カンガンスウレ(珍島の民俗芸能)
跳ねる 踏む 跳ねながら 踏む 私達の情を踏み 愛を踏み 笑いを踏む カンガンスウレは、村の婦人と娘たちが手に手を取り、大きく円を描きながら歌にあわせ、心おきなく遊ぶ女性の代表的な民俗ノリ(遊び)だ。朝鮮時代は三従之道(幼少の頃は父に従い、結婚後は夫に従い、夫が亡くなると息子に従え)七去之悪(儒教で妻と離縁出来る7つの条件。不幸、不妊、淫行、嫉妬、悪疾、多弁、窃盗)という教えから女性を束縛し服従を強調した。このような儒教的伝統を厳しく守ってきた時代にも、女性たちが息抜きをする制度が必要だったようだ。現在は珍島と隣りの海南地域を中心に残されているカンガンスウレは女性解放の時間が必要であったノリ文化の一種と考えられる。おもにお正月や秋夕(陰暦の8月15日)など、満月の夜に行ったカンガンスウレは機織りや農業などの、さまざまな労働で心身共に疲れはてた韓国女性の恨をいやし慰める解放の空間だった。また月は昔から豊年の象徴であり、男女の愛情表現の象徴だった。月夜の明るい晩、女性たちは久しぶりに味わう自由を心ゆくまで楽しんだ。カンガンスウレというと単純に繰り返し回るものだと考えやすが、実際はさまざまな種類の遊びが含まれている。また掛ける声と受ける声で、歌の受け答えをしながら、女性達は生活の疲れを全て忘れていった。昔から韓国民族は共に楽しむ知恵をもっていた。カンガンスウレは芸術公演の形態では、けして理解できない。隣り近所のアジュモニ(婦人)と、月夜の晩に野外に出て、手に手を取り楽しく遊び踊る、素朴な遊技それ自体がカンガンスウレだ。