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風に立つライオン

風に立つライオン

第一話 「移動性サルガッソー」

第1話 「移動性サルガッソー」

N:無限に広がる大宇宙。
  そこは様々な生命のドラマに満ち溢れている。
  死にゆく生命は、生まれくる生命に運命のバトンを渡し、
  連綿と受け継がれて永遠に終わることはない。
  あの水の惑星アクエリアスの回遊による地球の危機も
  悠久の時を刻む大宇宙の広がりの中では、束の間の争乱に過ぎなかった。
  西暦2203年、地球はアクエリアスの水害から逃れ、平和を取り戻した。
  そしてまた、時は流れた。
  時に西暦2210年
  あのガミラス、白色彗星帝国、暗黒星団帝国、ボラー連邦、
  そしてディンギル帝国。数々の邪悪な侵略から地球を救った
  ヤマトの物語を、憶えている人々はもういない。


~火星・アルカディア平原居住区・古代邸~
衛星通信画面で会話する古代とユキ。
古代進:地球から戻るのは来月になるよ。タケルは元気か?
古代ユキ(旧姓森):ええとっても元気よ。パパの帰りが待ち遠しいようよ。
        パパはいつ帰ってくるの?ってそればかり。
古代:うん、すまない。エネルギー船団護衛の任務が終わったばかり
   なのに、後の任務が詰まっていて参っているよ。
   それにこれから、訓練学校で臨時教官だよ。
ユキ:大変ね。そろそろ幼稚園から帰ってくる時間だわ。
   そうそう、タケルが幼稚園で地球のお勉強をしてきて、
   地球に住みたいって言い出して困っているの。
古代:故郷に帰るんだ、困ることないだろう?
ユキ:でも、あの子、火星生まれの火星育ちですもの。故郷はここよ。
古代:勤務地が火星になければ、僕だってこっちがいいさ。
ユキ:それは私も。あなた、身体に気をつけてね。
古代:ありがとう。君もな。タケルを頼む。
通信画面切れる。

ユキ:(あの頃は生き残っていくので精一杯だったな。)

~ユキの回想~
~イスカンダルへの旅。廃墟となったガミラス星。
~白色彗星帝国との壮絶な闘い。ガトランティスとの死闘。
~暗黒星団帝国との闘いで、パルチザンに参加するユキ。
~怒る太陽。第二の地球探しの旅。
~ディンギル帝国との闘い。
~アクエリアスの水柱に沈んでゆくヤマト。


玄関が開き帰宅するタケル。
タケル:ただいま!
ユキ:おかえりなさい!今、パパから連絡があったのよ。
タケル:え~っ!ちょっと遅かったか!変なおじさんにパパとママのこと
     聞かれてて、遅くなっちゃって。
ユキ:変なおじさん?
タケル:うん。君のお父さんとお母さんって、ヤマトに乗っていたかい?って。
ユキ:(顔色が変わり)それでなんて答えたの?
タケル:うん、そうだよって。パパは艦長だったんだぞって!
ユキ:・・・。(一体誰がそんなこと)
タケル:ママ!パパいつ帰ってくるの?
ユキ:う、うん・・・。
タケル:ねぇママ!聞いてるの?
ユキ:タケル、パパとママが生まれた星に行きましょうか・・・。
タケルの机の上に置かれているヤマトの模型を見るユキ。

~地球防衛軍指令本部、大会議室~
アルカ議長:この異変に気付いている関係者はまだおりません。
伊藤長官:うーむ。宇宙の墓場だな。
藤堂相談役:しかも、いまだかつて見たこともない規模の
      サルガッソーだ。
アルカ議長:銀河系オリオン腕に近づきつつあります。
井上議員:しかし議長。通常サルガッソーは移動するんですか?
アルカ議長:ですから異変と申し上げているのです。
藤堂相談役:それでこのまま進んだ場合の地球への影響は?
アルカ議長:現在、技術部会で検討中ですが・・・、おそらく・・・。
藤堂相談役:伊藤君、やはりあの計画を急ぐ必要がありそうだな。
伊藤長官:はい。

~銀河系宇宙技術研究センター~
真田志郎:北野、君はどう思う?
北野:仮にこの「T37サルガッソー」が、このスピードのまま
   軌道をそれずに進み続けるとすれば、地球へは一年足らずで接近。
真田:クエーサーなみの速さだからな。
北野:大きさから考えても、地球は…。
真田:ひとたまりもない…か。
北野:ええ。そう思います。一刻も早く対処しなければ、
   大変なことになります。真田さん、この調査結果を連邦議会に。
真田:待て!議会に掛ける前に話しておきたい人間がいるんだ。
北野:・・・。
真田、インターフォンを取り連絡する。
北野:地球にいらっしゃるんですか?
真田:ああ。

~宇宙戦士訓練学校・砲術訓練室~
砲術訓練をする訓練生。
南部:ダメダメ、そんなことじゃ敵に殺して下さいって言ってるようなもんだぞ!
    もっと素早く対応しないと命がいくつあっても足りないぞ!
神酒大吾:はい!(小声で)くっそ~、OBだから黙ってれば威張りやがって。
南部:そこの奴!何か言ったか?
神酒:いえ、別に。ただ、じっくり狙って一発で仕留める方が効率的じゃないかと・・・。
南部:お前、おもしろい奴だな。名前は?
神酒:はい!自分は神酒大吾(みきだいご)です!砲術班希望です。
南部:うん、まあ、ガンバレ!
    君はいい感じだ!
藤原シュウ:ありがとうございます!
南部:どこかで習っていたのか?
シュウ:いえ、特に。
南部:君の腕なら、すぐにでも戦力だ!
シュウ:はい!
南部:ただし、宇宙戦士に大切なのは技術だけじゃない。
   みんなも聞いてくれ!最後の最後に大切なのは、地球を、そして宇宙を愛する心だ!

~宇宙戦士訓練学校・通信訓練室~
通信訓練をする訓練生。
指導する相原。

相原義一:いいか、通信の基本は正確性とスピードだ。
訓練生:はい!
相原:それから相手の心を汲み取ってあげることだ。
徳川スミレ:はい!あの・・・。
相原:なんだ?
スミレ:相原さんはヤマトで活躍されたんですよね?
相原:活躍ってほどじゃないが、なんでだ?
スミレ:兄から聞いています。
相原:お兄さん?
スミレ:兄は徳川太助、私は妹のスミレです。
相原:じゃあ、君はあの徳川機関長の娘さん?
スミレ:はい!
相原:そうかぁ、頑張ってな!
スミレ:はい!ありがとうございます!

~宇宙戦士訓練学校・会議室~
永倉校長:本日は有難う御座いました。
相原:いえ、とんでもない。我々でお役に立てるならいつでも
     声をかけて下さい。ねえ、南部さん。
南部:ああ、もちろん。護衛勤務ばかりじゃ退屈で、砲術訓練の
    臨時教官は、いい気分転換にもなりますから。
古代:お前達、肝心の教官としての役目を忘れてやしないだろうな。
南部:そういう古代さんこそ、気持良さそうにぶっ放してましたよ!
古代:久しぶりだからな~、砲術訓練なんて!
相原:やっぱり古代さんも同じじゃないですか。
古代:え?まあな。
一同:ははははは。
永倉校長:今すぐにとはいきませんが、皆さんにご指導頂いた連中が
       数年後には地球の平和を守る立派な宇宙戦士に育って
       くれることでしょう。
古代:校長、真の平和は、この地球を守るだけではダメなんです。
    宇宙全体の平和がなくては、我々地球人の幸せもない。
相原:確かにこの百年余りの人類の環境保護への取り組みは
    目を見張るものがあります。ですが、地球環境だけが良くなっても、
    宇宙全体の平和は来ないんです。

古代の携帯電話が鳴る。
古代:ハイ、第21輸送船団護衛艦 古代。
真田:(電話の声)久しぶりだな。
古代:真田さん!お久しぶりです。お元気ですか?
真田:ああ、お前も元気そうだな!
古代、相原や南部を見て、頷きながら
古代:今、訓練学校で臨時講師を終えた所です。
真田:相変わらずだな~。少し時間が出来ると若手指導か。
古代:指導だなんて、気分転換ですよ。
   ところでどうかされたんですか?
真田:うん、実はお前に至急話したいことがあるんだよ。
古代:わかりました。すぐに伺います。
相原、南部:我々もご一緒します。
古代:うん、頼む。
古代:(真田さんから緊急の要件とは一体・・・。何か悪い予感がする)

~英雄の丘~
佐渡先生が沖田艦長の像の前で酒を呑んでいる。
佐渡酒造:沖田艦長~。しばらく会いに来れんですまんかったねぇ。
山崎奨:あれから早いもので、もう7年かぁ。
徳川太助:艦長の声を今でも思い出すんですよねぇ。
     早く父上のような立派な機関士になれ!って。
アナライザー:ソレデ ドノクライ リッパニ ナッタンダ?
山崎:まあ、多少はマシになったってとこか。
徳川:機関長!ひどいじゃないですか!多少ってなんですか!
佐渡:こらこら、やめんかぃ!艦長の前で!
徳川:す、すみません。
佐渡:この平和も艦長の命と引き換えだからなぁ。
   わかっとるのかの~、この星の住人は。
杯を艦長の像に向けて、杯を飲み干す。

N:新たな異変が地球を襲おうとしていた。
  まだ地球はその事実を、知らない…。
  時に西暦2210年・・・。


続く


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