眠りのはなし(20) 認知症で睡眠も乱れる
眠りのはなし(20) 認知症で睡眠も乱れる不眠や昼夜逆転で悩む認知症の方、その介護に悩む方は少なくないでしょう。認知症医療・介護の質と量の向上が求められる現状を踏まえ、認知症と睡眠の関連を考えます。加齢に伴い、体内時計の中枢である視交叉上核(しこうさじょうかく)の神経細胞が減少したり、睡眠物質のメラトニンが減少したりします。さらに深部体温の変化が乏しくなり、網膜の光感受性も低下するなど体や神経細胞の変化が生まれ、睡眠が乱れやすくなります。認知症は神経細胞が病的に減っていく病気です。加齢に伴う変化も極端になりがちです。その結果、睡眠は浅く分断され、ちょっとした刺激でも目が覚めやすくなり、リズムもずれて昼間でも眠くなったりします。薬の副作用で認知症のタイプにもよりますが、同年代に比べ、▽睡眠時無呼吸症候群▽むずむず脚症候群▽周期性四肢運動障害▽レム睡眠行動障害-といった睡眠障害を合併しやすくなります。(グラフ)身体合併症に伴う不眠も起こりやすく、服用中のさまざまな薬の副作用が出る可能性もあります。特に、認知症で処方されるドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害剤で不眠が悪化することもまれではありません。認知症に合併したパーキンソン病やむずむず脚症候群の薬でも起きることがありますから、複雑ですね。原因を考える認知症になると、人間関係や環境変化などさまざまなストレスへの適応力も低下します。そうした心理社会的な因子でも睡眠障害が生じやすくなります。対応はまず、睡眠障害の原因を考えることです。言葉で訴えにくい場合もあり、身体疾患、痛みやおなかの具合など体の状態に気を付け、その治療をすることが大事です。医薬品が原因になる場合も多く、薬を減らすことを考えます。ドネペジルの服用者は非服用者の2倍の睡眠薬を飲んでいるという調査もあります。室内で過ごすことが多いので日中は光をよく浴び、運動やデイサービスに参加しましょう。刺激に弱くなるため、音や温度など寝室環境なども大切です。それって不眠?せん妄?認知症では、せん妄という意識障害が生じ、興奮したり、逆に低活動になることがあります。せん妄は意識の障害であって、不眠やレム睡眠行動障害とは異なります。ただし、認知症による睡眠リズムの変化、ノンレム睡眠とレム睡眠の混在がせん妄の背景にあると考えられ、無関係でもありません。不眠と間違えて睡眠薬を使って悪化することもあり、適切な診断と薬剤選択を含む対処が必要です。松浦健伸(石川勤労者医療協会城北病院精神・神経科)「しんぶん赤旗」日曜版 2018年3月11日付掲載認知症では、高齢になると働きが鈍る体内時計の度合いが大きかったり、人間関係や環境変化などさまざまなストレスへの適応力も低下。その分不眠になりやすいということ。積極的に外出して、光を浴びて、運動することが効果的です。