血族 第2章 『ワルター・ガスナー』
ベルリン。9月7日、月曜日、午前10:00アンナ・ロッフは、ハンサムな夫ワルター・ガスナーに彼女の35歳の誕生日に、たまたま訪れたオーストリアで出逢った。アンナは年増の処女。逢って6日目のプロポーズに、父アリ・ロッフは猛反対。『財産目当てのブタだ』と、孤児院育ちのワルターに手切れ金5万マルクを渡す。だがその後、アンナに5万マルクの婚約指輪を贈ったことで両親はやむを得ず結婚を認めることとなった。意外にも優秀でだが、双子が生まれてからワルターは豹変した。夫に閉じ込められた寝室でアンナは恐怖に震えながら警察にダイヤルした。が、遅すぎた。受話器は取り上げられ、ゆりかごに叩きつけられた。『殺されるっ!』今や彼女にとって夫は、[精神に異常をきたした殺人鬼]以外の何者でもなかった。と、そのとき会社からのメッセンジャーが封書を届けに来ていた。差出人は、リーズ・ウイリアムス。