ポスト冷戦時代の終わりに
結果として、この500年、世界の変化をリードしたのは英国である「イギリスというのは、何をやっているのかむちゃくちゃで、王国という以外に定まった方針というものがない。こいつらと一緒にやってたら、俺たちはいかんところまで連れていかれる。しかし、10年、20年、50年たってみると、彼らがあのとき、なんでああだったのか、初めてわかる。その教訓が世界大戦だ」昨年亡くなった父から昔、教わった。「三国干渉の屈辱を忘れてはならない。なぜ学校で第二外国語が独仏露なのか。あれは、三国干渉の相手を研究する必要からだ。独仏露は短期的視点で動く。そのときは正しいように見えても、結果として世界に災厄をもたらす。特にドイツはいけない。理路整然と、人を魅了しながら最後は破滅してしまう」BREXITが英国にもたらした最大の恩恵は、もしかするとメイという女性を首相にいだいたことかもしれない。先週、彼女はBREXITについて、Hard Landingと評されるEUからの離脱を宣言、さらに翌日、その内容をDavosの世界経済フォーラムでの演説で補足し、世界に衝撃を与えた。→Theresa May Brexit Speech! - Live - Full!→Davos 2017 - Special Address by Theresa May Prime Minister of the United Kingdom 国家としてのイギリス、政治家としてのメイに長期展望があるとは、必ずしも思わない。しかし、トランプ流の言い方をもってすれば、彼ら彼女らかの国の存在目的はUK Firstなのであり、彼らが目指すはイギリスの国益であり、それは、経済発展と安全保障を主たる構成要素として、その存立基盤は民主主義と産業(industry)である。そのメイがさっそく、トランプに会いにいくという。就任後のトランプと最初に会う外国首脳カナダの首相、メキシコの大統領より先にイギリス首相であるトランプの前任者オバマは、「イギリスがEUを離脱するならば、アメリカとの貿易では列の後ろに並んでもらうことになる」と脅し、イギリスの反発を食らった。トランプはどう言うだろう。→The Inauguration of the 45th President of the United States世界をリードしてきたイギリスの首相とアメリカ大統領彼らが初めてあいまみえるは、世紀の会談となるやも彼ら彼女らの発言は驚くほど似ている世界は、その方向に流れていくのかメイ首相は言い放った「イギリスには成文の憲法というものがない。そこに至る歴史と文化から、物事を精緻に定めたEUのルールはイギリス国民にとって、柔軟性が少ないと判断されたのだろう」言葉に重きを置き、結果として言葉に縛られたオバマ政権から、放言の限りをつくすやに思えるトランプへの移行。ルール、言葉の限界を示している?世界は変わりゆく。イギリスが世界をリードし、リードできた理由は、おそらく彼らの柔軟性に拠るところが大きい。次の手が読めないことこそ、イギリスの強さそれをアメリカがやっていいのかな?BREXITもトランプ現象も、それらが何を意味するか、僕には、どれほどの知恵を絞ってもわからない。作用には必ず反作用があり、常に人間は好奇心と変化への恐怖とのバランスの中にある。お世話になっている先輩は、BREXIT、トランプ現象について、「1990年代アメリカでのリベラルーコミュニタリアン論争で予言された通りのことが、現実となって現れた。巨大化した定住社会では、普遍的なリベラリズムは存立しえない。存立し得るのは”重なり合う合意overlapping consensus”がせいぜい。それらがかろうじて国民国家の範囲で成立する程度。それをあからさまに政治の側が言ってしまうと、”普遍的リベラリズムが存立し得るという妄想につかっていたい連中”の反発は避けられない。それが、いまアメリカで起こっている反トランプ運動」と指摘する。“A state without the means of some change, is without the means of its own conservation.” Davosの世界経済フォーラムでメイ英国首相は、エドモンドバークの「フランス革命の省察」の一節を引用して、英国の立場を締めくくった。自ら変化できないと、自分自身をも守ることができない先輩の指摘が、いきなり理解できた。メイもトランプも、世界は変化するぞと言っていて、その裏側では、世界が変化するとき、変化できぬ者はおいていかれる変化せぬ連中は、EUだろうが、他国の誰であろうが、おいていく(自国民でもついてこれなければおいていかれる)と言ったのだ「巨大化した定住社会では普遍的なリベラリズムは存立しない」彼らの言葉の裏側にある、非情な現状認識が理解できないと、何が起きているのかが理解できない実は、日本も、限界を超えた財政赤字を放置できない中で、安倍政権は、なお、アベノミクスなるものを推進し、福祉国家=普遍的リベラリズムの成立の可能性を追求することに存立基盤を置き続ける。もちろん、いわんや野党各党、マスコミをやではあるが、そろそろ安倍さんは引きどきなんだろうが、勘所は良かったでも、次がいないね。いつかは否応なく、日本という巨大化した定住社会では、結局普遍的なリベラリズムは成立しえないと財政上言わねばならぬ時代が到来する。つまり、福祉の切り捨てが始まるのだ。