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こまた☆たまこのジュネーヴ通信

プロローグ


当時、東京⇔ジュネーヴ間で遠距離恋愛をしていた、たまお&たまこは、約半年ごとにお互いを訪問し合い、平均して3、4ヶ月ごとに会うことが出来ていた。これは、互いにフルタイムの仕事を持つ社会人同士としては非常に恵まれた環境にあったと思う。

ヨーロッパ人であるたまおさんは、当然のように年に25日以上のバケーションを確保出来たので、日本に滞在する期間は、一度におよそ3週間から一ヶ月ちょっとといった具合。

一方、わたしは年次有給休暇が14日間という典型的な日本企業に勤務していたが、たまおさんと知り合う数年前に「年間有給休暇取得日数一日」というモーレツに働いた年があり、そのおかげで、現行有給休暇日数には多少の余裕があった。

それでも、さすがに一度に2週間以上の長期休暇を申し出る勇気はなく、夏期休暇やお正月休みを上手くつなげてのわたしのジュネーヴ平均滞在期間は約10日間であった。

当時、わたしは、中央区に所在する証券会社の国際部に勤務していた。朝家を出るのは6時台で、幸い残業は少なかったが、往復2時間以上の通勤時間は、30歳の誕生日をとうに過ぎた身には結構堪えた。


たまおさんの3度目の訪問となった2004年3月。わたしは、たまおさんの滞在時にも普通に仕事に出掛けていた。そんなある日、ひとりのトレーダーが長期休暇をとることになった。

わたしの業務は、主に会社レポートや契約書の「翻訳」だったため、比較的マイペースに仕事をすることが可能だった。トレーディング業務を横目で見ながら、基本的にはPCに向かう日々。たまぁーに注文の電話を引き継いだり、引け後の約定報告を手伝ったりすることはあったが、あまりトレーディングに首を突っ込むのは避けていた。

っと、言うのも、例えその場で現金は動かないとはいえ、株/債券の取引(トレーディング)とは、日に何千万円/何億円という価値の「有価証券」を売買(トレーディング)することを意味する。間違ったら、エライこっちゃーなのである。

しかもわたしは数字が苦手。文章を推敲したり、ヘリクツを捏ね繰り回したりするのは大好きだが、パーセンテージや約定代金を計算したりするのは得意ではない。(笑)

・・・・っが(!)、何でも一応無難にこなしてしまう「器用貧乏」のこのわたし。その役目は、当然のように「証券外務員資格を持つ」わたしにまわってきた。国内証券会社に英語でディーリングが出来る人材は希少である。(そんな人は高給の外資系に転職してしまうため)

その2週間、わたしはいつもより30分以上早く出社し、いつもの30倍の集中力で電話の受話器をとり続けた。「手に汗握る」とは、このことざますわね?

なんとか無事に、2週間のトレーディング業務をこなし、トレーダーが休暇から戻ったころ、胃の辺りに不快感を感じるようになった。下腹部がキリキリと痛み、胸の辺りもなんだかムカムカする。

心配した、たまおさんは、あれこれ世話を焼いてくれるが、当のわたしは、「げぇー、なんか気持ちワルー、ちょっと横になろ、洗い物はよろしく!」っといった感じだった。

そんなある日の夕食後、突然もの凄い吐き気に襲われた。「ウッゲッゲェ~」(お食事中の方、スイマセン)年甲斐もなく・笑、ちょっと動揺した。



これは、もしや?


トイレから戻ったヨレヨレのわたしに、心配そうな顔をしたたまおさんは、「たまこさぁ~ん、ダイジョウブデスカ?シンパイスル。」っと言いながら、背中をナデナデし始めた。

そして、ハッとしたように、「たまこさぁ~ん、モシカシテ?」っと一瞬顔を赤らめて、「ぼっ、ぼくの鼻を持った娘が生まれたらどーしよ・・・・神様~、それだけは勘弁して下さい。」っと・・・モジモジし始めた。



おい、コラッ、たまおよ、ワシは妊娠はしとらんぞっ!



これは、単なる神経性胃炎じゃよ。ワシは、こう見えても結構デリケートな神経の持ち主なんじゃ。2週間の慣れない継続した緊張感でどうやら胃がやられてしまったらしい。

わたしは、目の前の立派な鼻を持つ大男に向かって、「わたしは、昨日の夜、ヒゲのあるべべを生んだ夢を見たよ。」っと、冗談をかましてみせた。


大きな体をモジモジさせた、たまおさんの目尻が一瞬下がった気がした。



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記) 2005年7月13日




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