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2016.01.30
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IMG_2909.JPG

ひろし君の小学校の給食費は月360円だ。ラーメンが35円の時代だからほぼラーメン10杯分。安いと言えば安いかもしれないが、この給食の不味いこと。牛乳はまだ普及せず、生暖かい脱脂粉乳のミルクに、コッペパンまたは食パン二切れ、それに吐きそうになるくらい不味い野菜スープがアルミの食器に盛られて出てくるのだ。
 しかしながら脱脂粉乳のミルクがどんなに不味くとも、残すと先生に叱られるので、ひろし君は目をつむって思い切り一気飲みしていた。女の子の中には、どうしても口に合わず吐いたり、絶対に飲まないと泣き叫ぶ子もいたくらいだ。
 もちろんミルクだけではなく、野菜スープはもっと不味いし、固くなった食パンも、とても人が食べるものとは思えない。だからひろし君は、スープは一滴も食せずにそのままアルミのバケツに戻していた。またパンは捨てられないのでとりあえず家に持ち帰ったが、そのまま二階の窓から投げ捨てていたのである。

 ここまで書くと、いかにもひろし君は好き嫌いの激しい少年のように見えるだろう。もちろん彼の好き嫌いは尋常ではなかった。そしてそれはおばあちゃん子の時代に形成されてしまったのかもしれない。
 だが給食が不味かったことは事実であり、父兄会で出された給食を完食できる父兄はほとんどいなかったらしい。それも通常の給食よりも上等な「特別仕様」であったにも拘わらずだ。それほど当時の給食は不味かったのである。

 さてこの話には後日談がある。ひろし君が毎日のように二階の窓から投げ捨てていたパンが、燐家の庭の隅に山のように盛り重なってしまったのだ。それだけではなく、そこに何匹ものドブネズミが集まったため、隣家では大騒ぎとなった。
 それで親が隣家から文句を言われたため、もう二階の窓からパンを捨てることは出来なくなってしまったのである。だからと言ってひろし君は、相変わらず不味い給食パンを食べる気にはならない。それで考えたのは、通学途上にある家のゴミ箱にパンを捨てていくという方法であった。そして同じ家に捨てると目立つので、毎日別の家のゴミ箱に捨てることにしたのである。
 なぜ最初からこうしなかったのだろうか。やはり当初はもったいないという気持ちもあり、とりあえず家の中まで持ち込んだのであろう。こうして給食パン投げ捨て事件は、別の問題を残したものの一応一件落着したのである。

作:五林寺隆
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最終更新日  2016.01.30 20:32:57
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