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2013年08月07日
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テーマ:本日の1冊(3685)

「市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像」佐々木実 講談社

小泉政権時代に竹中大臣のもとで仕事をしていたある官僚は、竹中大臣とこんなやりとりをしたことがあるという。
「「構造改革」には明確な定義がありませんね」
「ないんだよ」
「なにをやれば「構造改革」を実施したことになるんですか?」
「海外で普通にやられていて、日本ではやっていないこと」(323p)


もちろん霞が関では「海外」とはアメリカのことである。

竹中平蔵とは何者なのか。経済学が苦手な私には厳しい記述が多かったけれども、一方では大変面白い書物だった。長年に渡って竹中を追い続けてきた元日経記者が、その人生と行動を深く暴き出したと思う。

読んで見ての私の印象は、この人は学者ではない。ということである。政治家に似ているけれども、本人は違うと言うだろう。狙っているのはやはり子供がねだるように単なる「権力」なんだと思う。

信念があって新自由主義をやっているわけじゃない。まるでゲーム感覚で、学界と政界と市場を操っているとしか思えかった。つまり、最初にゴールの結論があって、そのためになんでもやるということで、その戦術を作るためにはとても頭が回るというタイプに見えた。どう考えても郵政民営化は、170兆円と言われる巨大な郵便貯金の資金を民営化して株式市場に出して海外(アメリカ)に売り飛ばすために仕掛けたとしか思えかった、この著者はその見解は避けているけれども。

高校時代、竹中は民青に入っている。元旦登校問題とかに関わっていたらしい。しかし、そこで彼はかえって共産主義に見切りをつける。一橋の経済学部に入る時に「マル経じゃなくて近経をやるわ」と民青仲間に宣言したらしい。大学では、高級官僚を親にもつ友達をえる。銀行から経済研究員になり、「つて」の構築に才能を発揮、政府のシンクタンクに近づく。他人のものを取り込み、他人の情報を我がものにして、何時の間にか目的を達成する。しかし、やっぱり「なんのための目的」かは一切明らかにならなかった。

著者は経済学者宇沢弘文の「混迷する近代経済学の課題」という一文について紹介している。

経済学はある目的を達成するために「どのような手段を用いたらよいか」を扱うけれども、「どのような目的を選択すべきか」を扱う学問ではないー経済学の古典「経済学の本質と意義」でライオネル・ロビンズが展開した主張を、宇沢は批判的に検討している。ロビンズの主張をそのまま受け入れるなら、「公正さ」のような「価値判断」を伴う概念は、経済学で論じることができなくなる。
事実、「平等」「公正」といった概念を無視し、「効率」のみを形式論理的な枠組みのなかで論じるようになったことで、この学問は「価値判断からの自由」を標榜できるようになった。けれども、それは見せかけにすぎないのではないか。そう宇沢は指摘した。「価値判断からの自由」は「効率性のみを追求し、公正、平等性を無視する」という態度の表明に他ならないからだ。そして、効率性のみを追求する知識人が現実の政治と固く結びついて影響力を行使するとき、取り返しのつかない災いが起きる。
「効率的な爆弾投下」「効率的な枯れ葉剤の散布」を誇らしげに口にするマクナマラ国防長官に、宇沢は、経済学あるいは経済学者の究極の姿を見ていたのである。(319p)


これは、そのまま竹中平蔵の姿と重なるだろう。
2013年7月1日読了





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最終更新日  2013年08月07日 14時02分44秒
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