かみぽこぽこ。

さて、今日は「英国留学回想録」。
「もがき苦しむ。。。」の第3回。

「そして僕は英会話を捨てた。」
(2000年10月末)

大学院修士課程もスタートして３－４週間くらい経つ頃、
私は授業になかなかついていけないことには
もちろん悩み続けていたのだが、
もう１つ別の不安も感じていた。

それは、授業についていくために、
図書館や自分の部屋に籠もって勉強すれば勉強するほど、
他人との交流の機会を失ってしまうことだった。

他人との交流がないと当然のことながら、
他人と「会話」する機会がないわけで、
１日のうち、英語を話す機会がほとんどないということになる。

この当時、私はPhDに進む気などさらさらなく、
（。。。というか、１００％、一転の曇りもなく、
そんなことは不可能と思っていた。）
１年の留学で帰国するつもりだった。

ということは、
わずか１年の留学で、

「英国への留学経験者」

と名乗らねばならないわけで、
そう名乗るためには、

「英語の読み、書き、会話する」

を１年で完璧にしなければならない、
と思っていたわけだ。

しかし、現状はどうみても悲惨だった。

「読み、書き」は悲惨ながらも、
コツコツやっていけば、
そのうち上達するかなという気もしたが、
そうすると会話がさっぱり上達しない。

それではいけないかと、
ある日、夕方自分のフラットのキッチンに行ってみた。

そこでは、自分のフラットメートたちが、
夕飯を楽しんでいるはずである。
そこにいけば会話の機会を得られるはずだ。

ところが。。。

うちのフラットメートは、
ギリシャ２人（男女）、トルコ２人（男女）、ブラジル１人（女）
サイプロス１人（男）台湾１人（男）、そして私である。

この構成でわかるだろうが、
結構人生楽しまなきゃ系の人種がほとんどだ。

私は１－２時間、キッチンにいて会話して、
また勉強に戻ろうと思っていたのだが、
いったんキッチンに入ると、
もう酒を勧められて、
会話は延々と終わらず、
夜の１２時くらいまで続く。。。

その日は何も勉強できなかった。

次の日。さすがに２日連続で長時間
拘束されることはあるまいと思って、
キッチンに行ってみたが、
やっぱり飲まされて、開放されたのは深夜だった。。。

これでは駄目だ。
こんなことを続けていたら、
間違いなく落第する。

そう思った。

外国人との交流は大事だし、
会話を勉強するのは大事だけれど、
この人たちにはついていけない。

この人たちは、
昼間短時間集中して勉強して、
あるいは深夜から短時間集中して勉強して、
マスターを取れるような人たちなのだ。

私のように英語で苦労して
時間を取られているようなこともないだろう。

こんな人たちといっしょに遊んでいたら、
多少会話はできるようになっても、
私が留学していたことを証明する
「学位」そのものが取れなくなる。

私は真剣に考えた。

「英会話」なのか、「学位」なのか。

結論はすぐに出た。

「学位」

だった。
私は当時で既に３２歳だった。
英国に留学して、多少会話はできますが、
学位はない謎の留学です、
では社会復帰は不可能だ。

逆に学位さえあれば、
英語が使えなくても
まあ、なんとか英国に行ったという
証明にはなる。

私は「英会話」を捨てた。
フラットメートとの交流は捨てた。

何もかも１年でできるようになるというのは不可能だ。
この１年は、勉強をしようと決意した。

その代わり、「政治学」については、
できる限りのことを学んで帰ろうと思った。

それもできるかどうか不安だったが。。。

マスターのコースが始まって３週間。
右往左往して迷ってばかりだった私が、
なんとか現状を打開しようとして
最初に決めたことはこれだった。

これ以降、
朝から深夜まで図書館で勉強して、
他人との交流がなくなって、
会話力が向上しないことに対して、
迷いがなくなった。

コースが始まって３週間、
私の中で、ただ迷うばかりでなく、
それを解きほぐして作業が、
１つ１つ始まりつつあった。