【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

本と映画と食事とあひる

2016.07.20
XML
カテゴリ:映画、ドラマ



 今日は夫を拝み倒して、

6時間近く家を空けました。

どうしても、スクリーンで観たくて。

劇場版『64(ロクヨン)』。

佐藤浩市 主演、

三浦友和、奥田瑛二、赤井英和、椎名桔平、夏川結衣、滝藤賢一、仲村トオル、永瀬正敏、

吉岡秀隆、瑛太、綾野剛、窪田正孝、榮倉奈々、鶴田真由―。

その他、あげきれないほどの豪華キャスト。

これは観に行くしかありません。

 原作に忠実で完成度が高く、好評のドラマの後です。

正直、心配でした。

原作のイメージ通りという点はドラマ版が良かったです。

(娘役は映画版の圧勝ですけど。)

ただ、細かい設定を変更してでも、映画としてこのメンバーで作った甲斐と意味はあったと思います。

良かったです。2200円、払う価値がありました。


以下、感想にネタバレが含まれます。

観ていらっしゃらない方はご注意下さい。











***************************************






あらすじは、ドラマ版の時に触れたので割愛します。

映画版の良かった点は

三上あゆみの病気について誤解のない表現になっていたところ、

交通事故の被害者 銘川老人の視覚障害についてきちんと触れられていたことです。

これは細部ですが、重要です。

ドラマ版では割愛されていた部分、東洋新聞のスクープが続くところなど

きっちり作られていました。

赤間を演じる滝藤賢一が本当に上手くて、

私は大好きな俳優さんの一人ですが

殴り倒したくなるほどの「嫌な上司」っぷり。さすがです。

松岡参事官を演じた三浦友和も、キャスティングとしては良かったです。

私の世代はどうしても柴田恭兵 = お調子者 のイメージがありますので。

秋川を演じた瑛太も、弟の演技を更に上回るくせ者っぷりが○。

緒形直人は『深紅』の時よりも表情に凄みがありました。

皆さん、迫力が凄まじいです。

記者たちに囲まれるシーンは自分が広報官になったような

臨場感でめまいがしました。

 犯人は誰か?というミステリー要素より

人間ドラマに重きを置いています。

一貫して「被害者に寄り添う」という姿勢です。

被害者とは犯罪被害者とそのご遺族だけでなく、

不慮の出来事で事件に巻き込まれざるを得なかった人たちも含めてです。

 ドラマ版は新聞に犯人の自白が載り、幕を閉じます。

が、原作は玉虫色です。

物的証拠が皆無、状況証拠の山積みだけです。

しかも犯人は14年間逃げ通した強者です。

雨宮ほか、犯人の声を聞いた人たちがいくら主張しても

起訴できても裁判でひっくり返りそうな状況です。

どうして作者の横山秀夫は、事件解決という結末にしなかったのか―。

あれだけ名作を出している作家です。

うまく「物証」を作ることくらいお手の物。

でも、しなかったんです。

映画版はそこを掘り下げていると思いました。 

もしかしたら、映画制作側の人たちの中に

実体験で警察は当てに出来ないと知っている人がいたのかもしれません。

(私はそうです。)

 横山秀夫は作家になる前、12年ほど群馬県で新聞記者をしていました。

その時に起きた事件がこの小説のモデルではないか、とささやかれています。

実際に共通点も多いです。

1987年9月に起きた功明ちゃん誘拐殺人事件。未解決です。

そのすぐ後、

清水潔が発掘するまで闇に葬られていた「北関東連続幼女殺害事件」に含まれる

事件が起きています。こちらも未解決です。

どちらの事件も2002年に時効成立。

小説の設定と被ります。

このような「事実」を一般人よりもよく知っていた横山秀夫が、

安易なハッピーエンドにしなかったのにはそれなりの理由があるでしょう。

拭いきれない警察組織への疑念と現実の重さを感じさせます。

デビュー当時はミステリー界の辛口おじいさんに「警察寄り」なんて言われたこともありますが、

そうでもないです。

警察を信じるのなら物証あり → 確定 → 事件解決  → 過去の隠蔽の暴露 

そして再生を誓ってエンド、となるのでは。

 この映画で私が好きなシーンはいくつかありますが、

印象深いのは

三上が記者たちに匿名報道について話している時に

「64」について言及する場面です。

「平成の大合唱、天皇崩御の報道ばかりで翔子ちゃんの事件は極端に報道が少なかった。

情報収集のため、協力して欲しい」

これを聞いた記者たちが虚を突かれます。

広報官と警察を責めるばかりだった彼らが、我が身を省みるシーンです。

 昭和64年。7日間で幕を閉じた幻の年、ということで

印象的なタイトルになっていますが、

それと同時に報道の偏向が顕著に表れた年でもありました。

設定を上手く活かしたいい台詞だと思いました。

 原作に敬意を持っているので安易な大団円には出来ない、

けれども犯人には

自分のしたことを償ってもらいたい―。

そうして考え抜いた末に

主人公 三上と被害者たちの接点を原作よりも増やし、

被害者の立場にたち、

犯人と一対一で向かい合うオリジナルの場面を作ったのだと思います。

 勿論、現職の広報官が容疑者に暴力をふるえば不祥事。

それを新聞沙汰にし、

警察の中にある膿を出す、という力業。

そして犯人には、

もっとも守りたかった家族からの信頼と愛情を失わせる、

そういうところにしか落とし所を見いだせなかったような気がしました。


 モデルとなった事件を調べていて、

被害者である男児の殺害状況から、

その第一報を聞いた時の記憶が甦りました。

あまりの残酷さに

30年近く経った今でも

ニュース映像が頭にこびりついて離れないほどです。

「ああ、あの事件だったのか、、、」と

胸が痛くなりました。

それを踏まえて『64』を読むと

作者の、

被害者及びご遺族への配慮や

優しさがうかがえます。

彼も事件に驚き、悲しみ、怒り、苦しみ、

犯人が捕まることを切に願ったに違いありません。

映画版の「変更点」には理解を示されるのではないか、と思います。

 原作ファン、ドラマファンの間で賛否両論の

映画オリジナルのシーンについて。

犯人と三上は小石や砂利の多い川原(?)で乱闘を演じます。

『64』のモデルと言われている事件で

被害者となった荻原功明ちゃん(当時5歳)が息を引き取ったのが、

群馬県の、ある川だったことを考え合わせると

制作側の「意図」と「本気」が伝わってくると思います。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016.07.22 13:54:05
コメント(2) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
別の画像を表示
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、こちらをご確認ください。


Re:まとめて観てきました 映画『64』前編・後編(07/20)   志津ママ さん
うわぁ~このキャストはすごすぎるわっ・・・
主役を張れる人ばかり・・・観に行きたいけど・・・
思わず速攻で地元の劇場の公開期間を調べちゃいました。
ウチは拝み倒しても6時間の留守は無理だろな・・・
いまだレディスデーでさえ一人で映画なんて許してもらえたためしがないし、けして一緒に行こうとは言ってくれないの・・・

きゃ・・・
せっかくの映画ネタに愚痴書きしてゴメンね。 (2016.07.20 23:19:49)

Re[1]:まとめて観てきました 映画『64』前編・後編(07/20)   あひる5413 さん
志津ママさん

 おはようございます♪

いえいえ、多分 通しで観ることができるのは

一部の人間だと思います。

その証拠に午前中の前編、映画館にいたのは5人だけ。

後半は増えましたけどね。

すごく若い人か、一目で分かる映画マニアって感じでした。

DVDになったら、是非、ご覧になって下さいね。

原作とは随分、違いますがそれでもこのキャスト。

テーマには一貫性がありますので。
(2016.07.21 07:53:25)

PR


© Rakuten Group, Inc.