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テーマ:家を建てたい!(9745)
カテゴリ:湿気(結露)と仲良く暮らす
「北海道の家づくりマガジンリプラン」VOL. 68 掲載
心地よい体感温度と内装材 住まいにあっては、人の体と室内環境を構成する物体(空気 、壁、天井、床、窓、建具、家具など)の間で、熱は常に移動 しており、これを熱伝達といいます。熱伝達のメカニズムは熱 伝導、放射(輻射)、対流およびこれらの組み合わせですが、 人にとって最も快適なのは放射による伝熱だとされています。 そして、室内で人が肌で感じる体感温度は、気温と主として壁 面温度に依存します。 こうしたことから、心地よい体感温度が得られる住空間を創 出するためには、壁面の温度とその材質が大切な要素となりま す。たとえば、壁面が20℃あれば気温が17℃でも心地よく感じ るとされています。 ビニールクロスの壁を高機能調湿性内装仕上材でリフォーム した方は、一様にたいへん快適になったと言います。それは空 気質が良くなったばかりでなく、心地よい体感温度が得られる ようになったからです。 ちなみに本誌65号のこの欄でご紹介したセラミック住宅は、 真冬時の室温が20~21℃でも十分快適に暮らせます。それは大 気と壁面の温度差が3℃前後と小さく、内装材として使用した 高機能調湿タイルの熱放射特性が優れているからです。 生活蒸気は有効に 住まいでは、人の生命活動並びに炊事、洗濯、風呂など、生 活の営みによって水蒸気(生活蒸気)が発生します。一人の人 間が皮膚や口から水蒸気の形で放出する水分量は、一日に1~1.5 リットルにもなるといわれています。炊事の際の煮炊きや風呂 を使うときには、短期間に大量の水蒸気が発生します。 グラフ1は、前述のセラミック住宅で測定した外気、居間、 壁内の絶対湿度(各月平均値)の1年間の推移です。このグラ フから、冬期は当然ながら夏期でも、外気に比べて居間や壁内 の絶対湿度のほうが大きいことがわかります。それは、外気の 絶対湿度に生活蒸気がプラスされるからです。 このセラミック住宅のように、高機能調湿材を内装材として 使用した住宅では、生活蒸気は調湿材に吸収され、水蒸気が持 つエネルギーは壁に蓄熱され、壁面温度が上がります。この効 果によって、ビニールクロスの住宅よりも低温暖房で快適な温 熱環境が得られるわけです。 表1は、同じ年の壁内の月別相対湿度です。絶対湿度は外気 より大きいにもかかわらず、年間最高値は80.3%であり、1年 を通して湿害の心配のない良好な湿度環境が形成されています 。このことは、建物の許容吸湿量を大きくすれば湿気を排除し なくても湿害が防止できるばかりでなく、生活蒸気のエネルギ ーも有効に利用できることを示しています。 逆立ちする目的と手段 今年は地球環境元年です。地球温暖化防止のための京都議定 書が、去る2月16日に発効しました。建築界においても建築か ら最終処分まで、「建築一生」の環境負荷をいかに低減するか がいよいよ問われることになります。具体的には石油の消費量 を減らし、地球温暖化と環境破壊を招くC02、フロンガス、VOC (揮発性化学物質)、CCA(クロム、銅、ヒ素で防腐、防虫剤 として木材に含浸)などをいかに削減、あるいは無くすかです。 そのためには、建築界自らが制定した「地球環境・建築憲章 」の主旨に沿った建築を実効性のあるものにすることです。し かし、現実は石油と石油化学に依存したままであり、地球環境 にやさしい建築に向かっているとはいえません。 このように理念と現実の肉離れ、矛盾の最大の要因は対決型 の湿気対策にあり、それを金科玉条にしているところにありま す。湿気対策の一手段であった建物の高気密化は、今や目的化 し、その機密性を競い合うまでにエスカレートしています。目 的と手段の逆立ちです。 調湿材を応用した自然共生型の湿気対策は、脱石油化学、ノ ンCCAの建築、自然素材で長持ちする住まいを可能とします。 また、前項で触れましたように、未利用エネルギーの一つであ る生活蒸気など、湿気とそのエネルギーも上手に利用すること ができます。 「リプラン」は札促社より発行されている地域住宅雑誌です。 (3月25日・6月25日・9月25日・12月20日発売) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/01/17 12:13:37 PM
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