オーブに帰って来て、1ヶ月。
アークエンジェルでの生活から一転、自宅でのんびりしているうちに気持ちは落ち着いてきて、外出する余裕もできてきた。わたしってば思ったよりも随分と図太い神経をしているのね、なんて思ったりもする。
自宅に戻った当初は気を遣いに遣って、四六時中わたしを見張っているみたいだったパパやママも、今日はわたしを置いて出かけている。家でひとりお留守番をするわたしは、お茶を飲みながらカレッジ復帰のために取り寄せた資料に目を通していた。
- L A S T M E S S A G E - scene 1
ピンポーン♪
不意に鳴った呼び鈴の音に、一瞬身体をこわばらせる。ひとつ深呼吸をすると、落ち着けと言い聞かせる。家に戻って2~3日は『誰か』が自分を捕まえにやって来るのではないか、とびくびく怯えていた。
そんなことがあるわけないのだが何故だか怯えてしまって、これがパパとママを心配させる一因になっていたのだ。もっともすぐに自宅周辺にはひそかに警備が(監視かもしれないが)ついていることがわかった。おそらくオーブ政府が手を回しているのだろう。おかげで保安上の不安だけは消えた。
ともかくもソファから立ち上がり、なんだろう?と首をかしげながら、モニターで来客を確認する。
「!!?」
思いもよらない来客に声を失い、慌てて玄関に向かう。ドアを開けるとそこには。
金色の髪。
その髪の金色にも似た、琥珀の瞳。
「カガリ・・・さん!?」
「やあ、ミリアリア。元気か?」
オーブ連合首長国次期代表の、カガリ・ユラ・アスハが笑顔で立っていた。TシャツにGパンという姫らしからぬラフな格好の彼女は、ミリアリアの肩を抱いて微笑む。
「よしよし、少しは太ったな。元気そうで何よりだ」
「カガリさんこそ・・・。こんなところに、一人で?」
「カガリ、でいい、ミリアリア。他人行儀にするな、仲間じゃないか。今日は特別にキサカの許可を得て出てきたんだ。車にアス・・・、いや護衛官が待機してるから大丈夫だ」
わたし達と一緒に地球に降りてきたアスラン・ザラが、アレックス・ディノという名を名乗り、カガリのボディガードにつくことになったのは聞いていた。車から出ないのは、おそらくわたしに気を遣ったのだろう。アスラン・ザラはまだ・・・苦手だった。
「カガリは忙しいんじゃないの?」
「ああ、まあな・・・。今は来週の代表就任式の準備でてんやわんやだし、代表になったらなったでオーブ独立の交渉が待ってる。やるべき事は山積みだ」
少し疲れた表情を見せつつも、意思を込めた瞳でカガリは続ける。
「でもわたしがやらなくてはならないことだから・・・。お父様が守ろうとしたものを、わたしも守らなくてはいけない。・・・それはそうと、ミリアリアはどうしてる?」
「わたしは・・・、カレッジに復学する準備をしているの。ヘリオポリスで通っていた工科カレッジの姉妹校もあるけど、オノゴロのカレッジも面白そうだし。どっちにするか迷ってるのだけど」
「そうか・・・、行きたいカレッジが決まったらキサカに連絡してくれ。推薦状を出させるからな」
「ありがとう、決めたら連絡するね。あがってお茶でも、と言いたいところだけど、そんな暇はなさそうね。・・・それにしても今日はどうしたの?何か用事があったんじゃ?」
ミリアリアの言葉にあっと気が付いたように、カガリは慌てた様子でジーンズのポケットから何やら取り出す。
「そうなんだ、ミリアリア。お前に渡すものがあって、それを届けに来た」
多忙なはずのカガリがわざわざ足を運んでまで届けにくるもの?
全く想像もつかず、ただカガリを見つめるしかできない。
「なに?」
「これだ」
目の前に突き出されたのは、汚れてところどころが破れた封筒。かなりくたびれている。
「わたしに?」
「そう、ミリアリアに。・・・お前の大切な人から・・・、トールからだ」
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長かったので分割。次で終わる予定(のはず・・・)。
他のサイト様でトール遺書ネタを見かけるけど、敢えて制作。うちのミリには必要な過程なので。 (2005.12.27)
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