月天心 貧しき町を 通りけり
見た目の太陽の軌道高度が低くなる季節になると、月の軌道高さは高くなるらしいのです。何故なのかは確認していませんが・・昨日は雲一つ無い快晴は夜になっても変わらず、おまけに満月だったこともあり、午後9~10時ごろは煌々とした月が空高く天心に輝き、街灯が要らない程の明るさとなりました。人通りの絶えた夜の街が妙に静かで明るく照らされる様を見て、与謝蕪村の名句で知られる俳句が頭に浮かんで来ました。月天心 貧しき町を 通りけり月天心は秋の句であり, 蕪村句集には1768 年8 月の作と記されていて、解釈には二通りあるらしいのです。作者蕪村が主語となる「深夜の月が天心に輝いている。月光を浴びながら、寝静まった貧しい家々の前を行く」。別の解釈として、月が主語となる「夜が更けて、天の真上にかかっている月の光が、貧しい町並みを照らし、通り抜けて行く」。私は、月が主語となり、「月光が黙って静かに天空から人々の生活を照らし出す」と言う解釈が一服の絵となり得て、絵画的で蕪村の意図した処では無いかと思っています。蕪村は画家として、生活費の為に絵筆を握り画業を優先していたが、50歳を過ぎて俳諧の活動を本格化した。蕪村の句は自然描写に長けていて、17文字で情景をスケッチするだけで、彼方まで風景を見せることが出来るのは、画家が持つ鋭い観察力の賜物と思われる。