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倶楽部貴船

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お菊人形 -13-




お菊の競いで、枝がバチバチと折れる音が響いた。
「おい、チビ、待てよ!」
男の子達が、お菊の後に続いた。
妙ちゃは泣きながら、ころがるようにして、一番最後を入ってついて行った。
大フチは、真夏の光をいっぱい吸い込んで、ギラギラと水面をうねらせていた。
しーんと静まった大フチを前に、お菊は大きく息を吸った。
小さな肩がふわっと動いた。
「やめろよ!」
と声がかかった瞬間、お菊の身体は大フチの中にズズッと入っていった。
赤い着物がふんわり広がったかと思うと、たちまち見えなくなって
あとは、小さな泡がプクプクと浮いてきた。
「おい、だいじょうぶか!」
「大人を呼んでこいよ!」
「無理だよ、今からじゃ、まにあわんよぉ」
男の子達は、ざわざわと動き出した。
「お前があんな事、言うからだぞ」
色の白い子を囲んで、
「お前のせいだ。チビがこのまま死んじゃったら、どうするんだよ」
「大フチで助かったヤツなんかいないぞ」
黙って聞いていた妙ちゃは、もうがまんできないという大きな声で、
「うわーん、わーん、きくちゃ、きくちゃ」
 と泣き出した。
「おい、やっぱり大人を呼んでこにゃあ。どえらい事になっちゃうぞ」

─13─

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