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2016.07.23
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焼き鳥.jpg

 ひろし君の父・紘一郎は、新しい商品を発掘するためと称して、三か月に一度くらいの頻度で、上野周辺の菓子問屋街へ行った。それから河童橋方面に行き、和菓子の製造道具である銅や真鍮の鍋やボール、笊や刃物なども見て回った。だが紘一郎が一番楽しみにしていたのは、浅草の仁丹塔下にある「菊水会館」で、焼き鳥を喰いながら一杯ひっかけることだったのかもしれない。

 紘一郎はその日はじめて、ひろし君を菓子問屋街へ連れて行った。まだ小学1年生のひろし君には早いかもしれないと思ったが、将来は長男のひろし君に和菓子屋を継いでもらいたいという期待から、自分の知っていることは早くひろし君にも伝えたかったのである。
 ところが問屋街でひろし君が急に苦しみはじめた。声が出ない、喉を抑えて七転八倒し始めたのだ。何かが喉に引っかかってしまったらしい。
 それを見ていた問屋の店主が、急いで屋根裏倉庫に駆け上って醤油の一升瓶を抱えて戻ってきた。そして慌てて瓶の栓を抜き、ひろし君の口の中に一気に流し込んだのである。
 咳き込んだひろし君が醤油と一緒に吐き出したのは、小さな変わり玉という飴であった。店主に貰った変わり玉を舐めているうちに、うっかり飲み込んで喉に詰まらせてしまったのである。それにしても、すぐに醤油を飲ませた店主の機転は見事だった。お蔭でひろし君の小さな命の灯が、消えずに済んだのである。

 さて数時間後には、そんなことは無かったかのように、紘一郎とひろし君は「菊水会館」の暖簾を潜っていた。ここの焼き鳥は大きくて旨い、そのうえ一串10円という安さである。だからかなり広いにもかかわらず、いつも飲兵衛たちで溢れ返っていた。
 当然みな相席である。でもそれがまたひろし君には幸いだったのだ。同じテーブルに座っているおじさん達から、「坊やこれも食べなさい」と言われ、いろいろな焼き鳥を食べることが出来たからである。
 だからひろし君は、お腹がいっぱいになって、嬉しくてたまらない。数時間前に喉に変わり玉が引っかかって、死にそうになったこともすっかり忘れてしまい、またここに来たいと思うばかりであった。

作:五林寺隆

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最終更新日  2016.07.24 11:14:56
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