山崎はリビングに行き、暁の鞄を漁って携帯電話を探した。鞄の中で光る携帯を取り出し、今来たメールをチェックする。
[ヤマサキの家?こんな時間に何しに行くんだ?]
相手は衛だった。山崎は過去のメールを辿った。携帯に残されているメールの7割以上が衛からのものだった。圭からのメールは1通も無い。
「ちっくしょう!」
山崎は携帯を放ると、寝室に走り込み暁に飛びかかった。
「この淫乱が!畜生!畜生!」
山崎は暁にまたがりその首に手をかけた。怒りに任せてその首を両手で絞める。
「・・・かっ・・・」
衛の顔が見る間に赤くなる。無意識に逃げようともがくが、両手が縛られていて動かせない。手錠が当たって手首に血が滲み始めた。
ピルルッ
その時再びメールが届いた。
山崎はハッと我に返り手を離した。肺に急に空気が入り込み、むせ返る暁を背後に自分の手を眺める。それから咳き込みながら身体を丸め、苦しそうに喘ぐ暁の姿を見て全身が震えだす。
「あ―――――――――――!!!」」
やり場の無い怒りを発散させるかのように、山崎は寝室を飛び出すと、リビングのあらゆるものを蹴り倒した。
「なんでだよ!なんで・・・」
山崎は部屋の真ん中に倒れ込むと、そうつぶやきながら頭を抱えてうずくまった。
やがて大きく息をして気持ちを落ち着かせると、腕を伸ばしてさっき放った携帯を取った。床に寝転がったまま受信メールを開く。
[大丈夫か?まだ起きてるから、話し終わったら来いよ]
携帯を胸にあて、目を瞑って沸き起こりそうになる感情を鎮める。深呼吸すると、メールの返信ボタンを押した。
[大丈夫。今日は疲れたから帰るよ]
送信すると、了解と言う返事がすぐに返ってきた。山崎はもう一度深呼吸をすると、携帯をテーブルに置き、寝室に戻った。
暁は身体を丸めたまま、眠っていた。山崎は近づいて呼吸を確認した。それからジーンズと下着を脱がせると、新しい下着とスウェットを履かせた。
椅子に座りスースーと寝息を立てる暁の顔を眺めながら、爪を噛んだ。
「・・・あなたは僕だけのものだ。」
---
君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・41
人物紹介