かみぽこぽこ。

うちの学校のOBと会った。
その方は今、中東のある国で働いていて、
英国旅行のついでに、
母校に立ち寄ったということだった。

私はその方と初対面だったのだが、
まあ日本人会なんかやっている関係で
連絡があったので、
私もよろこんでということでお会いした。

うちの家のある時計台村の、
時計台城の近くのパブで
ランチをご一緒することになった。

ステーキなど食べながら談笑した。
その方はうちの学校を卒業したのが
もうずいぶん前になるので、
その頃と今の学校や街の違いなど、
楽しく話した。

1時間くらいたった頃だろうか。

その方が「実は。。。」
とある話を切り出した。

「今回、かみぽこさんのお会いしたかったのは、　
ある方をご紹介できたらと思ったからなんです。」

ほう、それは？

「ここから近くのポンプ町に住んでいる
日本人のおばあちゃんなんですが、
実はこの方、以前私のいる国で
日本料理屋を35年やってた方で
つい最近引退して、
英国にいる息子さんのところにやってきたと。

息子さんは隣町のバーモンド大学の博士候補生（PｈD）、
息子さんの奥さんが、芸術会館大学の文学部の講師なのですよ。
それでこの近くのポンプ町に住んでいるのです。

おばあさん、まだこちらで日本人の知り合いがいないので、
できればかみぽこさんを紹介できればと。」

もちろんいいですよ。
それじゃ、今すぐ行きましょうか、
ということで、かみぽこカーに乗って
ポンプ町に向かった。

しかし、車を運転しながら、
私はふと考えた。

このおばあさんがいた国は内戦とか
政情不安がずっと続いていた国。。。

そんな国に35年。
いったいどんな人なんだろう。
怖い人じゃなかろうか。

そんな人からみたら
私なんて36歳になって
まだ学生やってますなんて、
馬鹿にされるんじゃないか。

そんなことを内心考えながら運転していた。

ポンプ町のちょっと郊外に
おばあさんは住んでいた。

車を止めて、OBの方といっしょに
おばあさんを訪ねる。

おばあさんは、
白髪の穏やかな顔をした方だった。
戦火の中をくぐり抜けたというような
厳しさは感じられなかった。

いや、くぐり抜けたからこそ
穏やかなのだろうかと思った。

私は少し安心した。

おばあさんは名前をファンさんと言った。
これは本名ではない。
中東時代の通称である。

おばあさんは、旦那さんがオランダ人。
苗字がファン＝なんとかさんだ。
(ファン＝ニステルローイとかね)

それで通称がファンさんだったと。

この通称で呼んでもらえばいいということだったので、
ここでもファンさんとさせていただく。

ファンさんから聞かれた。
「日本のことが知りたいの。
今プロ野球はどこが一位？」

「中日です。」

「へえー、落合さんの中日。
やっぱりあの方は選手ですごかったけど、
頭もいいのねえ。」

「はい、そう思います。
落合さんって、選手の気持ちを掴んでますね。

5月ぐらいだったかなあ、
平井ってピッチャーがいまして、
今年はいいピッチングをしても
運が悪くて、
なかなか勝てなかったんです。

ある時、やっぱり平井が好投してたんだけど、
点が取れなくて、終盤交代かって場面になったんです。

でも、落合さんはその時動かなくて、
平井を続投させて、最後勝ったんです。

その試合の落合さんのコメントが
『とにかく平井に勝ち星をつけさせてやりたかった。』
だったんです。

ああ、この人はスーパースターだけど、
選手の気持ちがわかる人だなと思いました。」

「そうなの。
私はあの人はすごいと思ってたけど、
やっぱりそうだったのねえ。」

「はい、落合さんって、
高校時代7回野球部辞めてるらしいし、
大学も3日で辞めて、
1週間くらいホームレスやったらしいです。

だから、落ちこぼれの気持ちもわかるんですよね。
きっと。。。」

その他にも、「江夏豊」ってどんな人？
って聞かれたので、これまた大演説してしまった。(笑)

ファンさんは昭和42-3年頃には
もう中東に行ってしまったので、
江夏という人は、
話では知っていても
見たことがないのだという。

「長嶋さん、王さんって
若い頃はほんとにすてきだったわよ
ほほほほ。。。」

って言っていたけどね。(笑)

まあ、ファンさんが熱心に聞いてくれるので、
ついこちらもしゃべりすぎてしまった。(笑)

OBの方もびっくりだったろう。
（すみません。。。。）

中東のお話も少しお聞きした。
日本料理屋をやってらっしゃったのだが、
その時の思い出として、
現地にやってきた日本のサッカーチームの話があった。

ファンさんのお店は、
現地の駐在員やジャーナリストが来ることが多かったという。

ところが、そのお客さんたちは
まあ1回食べに来ただけなのに
領収書5枚くれだとか、
「今度日本に帰るからなんか買ってくるよ」と言っても
一度も何も買ってきてくれたことなどなかったらしい。
（たこちゅー商事の連中もそうだったらしい。
その上、政情不安になったとき、
真っ先に徹底したのがたこちゅーだったとか。
すみません。。。）

その中で、サッカーチームの礼儀正しさは
とても印象に残っているのだという。

もちろん領収書を余分にくれなんて言わない。
それに、ある時そのチームの団長さんが
こう言って来たという。

「ファンさん。2-3日日本に会議で帰るから、
なんか買ってくるよ。何がいいかな？」

ファンさんはまたいつものことだと思ったが
「そうですね。選手におにぎりを毎日作ってるのですけど、
梅干が足りません。梅干買ってきてくれるかしら」
とお願いしてみたのだという。

そしたら、なんと団長さん、
梅干１０KG、日本から持ってきてくれたのだと。

「うれしかったのよ。
何より、団長さんが約束を守ってくれたということが。」

その選手に作っていたというおにぎりの話なのだが、
それはそのチームの監督（外国人）が
直々にファンさんに頼みに来たのだという。

その監督は、大変個性が強く
非常に厳しいことで知られた人で、
海外遠征したときは現地のものを食べるよう
選手を厳しくしつけていた。

ただ、この人には実は意外な柔軟性もあったようで、
「大事な大会だから、選手に日本のおにぎりを食べさせて、
元気に試合に出させてやりたい。だから作ってほしい」
と、人を介さず自分でお店に足を運び頼みに来たのだと。

そして、試合に勝った後、
また監督はお礼に来た。
「あなたのおにぎりで勝ちました。
ありがとう。」

ファンさんは監督に頼んでみた。
「監督さんは、ジャーナリストの話だと、
サインがお嫌いらしいんだけど、
サインをお願いできませんか？」

そしたら、監督はニッコリ笑って、
「僕がサイン嫌いだなんて、誰が言ったんだ？
僕はサイン大好きです。いっぱいしますよ！」
と、快くたくさんサインしてくれたらしい。

「監督さん、
とってもハンサムでねえ。
ほほほほ」
ファンさんは言う。(笑）

マスコミの作る虚像と、
現場での実像って全然違うという
話がここでもあった。

そんなこんなで3時間くらいお話してしまった。
ものすごく楽しい時間だった。

ファンさんは終始穏やかに話されていた。
でも、旦那さんは現地での紛争に巻き込まれて
お亡くなりになったという話もあった。

本当に厳しい人生を歩まれてきた方だ。
それゆえにその穏やかさが強く印象に残った。

帰り道、私はちょっと感動していた。
35年も中東で戦火や政情不安の中で
頑張ってこられた方と、
こんな地球の裏側の小さな町で会えるなんて。

私も36年人間をやってきて、
いろんな人に会ってきたけど、
こんな感慨深い出会いはそうあるもんじゃない。

私も会社を辞めて、
いまだに学生なんかやってて、
なんだこりゃみたいな人生ではあるが、
こんな出会いもあるなんて、
私の人生もそんなに悪いもんじゃないよな
と思った。

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それでは、明日から

「NHKのど自慢 in London」

に行ってまいります。

日本での放送予定は
予選会：7月31日(土）午後1時30分ー3時30分
　　　　NHK衛星第2テレビ

本選会：7月24日(土）午後7時30分ー8時45分
　　　　NHK総合、衛星ハイビジョン、衛星第2、ラジオ第1

松山千春さんの「恋」を歌ってきます。

本選はわかりませんが、
予選会もテレビ中継です。
ダイジェストだと思いますが、
さびの部分がビシッと決まれば
テレビに映ると思います。

かみぽこぽこは日曜日再開予定です。

それじゃ、がんばってきますねー。(苦笑）