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弁護士・伊藤和子のダイアリー
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2008.10.02 楽天プロフィール Add to Google XML

引っ越しました。

 大変ご無沙汰しています。
 このたび、ココログに引っ越しました。といっても
 私のスタッフさんによると、「プログのお引っ越し」ができなかったらしく、
 新規作成ということのようでした。
  こちらも愛着があって立ち去りがたいのですが、前回書いたような問題があり、
 引っ越しとなりました。
  この間、なんとインドで入院するというすごいハプニングがあり、
 大変おそくなってしまいました。もう大丈夫です。
  新しいブログは、

  http://worldhumanrights.cocolog-nifty.com/
   
    弁護士 伊藤和子のときどきダイアリー
  
  です。
  
  では、今後とも新ブログで、よろしくお願いいたします。
  長い間、ご愛読いただき、ありがとうございました。
  
   ※ 当プログにGoogleなどを経由して自動的(?)に宣伝されている
     法律事務所・弁護士に関しましては、
     私のコントロールの範囲外で掲載されているものであり、
     私が積極的にお勧めしているものでは決してないことを、
     ここにお断りいたします。

Last updated  2008.10.06 01:25:31


2008.09.09

ブログのお引越し。

       ■■ お知らせ  ■■

  いつも読んでいただき、ありがとうございます。
  さて、ちかぢか、このブログの引っ越しを予定しています。
  おもな理由は、無料プログであるためか、Googleさんが
 いろいろな宣伝を当プログにくっつけていて、
 私の知らない法律事務所・弁護士事務所の宣伝が
 私のページに掲載されているからです。
  私が尊敬し、自分が対応できない事件についてはご紹介
 したい、と思う弁護士の方々はもとより多々いらっしゃるのですが、
 必ずしもそうでない、というより、存じ上げない弁護士の
 方については、私としては、クオリティ保障ができません。
  また、宣伝は一方的に掲載されるので、私のほうで
 そのクオリティ・コントロールができません。

  弁護士は、他の弁護士をご紹介するにあたっても
 しばしば責任を問われることがあります。

  そこで、責任をもってお勧めすることが
 できない、存じ上げない弁護士の方々の宣伝が
 私の開設するホームページでなされる、ということは
 防ぎたいと思っていますので、近々お引越しをさせて
 いただきたいと思います。

  引っ越しが完了しましたら、新しいスペースをご紹介
 させていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

  ※ なお、広告をされている個々の法律事務所を批判する意図は
 まったくありませんので、くれぐれもよろしくご了承くださいませ。
  

Last updated  2008.09.09 21:13:04

2008.09.08

ボーンズ 骨は語る。

 最近、あちこちで宣伝をみかけるアメリカの刑事ドラマ「ボーンズ 骨は語る」。
最近まで全然知らなかったのだが、ある尊敬する裁判官からひょんなことで
教えていただいて、あの裁判官がおっしゃるなら、と思って見始めたところ、、
面白いのでよくみるようになってしまった。
私はCSIという捜査ドラマも好きなのだが、とにかく、物証や犯罪の痕跡、
 ボーンズの場合は遺体、骨、というところから科学の力で、犯人をつきとめて
しまう、という、徹底した物証主義なのが好きだ。

 物証が弱いと、いきおい自白や、不確かな証言に頼って、寄木細工のように
状況証拠を積み重ねて有罪を立証しがちなのだが、それって人間の主観で
ゆがめられる可能性も多いので、とってもあやうい。
 それに対して、徹底して物証を科学的に分析することにこだわって
真実を解明しようとするところは、とても潔いし、捜査の王道だ、と
思う。
 とはいえ、ドラマに出てくる科学技術のなかにはすごい神業的なものも
多いので、「これってみんな本当なのだろうか」とどうしても不思議に思い、
「驚いたんだけれど、いったいこれって本当にアメリカで起きていることなの?」
とアメリカ在住の友人に聞いてみた。友人がいうには、実は、
ドラマのほうが現実よりも進んでいる、というところもあるらしい。
 結構アメリカでも、古典的な自白に頼ったりする捜査も少なくないわけだし、
FBIみたいに優秀な科学者をすべての州で雇えない。
 それでも、ドラマの影響を受けて、陪審員は、ドラマと同様の科学的立証を
要求するようになってきていて、検察側はますます高度に立証を求められるよう
になった、という。検察側は有罪を獲得するハードルが高くなったことに、
悲鳴をあげているんだそうだ。

 しかし、そんな状況をきっかけにして、検察側はますます物証による
立証に力を入れることになり、結果的に物証中心の捜査を進める方向に
進みつつあるようで、ドラマが好ましい影響を生んだ、ということができる。
 (陪審制で、普通の市民の考えが刑事裁判にダイレクトに反映される、
いかにもアメリカらしい話だ)。

 日本ではいまだに捜査側は自白にばかりこだわり、取調べの可視化にも
あくまで反対して、自白をとることばかりにきゅうきゅうとしているけれども、
もう少し、自白に頼るよりも、物証からわかることをとことん突き詰める、
というアメリカのやり方に学んでほしいと思う。
 骨は真実を語る(科学が正しければ)けれど、自白や証言は時として
真実を語らないものだ。


Last updated  2008.09.09 01:21:21

9.11に。アフガニスタン、イラク、パレスティナとつないで



 今年の9.11に日本国際ボランティアセンターさんが主催する以下の会合に
私もゲスト・スピーカーとして参加させていただくことになりました。
 対テロ戦争がもたらしたものを人権の観点からお話していく予定です。
 ぜひみなさまに参加していただければ、と思います。
 
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
              9.11から7年             
          ~それでも対テロ戦争を続けるのか~
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

 2001年9月11日に起こった同時多発事件から7年。あの日から世界は大きく変わ
りました。アフガニスタンやイラクは「テロとの戦い」の舞台となり、多くの民
間人被害者を出し続けています。
 これらの地域はこの7年にどう変わり、今どんな状況にあるのでしょうか。
 それぞれの国を担当するJVCスタッフが報告するとともに、アフガニスタン、
パレスチナ、そしてイラクの隣国ヨルダンと電話をつなぎ、そこに生きる人々の
生の声をお届けします。
 座談会では現場の報告を深めるとともに、日本にいる私たちと「9.11後の
世界」との関わりを、会場の皆さんの意見も交えて話し合います。
アメリカも中東も、犠牲になったのは民間人です。これまでの死を悼み、本当
の平和に向けて何が必要なのかを考える機会にしたいと思います。

【現地報告】
アフガニスタン:長谷部貴俊
イラク:田村幸恵
パレスチナ:藤屋リカ
【座談会】
谷山博史(JVC代表)
佐藤真紀氏(JIM-NET事務局長)
伊藤和子氏(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
司会:郡司真弓(WE21ジャパン理事長)

【日時】9月11日(木)19:00~21:00
【会場】文京シビックセンター 4階区民ホール
【地図】http://www.b-civichall.com/access/main.html
【住所】東京都文京区春日1-16-21  Tel 03(3812)7111
        地下鉄 後楽園駅・春日駅 徒歩1分
        JR総武線 水道橋駅 徒歩8分
【参加費】500円(・u曷VC会員は無料)
【お問合せ】日本国際ボランティアセンター(JVC)
TEL 03-3834-2388 担当:藤屋 jvc-jer@ngo-jvc.net


Last updated  2008.09.08 09:38:12

2008.09.07

汗をかこう!


 この季節が苦手だ。去りゆく夏を惜しんで、一年の上り坂の時期が終わっちゃったな、
などと思って少しブルーになる。まだむしむしするのに、雨も多いし。
 それも秋たけなわになると全然平気になるのだが。
 そんな9月は、短時間でもスポーツクラブに行ってワークアウトをするのが一番
かもしれない。今日は(も)えんえんと仕事をしていたが、夕方からひさびさにエステにいき
(もうすぐチケット切れますよ、といわれてあわてていくことに)、さらに汗をかきたくなってスポーツクラブにも行ってしまった。
 ワークアウトして汗を流すと、体から余計なものがすべて流れて、つきなみですが、
心も体もリフレッシュすることができる。それは本当に不思議。
 1時間といわず、30分でも効果絶大なので、この秋は、
できるだけ時間をみつけて行こうと思います。


Last updated  2008.09.07 21:54:34

ダルフール・イベントを終えて
[ ヒューマンライツ・ナウ ]    


 土曜日の夜、中野サンプラザでスーダン・ダルフール地方の問題に関する
イベントをしたところ、「どこで聞きつけてくれたの?」と思うほど
たくさん若い人が集まってくれ、9時を過ぎても終わらないくらい
白熱した議論になりました。

 私とスーダンのかかわりは実は深くて、1994年に弁護士になったとき、
最初にやった難民事件がスーダンの事件。当然スーダンのことは何も知らず、
当時のアムネスティのタカハシさん(いまは国連)に頼って勉強して、
「ひどい国だなああ」と心底驚いた。しかし、当時スーダンのことに関心の
あったのはタカハシさんなど本当に一握りのひとだったので、いまでは
若い人がたくさん関心をもっていることが- 確かにその後本当に事態が
悪化してしまったからであるが--感慨ぶかかった。

 今回のテーマは、20万人以上を殺害し、300万人以上の人々の村を焼き払って
難民にさせた張本人、スーダンのアルバシール大統領を国際刑事裁判所
で訴追する、という国際刑事裁判所検察官の動きをサポートして、
なんとか人権侵害を終わらせよう、というで、私もそういう話をさせて
いただいたが、これは和平交渉と法的正義が両立するか、という点で
大変問題の多いテーマである。アルバシール氏は「私を訴追する
などというけしからん動きをストップさせない限り和平交渉は
進まない」という態度で出ており、アフリカ諸国のなかにも、
このような訴追を進めるのは和平交渉にとってマイナスだ、という
意見が少なくない。
 それでも、これだけの虐殺や人権侵害の責任者を処罰しないまま、
和平交渉を進める、ということでは、結局紛争の根本原因がそのまま残り、
(紛争の火種が残り)、安定的な平和は実現しない、正義を犠牲にした和平交渉
はみせかけの平和しかつくれない、と私は思っている。
 国連も1990年代後半以降、人権侵害の責任者の不処罰を約束する
かたちでの従来の和平交渉が国際的な批判を浴び、そういうことは
やらなくなっている- つまり、正義を犠牲にした、和平交渉を
是とする立場には立たなくなってきている。しかし、今やそれが
どうなるのか、非常にあやうい状況である。
 この問題は、10月以降の国連安全保障理事会で大きな議論になるが、
日本政府にも先日要請に行ったが、日本からも少しでも多くの声を届けたいと
思っている。

 ただ、悩ましいことは、ダルフールをめぐっては多々ある。
ダルフールが放っておけないからといって日本からPKOを出すのがいいのだろうか。
それに、スーダン政府の後ろ盾になっている中国を政治的に攻撃するために、
政治問題として西側がダルフール問題を騒いでいる、という見方もある、なとなど。
 放っておいたら、人道的介入、という議論だって出てくるかもしれない。
 海外の人権問題が放っておけない、他人のことだと無視する
のではなく、何かできることをしよう、という議論は良いのだが、
これからは、「ではどんなアプローチでいくべきか」について
議論を深めていく必要があるのだと思う。
 人権や自由というのはとかく政治的に利用されやすい概念であり、
人権の名のもとに人権侵害が正当化される、という悲劇は
世界でひろがっている(このあたりのことを、来週9.11に開催される
別のシンポジウムでお話したいと思っています。またご案内します)。
 このあたりをよく見て行動すべきだといつも自戒している。

 ところで、このシンポで報告した日置さんというNHKのプロデューサーの
方、初対面だったが、大学の二年先輩にあたるということがわかり、びっくり。
 突然、"YAYA あの時代を忘れない"状態になり(早稲田ですが)、
二次会はダルフールではなく、とめどなく、共通の知り合いの思い出話で
盛り上がってしまった。
 まだキャンパスが政治の季節のかすかな余韻があった、早稲田らしい
自由があふれてた、なつかしい時期のことを振り返ってしまった。
 母校からも才能のある人々が、なかなか生きにくいことと感じることも
少なくないこの閉塞した現代日本にありながら、それでもいろんなところで
元気に活躍しているんだな、と思って、嬉しくなりました。

Last updated  2008.09.07 21:41:06

2008.09.03

アフリカ・トークイベントのご紹介


突然の首相辞任とその後の展開、なんというか、醜悪な感じで
テレビをみるのもいやになってしまう今日この頃ですね。

さて、アフリカのスーダンという国では、紛争で30万人近い人々が
命を奪われています。
その紛争と人権侵害をどうなくせるか、についてのイベントが
今週末にありまして、私もお話をさせていただきます。
この紛争について、NHKでドキュメンタリーを作成されたプロデューサーの方も
お話されるそうで、お話をきくのがとても楽しみです。

よろしかったらぜひ。

http://japanesefordarfur.org/ をご参照ください。


シンポジウム「ICCとダルフール」
今週です
日時:2008年9月6日(土)18:00~21:00(開場17:30)
会場 中野サンプラザ 第5研修室
アクセス JR中野駅徒歩1分(正面玄関より入って左)
入場無料 定員54名 (できれば事前にお申込みください)

パネラー:
ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本支部 土井香苗氏(弁護士)
ヒューマン・ライツ・ナウ事務局長 伊藤和子氏(弁護士)
NHKプロデュサー(ダルフール・ドキュメント制作) 日置一太氏 



Last updated  2008.09.03 08:46:01

2008.09.01

名張事件・夏の合宿
[ 刑事事件・裁判員制度について ]    


  昨日、今日と、私が取り組んでいる、えん罪・名張毒ぶどう酒事件の
 夏恒例の弁護団合宿があり、浜名湖まで行っていました。

  この事件は、5人の女性を毒殺した罪に問われた死刑事件ですが、
 被告人とされた奥西勝さんは、一審無罪、高裁で逆転死刑判決、
 最近では毒物が異なる、という科学鑑定などをもとに、
 2005年に再審開始決定(裁判のやり直しを命ずる)が出され、2006年に
 その取り消し決定、という数奇な運命をたどっている、未解決のえん罪事件です。
  現在、事件が最高裁にかかっていて、再審を開始するのか、しないのか、
 を決めることになります。2006年の取り消し決定のときには新聞各紙が
 「疑わしきは罰するのか?」と疑問を呈したほど、弁護側に過酷な決定でした。
  事件は昭和36年におきました。奥西勝さんは半生を死刑囚としてすごし、
 いまや82歳です。30人以上の弁護士からなる弁護団が、なんとか生きたまま
 奥西さんを死刑台から救いたいと思って取り組んでいます。

  さて、毎年この時期に合宿をするのですが、最高裁の決定がいつ出るか
 まったくわからない状況にあるので、メディアの関心も大変高く、
 2社のテレビ局が張り付きで泊まり込んで取材をしていました。
  会場のホテルに到着した瞬間からテレビカメラ!!
(でも、肝心の議論の際はお引き取りいただいていて、懇親会とかを
取材されています。そんななかでもいつも熱心に取材していただいて
 感謝です)。
   インタビューされたので、「この事件すら無罪にできないなら、
 裁判所に未来はない。推定有罪や自白偏重の姿勢を裁判所が自ら
 改めようとしないなら、裁判員制度を導入したって、
 刑事裁判には何の展望もない」とコメントしました。本心です。
  この弁護団には大変優秀な先輩弁護士が多く、いつもとても勉強に
 なるうえ、大変楽しい仲間でもあります。
  今回も合宿の結果、山ほど仕事を引き受けてきてしまいましたが、
 東京の若手弁護士たちの助けを借りて、再審開始の決定を目指して
 この秋もがんばりたいと思います。
  支援のみなさま、報道のみなさま、今後ともよろしくお願いいたします。
  
 

Last updated  2008.09.01 22:12:19

2008.08.30

裁判員制度・延期ではなく見直しの努力を
[ 刑事事件・裁判員制度について ]    


ホットな議論になっている、裁判員制度について、
最近、以下のような文書を発表しました。
長いですけれど、全文掲載します。
みなさんはどのようにお考えでしょうか? 


裁判員制度の「延期」ではなく、「制度見直し」の努力を
                         弁護士  伊藤和子
1 裁判員制度に関して、複数の野党が、「延期」「延期も含む再検討を」などとする見解を発表し、少なからぬ衝撃を呼んでいる。国会が一度は決議した裁判員制度について、何らの課題も方向性も示さないまま、無期限延期を決めて、再び刑事裁判を職業裁判官に白紙委任するとしたら無責任な話であり、私はそのような延期論には賛成できない。
しかし、様々な疑問や懸念のあるなか、「決まってしまったのだから三年後の見直しまでは我慢してとにかく施行しよう」と突き進んでよいのか。
先日、裁判員制度に関するテレビの討論番組に参加する機会があり、識者の見解に接するとともに、その後に視聴者の方や市民から送られた感想・意見に多く接する機会があった。特に深夜を押して長時間の番組を見る熱心な市民の方々からの懸念表明を読んで、国民の不安や反対は決して根拠のないものではない、と感じた。多くの国民は真剣に考えて懸念しており、その疑問に応えないまま、表面的な広報キャンペーンをしても問題は解決しないだろう。
 裁判員制度は、制度設計段階における日弁連の当初要求からみて著しく不十分なものにとどまっており、冤罪防止のための条件整備も進んでいない。さらに問題なのは、法律の条文を離れて、裁判所主導で運用に関する既定路線が形成されつつあり、制度が大きく歪められていることである。
まだ、施行まで時間は残されている。これを機会に、臨時国会や来年の通常国会で十分な審議と国民的議論の時間をとって、必要な修正を実現し、かつ、運用に抜本的な見直しを迫っていくべきだと切実に思う。問題は多々あるが、ここでは最近もっとも懸念している点に絞って述べたい。
2 量刑について
死刑・無期を含む事件を対象とする裁判員制度下で、国民は死刑・無期という人の生死・運命に関わる判断を多数決で強いられるが、このことが国民の負担感の最大の要因となっているようである。「証拠に基づいて有罪・無罪を決めるならよいが、人の一生を左右する死刑か無期かの判断を、何を根拠に決めればよいのか」という懸念が極めて多い。しかも、量刑は原則単純多数決とされており、死刑にどんなに反対の者がいても(死刑廃止論者でも)、死刑判決が合議体全体の結論として出される。そういう職業と知りつつ職業選択の自由により職業裁判官となった者なら格別、そのような選択をしていない市民に、一生そのような十字架を背負わせるというのは過酷な負担ではないか。
先進国で未だ死刑を維持しているのは米国と日本だけであり、欧州では市民が死刑判断に参加する余地はない。米国でも陪審は死刑事件においては、全員一致で有罪評決をし、かつ、全員一致で死刑と判断したときだけ死刑評決が出される(米上院は今年、陪審12人中10人が死刑に賛成すれば判事は死刑を決定できる、という法改正案を否決したばかりである)。市民参加で多数決により死刑を決める、というのは世界的に異例な事態である。
また、日本では死刑に関する議論は成熟しておらず、冷静な議論が成立しているとは到底いえない。昨年の国連総会は、死刑執行停止を世界に呼び掛ける決議を賛成多数で採択したが、政府はそのような国際的潮流すら裁判員となるべき国民にまったく周知していない。(むしろ最高裁は、明らかな死刑廃止論者は裁判員から排除するとしているhttp://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/keizikisoku/pdf/07_05_23_sankou_siryou_05.pdf)。こうした状況のもとで、何のよって立つべき基準も示さず、「死刑については市民の常識に任せよう」と、無作為抽出された市民を矢表に立たせるのは無責任である。裁判員の責務から量刑判断を外す法改正は是非とも実現すべきである。
3 「審理は原則3日以内」という運用の危険性
 最高裁は、普通の人が抵抗なく参加できるのはせいぜい3日だ、として、3日以内にすべての立証を終わらせることを前提に、当事者双方に争点を徹底的に絞り込ませ、立証も大幅に制限する方針のようである(司法研修所編「裁判員制度の下における大型否認事件の審理の在り方」参照)。裁判員法には何ら規定がないのに、いつのまにか、すべての裁判員裁判を超短期審理で行うことが既定路線になろうとしているようだ。
しかし、極刑が予想され、有罪無罪が徹底して争われる事案について、事実審理、量刑審理、評議・評決のすべてを3、4日で終わらせる、というのは暴論である。そのために必要な立証が大胆に制限され、防御権は著しく侵害され、真実発見に反する結果になる重大な危険がある。また、事実認定に関する評議も、量刑判断も、全員一致をめざすどころか、「皆さんに早くお帰りいただくために」議論を尽くさないまま多数決評決となって終わる危険性が高い。
 実は、市民の懸念のなかにはこのような短期審理で判断を迫られることへの危惧が少なくない。制度に反対、または参加したくない、という市民の意見のなかには、「3,4日で有罪無罪も、刑も決めるというが、そんな時間で人の一生を左右する判断をするのは無責任だ。そんな恐ろしい裁定には、加わりたくない」「冤罪も増えるでしょう」という趣旨の批判が目立った。本当に誠実に刑事裁判に関わろうとする市民であれば、人の生き死に関わる問題を拙速に決めたくない、たとえ時間がかかっても丁寧に関わりたい、と思うはずではないだろうか。3日以上は集中力が続かないだろう、などというのは国民をばかにした考えだと思う。
 最高裁はおそらく、米国のたいていの陪審裁判が3日程度で終わる、という前提でこうした方向性を打ち出したのであろうが、前提に大きな誤りがある。米国では重罪・軽罪の如何を問わず、争いのある事件が陪審となる。ところが、殺人事件で否認し有罪評決まで進むと死刑の危険があるため、認めて司法取引で終わる事件が少なくなく、殺人事件で陪審に移行するケースはそれほど多くない。そして、真剣に無罪を争う殺人事件では、数週間ないし数か月かかる例が多い。それでも対応できる、という人に、陪審員になってもらうのであり、それで十分成り立っているのだ。一方、南部の州では、死刑事件でも2日程で結審することが少なくないが、これは貧しくて私選弁護人を雇えない黒人の被告人に不熱心な国選弁護人がついて、必要な立証をしないためであり、こうした拙速裁判では冤罪が続出して大きな社会問題になっている。
 私は米国で多くの冤罪事件を調べたが、冤罪は陪審に必要な情報が与えられないときに発生していた。ある米国の冤罪事件では、検察官が被告人に有利な証拠を開示せず、真実から陪審が遠ざけられたまま有罪・死刑の評決がされ、雪冤まで多年を要したが、「必要な情報を与えられないまま誤った死刑判決を出すこととなった陪審員たちは深く悩み、傷ついていた。彼らも冤罪の犠牲者だった」(元死刑囚の発言)という。今導入されようとしている超短期審理により、裁判員に必要な情報が与えられず、審理が尽くされず、納得もいかないまま拙速な判断を迫られることになれば、被告人も裁判員も冤罪の犠牲者になる危険がある。このような運用の方向性には、強く反対すべきだ。
4 「無罪推定原則の徹底」はされるのか。
米国の陪審制度では、無罪推定原則が判断の根本原則として陪審員に幾度となく徹底されている。裁判官は、公開法廷において繰りかえし無罪推定について説示を行い、陪審員選定手続においてもこの原則に従えるか、と陪審員に問い、従えない者は公正な裁判ができない者だとして不適格排除される。
ところが、裁判員制度ではどうか。そもそも裁判官による公開法廷での説示がなされず、評議中に裁判官が裁判員に説明を行う(裁判員法39条)こととなっていて、密室でどのような説明がされるかを知ることもできない。
昨年、最高裁刑事規則制定諮問委員会は、評議での立証責任などに関する裁判員への説明に関して、「法39条の説明例」という文書を作成・公表したが、そのなかには無罪推定、「疑わしきは被告人の利益に」の原則へ言及が全くない。(http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/keizikisoku/pdf/07_05_23_sankou_siryou_03.pdf)。この「説明例」によると、裁判官は、立証責任について「証拠を検討した結果,常識に従って判断し,被告人が起訴状に書かれている罪を犯したことは間違いないと考えられる場合に,有罪とすることになります」と説明すればいいという。最高裁は、裁判員選定過程における質問例も作成して公表しているが、これにも無罪推定に関連するものはない。これでは無罪推定の徹底どころか、裁判員は、「疑わしきは被告人の利益に」という言葉を裁判官から一度も説明されないまま、判断することになろう。上記説明例では、被告人を有罪とするストーリーと無罪とするストーリーのうち、常識で判断して合理的なのはどちらか、というような、「合理的疑い」よりはるかに低い立証責任で、有罪・無罪が判断される危険性がある。私は、弁護士会の模擬裁判の評議を評価する役割を経験したが、評議では、市民から「(理由をあげつつ)有罪というストーリーのほうが無罪というストーリーよりも腑におちるので、有罪」など、無罪推定原則をまったく履き違えた意見や、直観的な有罪論が展開され、それが誰からも修正・訂正されないまま、評決になだれこみ、過半数で有罪、という評決をいくつも見た。上記のような説明では、こうした由々しき事態が現実に起こることを回避できない危惧がある。また、99%の有罪率を前提とする裁判官の事実認定のあり方を転換するのも困難であろう。
「疑わしきは被告人の利益に」が刑事裁判の鉄則であるということは、1975年白鳥決定で最高裁自らが判示したものである。裁判所からの裁判員候補への質問や公開法廷での説明に、無罪推定原則をきちんと導入させるよう、迫っていかなければならない。
5 このほか、取調べの全面可視化が実現していないこと、守秘義務と罰則規定、開示証拠の目的外使用など、問題は山積している。審理期間の問題や無罪推定の徹底などの運用問題も、個々の弁護士の戦いでは限界がある。「無条件延期」でもなく、「無条件実施」でもなく、この機会にもう一度国民的議論を尽くし、必要な改正を実現させ、誤った運用の方向性を正面から問題とし、是正を勝ち取る、ぎりぎりの努力をする姿勢に立つべきだと考える。


Last updated  2008.08.30 19:15:27

一昨日は嵐のなか
[ ヒューマンライツ・ナウ ]    

  
  ご紹介させていただいたトークイベントを一昨日開催し、嵐のなかにも関わらず
 多くの方にご参加いただきました。ありがとうございました。
  こちらのブログに直前にアップしたのを見た学生さん三名からも申込いただいたり
 しました。
  最近クローズアップされている日本の貧困という問題を、世界の貧困と結びつけたり、
 人権という視点でのトークが大変内容が濃く、大変好評をいただきました。
  みなさまにシェアしたい内容なので、一回だけではもったいない。。
  ボランティアさんが内容をユーチューブにアップしてもらおうと思っています。
 
  (特活)ヒューマンライツ・ナウでは、これをひとつのきっかけに、
  貧困と人権について「社会権」プロジェクトを立ち上げることになり、弁護士・研究者と 今回ゲストでおよびしたシェアさんをはじめ、さまざまな分野で活躍されている開発援助
 NGOや日本の貧困問題に取り組む市民団体のみなさんとの連携をこの分野で強めていきたい
 と思っています。
   今後ともよろしくお願いいたします。
  
  

Last updated  2008.08.30 10:54:23


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