元気の回復・化学療法1クールOPEが終わってからというもの、傷口や鼻管に触らないよう、琴音はずっと抑制をされていました。 首もやっとこさすわったくらいで、まだ座位もまともに保てない状態ではありましたが、それでも、体を自由に動かす事が出来ないストレスを感じていたんだと思います。 面会中はずっとぐずぐずしていて、夜もよく眠れずに泣いていました。 私は、面会中ずっと琴音から離れられず、トイレも行けないような状態で、分かってはいながらもつい、イライラしそうになる事もありましたが、看護婦さんがちょこちょこと「お母さん、無理しないで休憩取ってきて~」と声をかけてくれて、精神的にとても助かりました。 そんな琴音が、元気を取り戻すきっかけになったのは、食止めの解除でした。 10月20日、OPEから2週間ぶりに食事の経口摂取が始まりました。 手術で脳には多少なりの傷がついている状態です。腫瘍は嚥下(飲み込み)の機能にも関わっている場所ですので、食事も、きちんと飲み込む事が出来るかどうかはやってみないと分かりません。 でも、食事が摂れることが分かれば、ミルクの注入の為に使用していた鼻管を外してもらう事が出来ます! 鼻管が無くなるだけで、琴音にとってどんなに苦痛が軽減されることでしょう。 用意されたプリンを琴音に「食べてみる?」と見せると、とても嬉しそうな顔をしました。 どきどきしながら、祈るような気持ちで一口、琴音の口の中に入れてみました。 「ごっくん」 やった!飲み込んだ! ぎこちなくはありましたが、飲み込めました。 琴音は、もっともっとと催促しました。飲み込める事が確認できたので、看護婦さんが、そのまま食べられるだけ食べさせていいよ、と言ってくれました。 結局その時、カップ1個分のプリンを完食する事が出来ました。 次の日から、水分が開始になりました。水分は固形物に比べ飲み込みにくいそうです。琴音も、水分はむせてしまいましたが、先生は「むせるのは正常という事です。嚥下障害は気づかずに食道でなく肺に入ってしまう事が怖いですから。」と言っていました。 その日はそれからおやつを全部と夕食を半分くらい食べる事が出来ました。 「食べる」って本当にすごい事なんだな、と感じました。 やはり注入ではお腹がいっぱいになった!という実感はなかったようで、経口摂取を始めてからは、満腹になった事もあり、色々なストレスから開放されたようです。 この頃から、体の回復も著しくなり、笑顔もちらほら出てくるようになりました。 明日からは化学療法の1クール目が始まります。 10月21日・月曜日から、いよいよ琴音の化学療法の1クール目が始まりました。 化学療法、と一口に言っても、病気の種類などによって、使う薬剤やその量も全く異なります。 琴音の場合は、1クールは5日間、「パラプラチン」と「ラステット」という抗がん剤を毎日同じ量ずつ投与します。これを、3クール続けてみて結果を見てみるという予定です。 抗がん剤というと、大人でもとても苦しい、というイメージがあります。 とにかく、琴音自身が辛い思いをするんじゃないかという事が不安で、先生には化学療法の副作用については色々聞いてみましたが、「一般によく言われる、脱毛、倦怠感などは出ると思うけど、苦しいといわれている吐き気や嘔吐に関しては、今はとてもいい吐き気止めがあるので、お母さんが想像するほどひどいものではないと思います。」と主治医の先生に言われました。 そう聞いても不安で、若い先生にもしつこく聞いてみましたが、「脳外のお子さんでそんなゲロゲロいう子は見たことないですよ。」とやっぱり言われました。 そう言われていくらかは安心したものの、やはり1クール目はとても心配で、面会に行くのもドキドキでした。 けれど、親の心配なんのその、琴音は(先生の言った通り、他の脳外の子もそうでしたが)本当にけろっとしたもんでした。 朝食は毎日完食で、昼・夕食も少ない日でも8割は食べていました。(ただ、飲み物はまだうまく飲み込めず、あまり飲みませんでしたが。) あえて言うなら、2、3日目の夕方はちょっと疲れているようで機嫌があまりよくありませんでしたが、他にはこれといった苦しそうなところは、親から見る限り、分かりませんでした。 それどころか、化学療法の入っている間も体はどんどん回復してきて、座ったりする事はそう苦労なく出来る様になり、面会に行くたび、とても嬉しかったのを覚えています。 そうこうしている内に5日間は過ぎていきましたが、治療が終わってすぐの土曜日の夕食の時、食事前に日課の痙攣止めのお薬を飲ませたら、急に嘔吐をしました。 治療中に何でもなかったのに、終わった後で抗がん剤の副作用が出たりするのだろうかと不思議で、先生に聞いてみましたが、「治療後に下痢をするっていうのは、大きい子から聞いた事があるけど、通常治療中より治療後に副作用が強く出るっていうのは、あまりないと思うんだけどな・・・。」とおっしゃっていました。 じゃあ、一体何なんだ?と思っていたら、次の日から、咳・鼻水と風邪の症状が現れました。 どうやら、風邪のせいだったらしいです。ちょうど治療の時期と風邪がリンクしてしまったみたいでした。 この風邪もそうひどくはなく、本人はいたって機嫌もよく、風邪っぴきの何日かの間に、少しですが、私に支えられながら歩けるようになりました。この時は、初めて歩けた日のように感動しました。 そして治療後、10~14日間程すると、一般に「骨髄抑制」と呼ばれる、白血球や血小板といった血液の数値の低下が現れます。 脳外の子の使っている抗がん剤の場合、主に血小板の数字が問題になってくるようです。 琴音も例に違わず、ちょうど10日ほどで、血小板の数値が下がってきました。 11月5日の血算で血小板ば5万2千になっていて、先生から「2万代に落ち込むと問題が出てくるので、3万代になった時点で輸血をします。」と説明を受けました。 次の日、もう1度採血したところ、3万1千で、明日の7日に輸血をするという事になりました。 それから、先生に来週の木曜日に琴音を眼科受診させると言われました。 琴音はOPE後、片方の黒目が斜視のように内側に入って不自然になっていました。 おそらくOPEの後遺症のようなもので、次第に改善されていくだろうとの説明を受けており、実際日が経つにつれ、だんだん目立たなくなってきているのですが、一応眼科の方で検査をしてもらう、との事でした。 その日の夜、先生が輸血の同意書を持ってきて、輸血による副反応の説明などをしてくれました。 同意書にも注意書きがありましたが、念には念を押してということなのでしょう、かなり怖い事も書かれていて、ちょっとびびってしまいました。 蛇足ですが、この日から何故か、急に琴音は先生、特に1番若い先生になついて、ぺったりとくっつくようになっていました。「だっこだっこ」とせがんでいて、私ははじめて見た時びっくりしてしまいました。 午前中にお菓子ででも買収されたか、なんて思ってしまったほどでした(笑)。 次の日に、夕方から5時間くらいかけて、輸血は滞りなく行われたのですが、この日のお風呂の時、私は琴音の背中に湿疹が出ているのに気がつきました。 先生に見てもらったところ、抗けいれん剤として服用してる「フェノバール」による薬疹か、ウィルス性のものか、アトピー気味か、と言われ、ともかく原因がはっきりするまで、部屋から出ない様に指示されました。 翌日、湿疹は顔にまで広がっていて、専門の先生が琴音の湿疹を診にきましたが、琴音はびっくりして大泣きでした。先生が出ていって、やっと泣き止んで落ち着いた後、琴音をお風呂に入れていたら、今度はさっきの先生が上司らしき先生とやってきて、いきなり、ガラッと戸を開けて入ってきました。 それで、琴音はまた大泣きです。 診察だから仕方ないにせよ、この時は「こんなの禁じ手だ!セクハラだ!」と、口には出さねど、私はプリプリ怒ってしまいました。 それはともかく、湿疹は伝染性のものではない、という事で、隔離がOFFになりました。 そして、薬疹の可能性が高い、という事で「フェノバール」がカットになりました。 やめてしまっても大丈夫な薬なのか、先生に聞きましたが、「基本的にけいれんを起こす可能性があるのは大脳の腫瘍で、琴音の場合は小脳なので、特に問題は無い」、とおっしゃっていました。 それからこの日、琴音のプライマリーの看護婦さんが「もしかしたら外泊が出来るかも」と言っていましたが、親としては嬉しい反面、入院後初めてなので、ちょっと不安でもありました。 が、翌日先生は「輸血後だし、まだ数値も下がり気味なので、今週の外泊はNG」と言っていました。 これには、正直がっかり半分、ホッとしたの半分だった事を今でもよく覚えています。 その後、血小板も盛り返してきて、1クール目は特に問題なく過ぎました。 ただ、髪の毛はやっぱり抜けてきて、薄いところが目立ってくる様にはなっていましたが。 (てっきりOPEの時、髪の毛を全部剃ったのかと思っていたのですが、切開部より下の髪の毛だけ剃ってあり、上の部分は全部残っていたのです!これが前から見ると普通のロングヘアなのですが、後ろから見ると、ぱっくり無毛部分が出来ていて、ちょっと面白い頭でした。) ちょっと分かりづらいけど、後頭部の下半分が無毛なの分かるでしょ? 化学療法1クール施行時の血算です。
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