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テーマ:司法全般(518)
カテゴリ:司法関係覚書
仕事と関係はないですが、久しぶりに法律ネタ。
無過失推定の問題で、取得時効(民法162条。ここでは2項が問題)と即時取得(民法192条)で混乱してしまった方から質問があったのでひさしぶりに考えてみました。 取得時効についてはわざわざ解説の必要がないでしょう。ですので民法162条2項を挙示するにとどめます。10年間、所有の意思をもって、平穏にかつ公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する・・・こちらは不動産・動産いずれにも適用のある規定ですね。 即時取得は、取得行為によって、平穏に、かつ公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する(民法192条)ことを指し、動産取引の安全を図った規定とされています。 上記両者の共通点は「平穏公然善意無過失」という要件ですね。 このうち「平穏公然善意」に関しては民法186条という推定規定があるため、取得時効・即時取得を主張する者が立証する必要はないことになります。 問題は無過失。これはどうか。 答えは、判例上、取得時効では推定されず、即時取得では推定される、となります。即時取得の無過失推定規定は民法188条。「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する」という規定です。 従って、10年の取得時効を主張する者は、自己の無過失を立証する必要があるのに対し、即時取得では、主張者は自己の無過失を立証する必要がないことになるわけですね。 このような差異が生じる理由としては、動産の取引安全を強く図った民法192条の趣旨があげられます。 初学の頃はここが結構混乱するようで、そういえば択一模擬試験でも結構ひっかかる人が多かったような記憶があります。私も司法試験受験の最初期では混同していたような^^; お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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