「けものみち」の路
すべてを失った女が「行き先のわからない乗り物」に乗り、自らの体を代償に一時の栄華を極める。女はそれを永遠のものにしようともがくがまだ自分の置かれている状況をすべて把握しているわけだはなかった…。重症の夫を抱え、穴倉の底を這うように生きる民子は現代社会に生きる我々のメタファーだろう。自ら努力することを放擲し、未だ見ぬ白馬の王子様の登場を待ちわびる。だが、彼女の前に現れたのは、黒い外車に乗る支配人様。甘いものがもっとあるよと王子様に連れられた先は闇のフィクサー、病みの老人、鬼頭。脳軟化症を患う彼はもはや女を抱くことはできない。できるのはただ秘部を愛撫し続けるだけ。原作では手篭めにされるだけだった民子だが今回のドラマでは民子は体の代償として自らの願望の成就を主張し、女性が主張することを覚えた時代性を反映したよりドラマティックで、エロカッコよく進化している。さらに、彼女を追う刑事、民子の秘密を握る女子大生、と曲者ぞろいの登場人物の中、鬼頭の元愛人、米子とは情念が交錯する熾烈な女のバトルが開戦する。嫉妬、憎悪、甘美…人間のもち得るあらゆる感情がこの作品の中では、禍々しい色で、でも華やかに、美しく大輪の花をつける。ドロドロなんて陳腐な言葉じゃ語れない、人間の現存在、生の儚さ、刹那さまでも写実してくれるはずだ。