|
カテゴリ:観劇記録
【クリス語り】
ストーリーも音楽も歌詞も全く同じなのに、役者の解釈や演じ方、組み合わせの相性で サイゴンほど作品の印象自体が大きく変わる舞台はないんじゃないかと思う。 懐の広い、不思議な作品。 複数キャストでリピートすればするほど面白くなる作品だと改めて思う。 中でも「クリス」という人物に初めて見た時から私は一番興味を惹かれて それぞれの役者さん達がこの役をどのように演じるか、を ずっと追いかけているような気がする。 (今季は他の役にもだんだん目が行くようになりましたが…) 9/30に見た二人のクリスは役作りが好対照で、どちらも見ごたえがあって非常に面白かった。 というわけで、クリスだけ別枠になりました(笑) 前置きが長くなりましたが、興味のある方だけお付き合いくださいませ。 【9/30マチネ:照井クリス】 初日近辺の切羽詰った感じは少し薄れていたけれど(まあ当然ですね)、 その分いろんな部分が細やかになって 照井クリスという人間がわかりやすくなったなあと思った。 全体を通して、照井クリスには自己否定につながるほどの危うい繊細さ、脆さはあまり感じなかった。 戦争で想像を絶するような経験をして厭世的になってはいるけれど、 基本的なところで精神の健全な、理性的な人。 しっかり大地に根を張って枝を伸ばす若木のように しなやかでおおらかな強さを持った人のように思えたのだ。 だから照井クリスにとってのキムとの恋は「救い」というより 「生涯ただ一つの、本当の恋」という印象を受けた。 ジョンに戦況が危険だと告げられた意味が分かっていても キムと過ごす時間を優先してしまうほどに、 キムへの思いは理性を完全にふっとばして我が身も身を滅ぼしかねないほどの 情熱的な恋だったのだと伝わってきたし 精神的に健全な人でさえも失語症にしてしまうほど キムを失ったことは強烈な喪失体験だったのだなと素直に思えた。 彼が自分をもう一度立て直すためにエレンの存在がどれほど救いになったのかと考えると、エレンを選んだクリスを責められなくなる。 もしエレンと結婚していなければ、あの時点でせめて婚約だったなら、 彼ならきっとキムとタムを迎えに行って3人で幸せになれただろうに… (エレンには悪いけど)と思えてならないので ラストがより切なくやるせなくなるのだけれど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.10.07 02:47:46
[観劇記録] カテゴリの最新記事
|