同じ作者が書いた小説でも、今回のは痛快時代小説です。
作者の鳴海丈の書く物語は艶っぽいのが多いんですが、今回のように普通の時代小説もあります。
娘同心七変化
毒蛇魔殿
鳴海丈
娘同心七変化 毒蛇魔殿 廣済堂文庫
鳴海丈
この本はシリーズ三作目になるんですが面白い本は素敵なことに、どの巻から読んでもそれなりに面白かったりします。
私は当然一作目から読んでます。
簡単にいえば物語は男装の同心・古手川美鈴が気分爽快・快刀乱麻に事件を解決する本ってことになるんですが、それだとさすがに簡単すぎるよなと。
事の始まりは
徳川家斉の治世の文政年間、若君の竹松を暴れ馬の危機から救った美しい娘は、柔術道場師範代を務める小手川美鈴だった。その褒美として美鈴は前代未聞の娘同心になることを許される。
(廣済堂出版より抜粋)
ってことで、褒美に何かを得るってパターンは時代小説には珍しくもないでしょうけど、それが男装の麗人ってのはそこまで多くもなかろうかと。
この作者の作品には男装の麗人と男装娘ってのが物凄く頻繁に登場しますけど。
美鈴が使うのは真伝鬼倒流柔術って厳つい名前の柔術なんですけど、その技を男装して古手川鈴之助と名乗る美鈴が駆使し颯爽と駆逐するとこれまた痛快です。
今回はタイトルにもあるように毒蛇を使った事件が物語の中心になるんですが、作者の小説にはけっこう共通の職業として登場する死客人やら表紙絵にも今回は眼帯で登場している 血桜お煉 もからんできて物語は盛り上がります。
ちなみに表紙絵の真ん中が 古手川美鈴 で豹柄っぽい着物が美鈴の友で混血児の女やくざ ジャガラタお千 です。シリーズ三作の表紙絵がほとんど女性だけってことからも簡単に想像できますが女性が活躍する時代小説です。
艶っぽくなくても十分すぎるぐらいに面白い鳴海丈の時代小説でした。