスウェーデン王に据えられたという発祥なわけです。ノルウェーは二十世紀の始めスウェーデンから独立してやっと王国になった百年足らずの王家です。また誤解されているかもしれませんが、リヒテンシュタインやルクセンブルグ、モナコなどは王室ではなく、大公国というように、いわば貴族の自治領地を勢力均衡上の理由から形式的に「独立国家」としただけです。 このように、ヨーロッパの君主国は、その多くが二百年以下の歴史しか持たず、しかも諸国の勢力均衡という国際政治上の取引によって生まれた王家が多く、到底、わが皇室の比較対象にはなりません。 かろうじて、ヨーロッパで最も古く数百年の歴史を持つイギリスとデンマークの王制が取りあえず比較対象の資格があるとすれば、両国とも男子優先制を採っていますので、第一子優先とした有識者会議の結論とは大きく異なります。 ◎男系とは神の末裔を担保するもの ─ 「女系天皇」の問題についてはいかがでしょうか。 中西 まず、これまで百二十五代という長い歴史のなかで、男系をつなぐために、側室からの庶子継承や傍系継承など、ある意味でとてつもない無理を重ねてきたのは、なぜなのかということですね。ことに繰り返し何度も遠い傍系からの男系継承を優先させてきた。その根拠は父方の血筋を辿っていけば天皇に行き着くから、ということです。 そこには、天皇家という家族ではなくひとつの氏族、いわば複数のファミリーの統合体として、あえて遠い御祖先の血を継承していくというはっきりとした構想が見て取れます。 どこの君主国でも一応「血筋は続いている」ということは言うわけです。しかし日本の皇室の「万世一系」という独特の表現は、文字通り掛け値なしにそれが実践されてきたということを示しています。なぜそこまで厳密にこだわったのか。それは、その万世一系の系譜が神武天皇、ひいては天孫降臨のニニギノミコト、天照大御神というように神話の神々に直接つながるからです。つまり万世一系の系譜の御自覚が即、神の御子孫、即ち神の末裔であられるとの御自覚につながってくるからです。そしてその御自覚をお持ちのお方が祭祀をなされる。このことが、わが皇室の核心的アイデンティティだからです。 万世一系とは、そのような系譜とそれに基づく重い使命感に支えられていたからこそ、成立してきたものなのです。 それは近代になっても一向に変わりありません。昭和天皇は昭和二十一年元旦「新日本建設の詔」をお出しになられました。天皇の「人間宣言」と流布されていますが、それは占領軍当局の要求でありました。これに対して、昭和天皇は、「天皇は人間であると同時に神の末裔である」とおっしゃいました。人間であることは生理的に当たり前のことであって、そのことを言うことにはやぶさかでない。しかし、神の末裔、即ち神話につながる系譜の継承者であるということだけは譲れない。それを否定したら皇室の存在そのものを否定することになる、という強い御決意で占領軍と対峙されたのです。明治天皇の「五箇条の御誓文」を、冒頭に置かれたことは有名な話ですが、この神の末裔との御自覚は一切お譲りにならなかったということはもっと知られていいはずです。 「神武(天皇)以来の」という言葉がありますが、神武天皇が尊いのは、この国を平定され即位された初代の天皇というだけではありません。それ以前の神話に連なっておられるからこそ尊いのです。このような神話に直に連なる王家がいま尚続いているのは、世界広しといえども日本の皇室以外ありません。 その証しが三種の神器です。三種の神器とは、ニニギノミコトが日向の高千穂の峰に天孫降臨されるときに、天照大御神から授けられた八咫鏡、草薙剣(天乃叢雲の剣)、八坂瓊勾玉です。この三種の神器は、文字通り皇位の証しで、先帝が崩御されると新帝が直ちに践祚され三種の神器を継承される。そして即位の間は、常に天皇と同座しているわけです。これが何ゆえに皇位のみしるし」となるかといえば、まさにそれが神話に由来するからです。この神話に直結するということが、皇室のアイデンティティであり、つまりは日本国のアイデンティティであるのです。 奈良、平安はもとより、天皇が国政の大権を直接にお執りにならなかった鎌倉、江戸時代をも通じ一貫して、貴族、武士から庶民に至るまで日本人すべてが、この国の在り様は、神話に由来する皇統が万世一系続いてきた事実の上にある、という確信を抱いてきたのです。そのことを例えば天照大御神をお祀りしている伊勢の皇太神宮への「お伊勢参り」などを通して感じ取ってきたのです。その中から、我々日本人の自己像、「この国の国柄」という意識が生まれ、その積み重ねの中で、日本の家族や共同体のあり方、人間関係のあり方、道徳意識なども形成されてきたのです。 (続く) 愛子内親王殿下は男系女子なので、民間男子との間に設けら れた御子様は「女系」でも「男系」でもない。 男 ┌─女…雑系女子 ├─┤ ┌─女 └─男…雑系男子 男 ┌─女…雑系女子 │ ├─────┤ (神武天皇) 女 │ 女 ┌─女…男系女子=愛子内親王 └─男…雑系男子 ├─┤ ├─┤ 神倭伊波礼毘古命 ┌─男 └─男 └─男…男系男子 │ │ │ │ │ │ ┌─男…双系男子 ├─────┤ ├─┤ │ │ │ └─女…双系女子 │ │ │ 多多良伊須気余理 └─女 ┌─女 ┌─女…女系女子 ├─┤ ├─┤ 男 │ 男 └─男…女系男子 │ └─男 ┌─女…雑系女子 ├─┤ 女 └─男…雑系男子 従ってこのたびの皇位継承権問題の論点は「女系天皇を容認 するか否か」ではなく「男系天皇を放棄するか否か」である。 平成十八年 四月十八日 ザ・ドアーズ「水晶の船」を聴きながら コメント・トラックバックは予告無しに削除する場合があります。あらかじめご了承下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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