|
プロフィール
たこ麗子
くびれと腹筋を寝たきり生活で手に入れた真実の記録。
|
|
バックナンバー
2024年04月
2024年03月
2024年02月
2024年01月
2023年12月
|
|
“田舎暮らし”という幻想。
-----------------
○月○日
「釣りと果物狩り。豊かな自然に囲まれて充実のセカンドライフを」
という広告で村のことを知った。
村にはほとんど人がいないので、移住者は大歓迎なのだそうだ。
家具つきの家があり、生活必需品は村での仕事でまかなえるとのこと。
人ごみと仕事と人間関係に疲れきっていたわたしには夢のような生活。
でも今の生活から、都会の便利な暮らしから離れる自信がない。
○月○日
思い切って仕事を辞めた。明日から自給自足でやっていく。
スーツを後輩にあげた。村で着飾る必要はない。
イームズのチェアーもフリーマーケットに出した。
○月○日
引越しの日が雨だなんて幸先悪いと思ったが、着いたらやんでいた。
役場まで乗ったタクシーの運転手に名前を聞かれた。
ちいさな村だから見知らぬ顔はすぐに分かるようだ。
「村には花嫁修業できたのか」
「手持ちの金はあるのか」
と、世間話の域を超えた質問をされたのにはちょっと困った。
プライバシーに立ち入りすぎだと思うけれど、村とはこんなものだろうか。
役場で「役場って漢字、読めます？」と聞かれた。
識字率の低い村なのかもしれない。
家までは徒歩。村内はタクシーもなく、公共の交通機関がない。
誰かとすれ違うたびに親しげに声をかけられ、立ち話がはじまる。
役場の誰かか、タクシーの運転手が喋ったのか、名前も知れ渡っている。
初対面で名前を呼ばれるとは思わなかった。ちょっと照れくさい。
家は平屋で屋根裏にベッドがあり、先住者が寝ていた。
移住者は全員同じ家に住むのだそうだ。
家具つきの家、とあったが、あるのはベッドだけだった。
○月○日
今日はゆっくり旅の疲れを癒そうと思っていたが
「家のローンがまだ残っている」
という工務店店主がたずねて来た。賃貸ではなく買い上げのようだ。
私が契約したわけではないのに、と思ったが
「確かにそうだが、一緒に住む以上ははらってもらう」
と一方的に工務店で働くように宣告され、怖かった。
とてもあの店主の下では働けない。
村内の果樹になっている果物や浜辺の貝を店で買い上げてくれるらしい。
いちにち果樹を集め、貝を掘ってすごした。腰が痛いが、充実した一日だった。
先住者は起きない。
○月○日
果物と貝を店に売りに行くと工務店店主がいた。
工務店と不動産の売買と商店をかけもちしているらしい。
リサイクルショップもやっている。古物商の資格を持っているのか疑問に思う。
働く気はないので買取だけを頼もうと思ったが、
「早くこれに着替えろ」
と一方的に制服を渡され、頑として話を聞かない。店内に更衣室はない
さすがに食い下がったが、私服でいいから働けとのこと。
観念していちにち働いた。
村中の住人に挨拶まわりに行かされ、その後徒歩で家具の配達。
ダイレクトメールを渡され、宛名書きかと思ったら本文も書かされる。
役場の掲示板に店の宣伝を書いて来いと言われ、そんなことまで、と涙が出た。
これだけ働いて一日の労働代金は果物一箱分にもならない。
この村の労働基準法、最低賃金はいくらなのだろうか。
計算してみるとローンは果物12800個相当だった。
同居人は起きない。
○月○日
村人から昨日の挨拶まわりですっかり顔を覚えられたようだ。
家も知れ渡っているらしく、寝てばかりの同居人の話も少し聞いた。
同居人からもらった、という手紙まで読まされる。
この村にプライバシーはない。
「あの家はふたりで住むには狭くない？」
と、ローンがまだ残っているのに口々に建て増しの話をされる。
家具の配置にまで遠まわしに意見してくるものも少なくない。
思ったより村のつきあいは疲れる。
同居人のひきこもりの原因はこれかな、と思った。
○月○日
バイト代を納めに役場と併設されている郵便局へ行く。
ついでに村内の名所が知りたくて、役場で環境について質問した。
「ひどい村だ、という匿名の投書が来ている。雑草が生えすぎでは…」
と、村の整備環境についてとんちんかんな返答が来た。
でも、確かにいくら田舎だと言っても酷すぎるぐらいの雑草が生えている。
広告の写真と違いすぎる。
○月○日
今日も一日果物と貝を集めて働いた。
魚や虫も買い取ってくれるそうだが、釣竿や補虫網を買う余裕がない。
利息が増える前にローンをなんとか返さなければ、と気持ちが落ち着かない。
役場で投書が読まれた理由が分かった。
村内の環境整備は移住者にまかされているらしい。
住民税代わりか。だとしたら、なぜ他の住人はまったく手を貸さないのだろう。
花の水遣りのために如雨露を持って歩いている住人を見かける。
ガーデニングは人気があり、花の交配も盛んなのだそうだ。
雑草を抜くことは考えないのだろうか。
噂話が好きな住人が多く、たいして親しくないのに話しかけてくる。
誰と誰が喧嘩をしている、交際する気がありそうだ、という話ばかりだ。
独身者が多いせいか、寝てばかりの同居人との仲に探りを入れてくる。
仕事中だけのつきあいではないので都会より煩わしい。
田舎暮らしに憧れたりして、私は馬鹿だ。
 田舎暮らし夢の家
関連日記
よそものの家 …どうぶつの森日記その2
"英語漬けともっと英語漬けを比較
"くびれと腹筋物語"＆人妻からの返信
楽天自腹列伝
楽天ブロランキング
|
お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
最終更新日
2007年09月20日 03時45分03秒
コメント(0)
|
コメントを書く
もっと見る
|
おめでとうございます！
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
エラーにより、アクションを達成できませんでした。下記より再度ログインの上、改めてミッションに参加してください。
x
まんぺ@
