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カテゴリ:随筆
タイトルの印象で「旅好き女子の美味しいものエッセイ」だと思い読み始めたら
良い意味で裏切られた。 ロシア語通訳者であり、作家であり、共産党幹部の娘であり そして本人も家族親族も、恐ろしい大食漢という環境で育った著者。 彼女が子供時代や仕事で過ごした、日本やヨーロッパでの様々な食の思い出が書かれている。 それも、食欲だけでなく、知的好奇心もたっぷりと刺激される、歴史的&政治的な雑学と合わせて。 1570年代には、南米からヨーロッパに渡ったジャガイモが 人々には気味悪がられ長い間受け入れられず 各地の君主たちは(栄養価が高くて育てやすいぞ)と何とか広めようとした話。 それに比べて、キャベツは古代ギリシャとローマで熱狂的に愛されたこと。 ピタゴラスは、キャベツの効用を説いて、品種改良を試みたりしたとか。 そのほか ウォッカの誕生年と、その誕生の地は長らくあやふやであったこと。 『ちびくろサンボ』はネイティブアフリカンの話ではなく、インドが舞台であったこと。 1054年に起きた「ギリシャ正教会とローマカトリック教会の決裂」。 その理由は、聖餐式で用いるパンをめぐる対決であったこと。 どれもどれも、面白い話だった。 この読後の感想を書くにあたって、著者の近況を調べてみたら 残念なことに、2006年に56歳の若さで逝去されていたことを知りました。 今更ではありますが、ご冥福をお祈りします。 米原万里『旅行者の朝食』2002年 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 1, 2014 03:39:31 PM
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