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カテゴリ:短編小説
朝靄が立ちこめる中、二人は町を出て次の町へと急いでいた。
門番の目を盗んで門を抜け、あたりを警戒しながら街道を行く。 琥珀はセイラの所に行っているので柘榴と瑠璃が周囲の偵察を行っている。 翡翠は通信の中継をしている。 「門はこっそり抜けられたけれど、問題はここからよね。」 深刻な顔でエレナは言う。 「確かにそうだが、よっぽどの大物が出なければ一人でも何とかなる。」 「その点は信頼しているけどね。でも誰かにばれると大変だし戦うときは気をつけてよ?」 『だいじょうぶだよ、うぉーどはつよいの。』 と、耳に付けたイヤホンから女の子の声がする。ウォードの端末の一つ翡翠だ、正確は小さな女の子と言った感じでウォードのことはお父さんのように感じているようだ。 「そうね。」 『こちら柘榴、周囲に敵性体の反応無し。』 『瑠璃です、こちらも反応ありませんわ。』 偵察に出ていた二人からの報告を聞き、やや警戒を緩める。 「とりあえずは安心、かしら?」 『そうでもありませんわ』 いつも冷静な瑠璃がやや緊張した感じで返答する。 「どうした?」 『何やら飛行機らしき物がこちらに飛んできます、飛んでくると言うよりは落ちて来るという方が正しいですが。』 「飛行機?『災害』後でも飛べる物があったの?」 「瑠璃が見つけたのならそう言うことなんだろう、だが燃料はどうしているのか……。」 『おそらくはマナを利用しているのかと、魔導光が検知できましたので。』 「そっか、このあたりはマナが薄いからってそんなこと言ってる場合じゃないってウォード!助けないと!」 「む、そうだったな。」 不覚、とつぶやくと服の内側からぼんやりと光が漏れる。 「瑠璃、搭乗者は?」 それだけで瑠璃には通じたらしい。 『術者の可能性は低いですね、未だに止まった原因が特定できていないようなので。また、眼下の様子をうかがう余裕もないようです。』 「柘榴」 『あぁ、周囲に人影は無し。思いっきりやって大丈夫だぜ。』 「すごいわね……。」 てきぱきと状況把握をしていくウォードたちに感嘆の声を上げるエレナ。 「この程度は当たり前だ。本当ならもう少し早く終わらせるべき何だが。」 そう言うと、今にも失速しそうな飛行機の前方から強風を起こす。 落下速度が落ちた飛行機は何とか緊急着陸を果たした。 急いで落下地点に向かう二人。 そこにはほとんどバラバラになりかけている飛行機と、それを見上げて呆然としている男の姿があった。 「大丈夫ですか!?」 慌てて駆け寄るエレナ。 男はゆっくりと振り返りエレナを見た。 油にまみれたつなぎを来たぱっとしない人だ。 「あなたは?」 「私はエレナと申します。こっちはウォード。いまそれが落ちてくるのが見えたものですから。」 「あぁ、そうでしたか、私はライルと申します。ご心配をおかけしました。あなた方はこれからどちらへ?」 申し訳なさそうに尋ねるライルさん。 「えぇと、この先の……」 「もしかして、ミュルスですか?」 「はい、そうですけど……」 「済みません……私も一緒に行ってもよろしいでしょうか。さすがにここから一人で帰るのは危険すぎますので……・」 「あぁ、そう言うことですか。いいよね?ウォード。」 「エレナが良いなら、異論はない。確かにここで置き去りにするのも気が引けるしな。」 「ありがとうございます。助かります。」 こうして、3人でミュルスに向かうことになるのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.04.04 20:19:09
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