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テーマ:介護・看護・喪失(5204)
カテゴリ:ガン
口に出しにくい言葉ってあるもんだ! その単語を言ってしまうと、なんだかコワイような、 よけい悪化してしまうような言葉。 そのときの僕には“ガン”がまさにそれだった。 ということで前回の続きから‥‥ 「じつはね、こっちも悪い知らせがあるんだ」 とようやく本題に入ろうと切り出した僕。 「なんだ?」と父。 「じつはあいつもね、子宮を取ることになったんだ」 「ええっ!」 「おととい検査の結果が出てね」 「‥‥‥‥」 「良くない結果が出たんだ」 同じセリフをくり返しながらなかなか核心に触れられなかった。 「病名は何なんだ?」 マンガのようにゴックンとツバを飲み込んで一呼吸間をおく。 「‥‥ガン、だって‥‥、子宮ガン、‥‥なんだ」 「ガン!?‥‥‥‥」 やはり父親の反応は想像通りだった。 そのタイミングを見計らって妻が台所から出てくる。 「でも手術して切れば大丈夫だろうって医者も言ってたので‥‥ まあほとんど初期の段階だから問題ないみたいなんですよ」 と、一気に説明を始める。 「そうか治るんだな。そうかガンなのか‥‥」 僕と同様に免疫のない父親は、ガンという言葉にショックを受けたようだ。 それから、入院はいつからだとか、手術は何日だとかを一通り説明した。 「でね、まだお母さんには言わないほうがいいと思うんだ。退院するまでは」 「そのほうがいいだろうな」 自身の手術後間もないので、ここでショックを与えたくないということになった。 「まあでも、早く見つかって良かったよ」 と、話題が前向きになってきたところで父親が最後にポツリ‥‥ 「これで長男の孫は見られないんだな‥‥」 この言葉には妻も少しショックを受けていたようだ。 まだそんなことを考えていたのかと思ったが、 逆にこれで吹っ切れただろう。 やっと父に告げられたことで、こちらもある意味ホッとした。 ‥‥‥‥‥‥ そうこうしているうちに、下の弟の家族もやってきた。 ちなみに僕は男3人兄弟の長男である。 彼らには事前に病気のことは言ってあった。 夕方になり、カレーもできた。 今日のカレーは、いつもより良くできたんじゃないかな。 「これ、うまい! 肉が特にうまい!」 「おいしい~、今度、うちでも作って!」 「これって甘口?」 「中辛」 「じゃあこんどは辛口で作ってね」 「教えてあげるから自分で作りなさい!」 「おかわり!」 「お~、この子がおかわりするなんてめずらしい~」 「いやでもホントにうまいよ」 このくらいほめておけばいいだろ??? 結局、カレーのなべはカラになってしまいましたとさ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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