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PLAYWORKS岸井大輔ブログ

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2007.09.15
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カテゴリ:カテゴリ未分類
8月の一ヶ月公演ごときで恥ずかしい限りだが、半月ほど、動けなくなっていた。まあ、2003年4月にPOTALIVEをはじめたとき、複数作家によるポタライブ集というプランはあったので、4年間かけて一つのアートプロジェクトをやってひと段落ついたのだという気持ちである。
やっと復活したので、ブログを書くことにする。

***

もちろん、演劇の創作方法の形式化という目的を考えれば、まだ始まったばかりで、ここからが本番といったところだ。今後の計画については、すでにこのブログで書いていることから変更するつもりはない。だから、このブログでは、今までどおり、日々の記録を残すだけにする。

ただ、今回、アゴラでやっていく中で、ある年齢層の複数の人から、寺山修司についてどう思うかを質問されたことが気になっていた。もちろん、僕の実作が、寺山とそれほど関係がないことは一目瞭然であろう。(説明は小澤英実さんによる「バイエル」評の冒頭にある要約が一番的を得ているので、そちらをご参照いただきたい)私は、私の順序で演劇に近づき続けた結果、散歩演劇になっただけだ。もちろん、寺山の大抵の著作に目をとおしているし(少なくとも大学の開架にあった寺山の著作物は読んだ。忘れてしまったけど)それは、まあ、まっとうに演劇を志す人間なら読むだろう範囲で、イプセン全集やつかこうへい著作集に目を通しているのと同じような話だ。意識的な影響を、ベケットやスタニスラフスキーや世阿弥の読書からはうけたけれども、寺山からは無意識の影響以上のものはない。にもかかわらず、ポタライブをはじめてから、寺山の演劇論に助けられたことは多い。おそらく、彼が市街劇にたどりついた論理と、私がPOTALIVEにたどりついた論理は、同型の、反復といってもよいものだったと感じている。それは、簡単に言えば、ポストモダンにおいて劇をするための上演形式を要請したということである。しかし、私に寺山との類似を質問する人は、目的の同一性を問うているのではなく、表面的な、しかも実作と関係のない印象の類似性を語っているにすぎない。
そもそも、私と寺山を並べて論ずるならば、近代的な文脈に依拠しながらオリジナリティの主張などにさほどの意味を見出せないという姿勢である演劇作家という部分に着目したほうが、まだ面白いだろうし、その上で、岸井のやっていることは寺山がすでにやっている、などという論点が無意味だと感じる。私は、寺山どころか、ギリシャ悲劇も近松もポタライブだ、と主張しているし、新しいことをやりたいのではない。まさかと思うが、文学者として並べていいただいているのであろうか?私は、劇芸術家としてはともかく、文学者としては、寺山の足の裏をなめるに値しない。寺山修司という人はまぎれもない天才詩人である。

なぜ、寺山なのか。

2週間倒れながら思ったのは、以上のような論理的、形式的な応答をどんなに洗練させても、類似を問う彼らは満足しないだろうということである。彼らが問うているのは、寺山という天才から彼らが受けた傷を、私も負っているかどうかということなんじゃないか。
もちろん、僕は受けていない。繰り返すが、僕が詩人ならば、あるいは著述家ならばあるいは演出家ならば、寺山の作品からおおいに傷を受けたであろう。もし、同時代を生きていたら、悪夢のように彼について思いをはせていただろう。劇作家である私にとって、寺山は先輩の一人に過ぎない。もちろんアングラという言葉で通説される演劇の中で寺山の才能はぬきんでていると感じる。寺山のいくつかの戯曲、奴婢訓やレミングや青ひげや星の王子様について僕は何度も絶賛してきた。しかし、犬男やソロモンは、その先を要請しているように僕には見える。かれが長生きしていたら、市外劇の可能性をもっと先のほうまで切り開きたかったんじゃないか。
だから、僕は、寺山と全く違う道を通っているけれど、彼の夢の一部をかなえるためにも働いているのだと信じる。この偉大な先人は、彼のある感覚をどうしてもあらわしたいという欲望により、演劇を必要とし、演劇と真摯に向かい合ってくださった。私は、演劇をどうしても必要とするがゆえに、彼の天才が切り開いた道に紛れ込み、そして、彼とは別の道を進むだろう。

だから、すこしだけ、演劇論におつきあいいただきたいのだ。

今まで書いてきたことと同じことしかかきませんよ。
つづく。





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Last updated  2007.09.16 22:21:19


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