映し出された動画は、暁が山崎に向かって愛してるとつぶやくところから始まり、二人がキスしてベッドに入るところまでの過程が、編集されて3分ほどに収められていた。ご丁寧に、ベッドの中の暁の表情まで見せてくれている。
圭は動画が映し出された瞬間、驚いてよろけた。衛が腕でその背中を支える。
「大丈夫か?」
衛は画面から目を離さず声だけで尋ねた。圭は頷いて、衛の顔を見上げた。衛の表情からは心情を読み取れなかった。
動画が終わり、自動的にリスタートした。画面では再び暁が山崎に向かって愛してるとつぶやく。
「マモルさん、これ、どう思います?」
圭が画面を見つめたまま衛に尋ねる。衛は圭の背中からはずした腕を胸の前で組むと、口を開けた。
「何とも言えないな、編集されまくってるってことはわかる。何とかして言わせて、そこだけ切り抜いたんだろうな。ただ、アキラ本人があのセリフを言ったっていうのは間違いないな。」
「いえ、マモルさんがどう思ったか聞きたいんです。」
少し声に嫌気が含まれているように思えた。衛はクイッと眼鏡を上げると、圭を見た。
「・・・どういう意味だ?」
圭は、画面の中で山崎が暁の首に手を掛けキスをする様を、表情を変えることなしに見ていた。
「ヤマサキ先輩は、これを見ているマモルさんを僕に見せたかったんじゃないかと思います。」
衛は圭を見つめたまま、意図を量りかねていた。
「ヤマサキ先輩は、結局アキラさんはマモルさんと付き合うことになっていて、僕らはただの寄り道なんだって言ってました。それを僕に確認させたかったんじゃないでしょうか。」
(なるほどな、ヤマサキはニシハラに不信感を抱かせて、俺と引き離したがってんのか。)
衛は組んでいた腕を崩すと、喘ぎ声が聞こえだした動画を停止させ、再び圭を見た。
「で、お前はどう思ったんだ?ニシハラ。」
僕は・・・と言いながら、圭はうつむいたが、もう一度画面の中の暁を見てから、意を決したように衛を見上げた。
「僕はそれでもかまわないです。僕は、アキラさんが手に入らなくてもかまわない。傍にいられるなら、それで。・・・いつか、遠くへ行ってしまうなら、それまで傍にいられるように、できるだけのことをするだけです。アキラさんが望むなら、好きじゃない振りするくらいなんてことない・・・ヤマサキ先輩は、やり方を間違えてると思います。」
衛はしばらく圭の眼を見ていたが、フッと力が抜けたように笑うと、圭の頭を撫でた。
「お前なら、あいつを変えられるかもしれないな。」
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君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・51
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