シュガー社員が会社を溶かす
以前から少々気になって、本屋で多少立読みしていた本。もっと中身を読んでみたくて購入してしまった。20代~30代前半の社会人に多い、「仕事に甘く自分に甘い社員」=「シュガー社員」をこと細かに分析した本である。社労士さんが書いた本だけあって、社労士勉強に役立ちそうな知識も結構書いてあったりして、予想外に勉強になった(何せ近くの本屋では、社労士の参考書と混じって置かれていたし)難しいことは殆ど書いておらず、実際にあった事例を中心にして明快な語り口で書かれているので、かなり読みやすい。事例ごとにマンガが挿入されているから、社会人になったばかりの若者層向きの本でもあるのかも知れない。ヘリコプターのごとく子供の上を常にホバリングする、通称ヘリ親に依存しがちなシュガー社員。ごくごく低い壁すら乗り越えられず、地下を掘り進み楽なほうへ逃げようとするシュガー社員。言われたことはきちんとこなすが、それ以上のことができない(やろうとしない)シュガー社員。その他にも様々な、「甘くてゆとり脳な」若い社会人の姿が書かれているが、どの事例にも共通するのが、筆者の、「シュガー社員」に対する凄まじく厳しい姿勢だ。基本的に、シュガー社員は既に成長や改善の余地なし、運悪く採用してしまった経営者は細心の注意を払うべし!!という書き方で、サイコパスやらDV男やらと殆ど同じ扱い。私が読んでいて、比較的まともかと思った事例ですら、「ここまで来ると宇宙人!」などと評していたのは少しひいてしまった……何もそこまで言わなくとも……もう少し彼や彼女たちの言い分を聞いてあげても……シュガーな傾向があったとしても、全員が全員こんな極端な奴らばかりではないだろうし……とも思うが、裏を返せばそれだけシュガー社員を巡るトラブル・被害が非常に多いということだろう。かくいう私も、少し前の自分に結構思い当たってしまう節がある。実際裏表紙でチェックしてみたら、シュガー傾向があるかないかギリギリのところだった。確かに、「金融関連企業の始業時間がどこも一律まんべんなく、フレックスがあったとしても9時なんて、一体どこから生まれた常識なんだよ!」とか、毎日満員電車内で呟いているようではなぁでも、こういうシュガー社員が既存の常識を変えていき、日本経済を支えるようになったら、もっと人はゆったりと自分に甘く生きられるようには……ならないなこの本で取り上げられている事例は殆ど正社員のケースばかりで、派遣や契約社員は殆ど書かれていない。シュガー社員の増加は、派遣や契約社員の増加とも密接に関連しているのではないかと思うのだけど……そして「シュガー」の割合は、派遣や契約社員まで見るとさらに増えそうなのだけど(実際色々と見てきたし)しかしよくよく考えたら、労働基準法でしっかり守られる「正社員」だからこそ、「シュガー」な実態が問題になってしまうのかも知れない。例えば、正社員のクビを切るには派遣や契約社員と違い、正社員だと解雇するには30日間の猶予、もしくは解雇予告手当が必要。それを逆手にとって、ろくに働かないシュガー社員が経営者や人事に喧嘩をふっかける例は多いようだ。マジメに働く派遣社員や契約社員にとっては、実に許せない話である。ちなみに私がハマりそうなシュガーなケースは、「ワンルームキャパシティ型」。「プリズンブレイク」も結構当てはまってしまっている気が……良い方向に抜け出せるよう尽力せねば。