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「郵政解散」、官僚の壟断から政治救う好機 政治評論家・屋山太郎【産経新聞 正論2005/08/22】
「郵政解散」の意義は日本の病巣清算 ≪反対派の非公認は当然だ≫ 今回の総選挙を(1)政党のあり方(2)官僚政治システムの根本的改革-のきっかけにしなければならない。 小泉首相が「構造改革の本丸」としてきた郵政民営化法案が参院で否決されたことについて、「改めて国民の声を聞いてみたい」と衆院を解散した。小泉氏は過去3回の国政選挙と、2回の自民党総裁選で郵政の民営化を唱え、03年の衆院選のマニフェスト(政権公約)では「郵政事業を07年四月に民営化する」と明確にしている。 ところが、自民党では郵政族が反対し、総務会での多数決も「認めない」として、ついに参院で否決してしまった。 これまでの自民党政治は、勝てる総裁を担いで、適当な政策を並べて政権を取る。取った後は総裁が公約したものであれ、「党内のコンセンサスが得られない」と改革案をつぶす歴史の連続だった。 選挙制度を小選挙区比例代表並立制に変えたのは、こういうインチキな政党の歴史を清算し、まともな政党政治を確立する狙いだった。 党内で論議して最後は多数決で決め、それに従うというのが政党政治、民主主義の基本だ。これは民主党にも当てはまる。 小泉総裁が最重要と信じる郵政民営化について、国民の声を聞く以上、反対派を公認しないのは当然だ。 賛成の人は自民党、反対の人は民主党と色分けがはっきりし、国民の政党評価を容易にする。 ≪「官」の握る金を取り戻せ≫ 郵政民営化に失敗すれば、明治以来の「官僚内閣制」を清算できないだろう。明治の官僚内閣制は官僚が行政府と立法府の二府を握るというものだった。後発資本主義国として、当時は必要だったが、今日もこの形がまったく変わっていないのが日本の病巣だ。 総理大臣が民営化の号令をかけているのに、総務省の郵政担当の次官級官僚二人は、与党を民営化阻止の根回しに歩いた。 目に余る動きに、首相は二人を担当替えしたが、本来なら解任されて当然だ。一方で、旧郵政官僚の長谷川憲正参院議員は、与党や総理大臣の意向を無視し、総務省(旧郵政省)の手先となって法案つぶしに動いた。 党の最重要法案をつぶす動きに除名もできないのでは政党の体をなさない。各省ともこの種のOBを送り込み、出身省の指示によって立法府を牛耳っている。 本省と結びついたOBを排除しない限り、三権分立はありえない。 郵政民営化が必要なのは、個人金融資産1400兆円のうちの約四分の一にあたる340兆円を「官」が握る形をやめるためだ。この資金を使う公団、事業団が乱立し、本来、税金を使うべき道路や橋を金利のついた金で造る悪習が蔓延(まんえん)した。 瀬戸内海の本四架橋三本で、毎年500億円の赤字が発生している。古くは国鉄が2兆円の赤字を垂れ流し、それを郵貯・簡保を原資とする財政投融資資金で賄い、利子分を一般会計に計上した。見た目には200-300億円だが、裏に2兆円もの金利のついた借金が隠されていたのだ。 小泉内閣が誕生したとき、亀井静香元政調会長は30兆円の財政資金を投入して景気対策をやれ-と提唱した。亀井式景気対策は、官業の部分に金をぶち込んで景気をよくしろというものだが、もともと官業に金を投入しても波及効果は少ない。 ≪民営化は官僚の資金源を断ち、改革をもたらす≫ その効率の悪い景気対策を歴代続けてきたからこそ、国と地方の借金が770兆円にも膨らんだのである。なぜそんな無駄をやったか。 特殊法人への天下り官僚に仕事を供給してやり、そのおこぼれを政治献金として政治家がもらう政・官・業の癒着システムが完成しているからだ。 日本の公共投資はGDP(国内総生産)比で、先進国の3倍以上(6.2%)もあった。小泉政権発足以来、相当減ったが、増えた主因は郵貯・簡保の金を無駄に使ったからだ。財務省は「財投はすでにやめた」と強弁しているが、郵貯・簡保の金が官の手にある限り、官業システムは存続する。 いまどき、先進国で中央省庁が建設技監を雇っている国があるか。建設技監を雇えば、そのための事業を国が作ってやらねばならない。 日本道路公団から関連会社への天下りとすさまじい談合。すべて官が直轄事業をやることから発生する不正だ。 郵貯・簡保を民営化すれば、その金はおのずと必要なところに流れていく。そもそも直轄事業などはまったく必要ない。金さえ渡せば、地方が適切に使うからだ。 国の官業システムの資金源を断ち、官僚の壟断(ろうだん)から政治を救うチャンスだ。 (ややま たろう)
最終更新日
2005年08月23日 16時38分14秒
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