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カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
「北近畿の弥生王墓 大風呂南墳墓」肥後弘幸 新泉社 シリーズ「遺跡を学ぶ」の最新刊である。である以上は、流動激しい弥生像の最新情報も少しは入っているかもしれないと思い手に採った。 内容(「BOOK」データベースより) 丹後半島の付け根、日本三景の一つ天橋立をのぞむ丘陵上の弥生墳墓から、全国的に珍しいライトブルーの輝きを放つガラスの腕輪が出土した。鉄製武器も副葬し大陸とのかかわりがうかがえる“王墓”から、弥生時代の北近畿に生まれいづる「クニ」の姿を探究する。(以上紹介文書終わり) 当時、天橋立が存在していたかどうかの記述がなかったのは、残念でならない。けれども、この本に詳しい遺跡地図が載ったので、是非とも行って観たい遺跡巡りの地域になった。 舟底状木棺という棺を初めて知った。大きな木棺と台形の角が取れた長方形。その中央をくり抜いて遺体と副葬品が朱を埋葬する。こういう形も珍しいが、銅くん(銅製腕輪)、鉄剣の多さ、ヤスという漁労具、そして全国に四例しか出土例がない(おそらく弥生時代で最も美しい工芸品)ガラスの腕輪の副葬品の凄さ。その数十年後には、赤坂今井墳墓という弥生時代最大規模の出現も考えると、丹後地域に極めて有力な弥生王国があったのは確かである。そして、副葬品があまりにも華やかで、かつ武器が多い。私はこの王族たちの戦闘的な性格を想像せざるを得ない。 弥生時代末期の弥生像について新しい知見はあまりなかった。北近畿をめぐるモノの流れをスケッチしていたが、あまりにもラフ過ぎて違和感を覚えたということをメモしておきたい。墓壙内破砕土器の供献儀礼は興味深い。著者は楯築遺跡の破砕土器や破砕聖物の供献とは別物と考えているようだが、何らかの関係性を疑わざるを得ない。 丹後は古墳時代になって、墓制が途絶えて、やがてまた大和体制として復活する。古事記には載ってはいないが、ここは大和王権が出来る前に、王制が滅ぼされたと見ていいのではないか。ここにこそ、最も大きな戦乱があった。しかし記紀には残さなかった。日本には馴染まない武力王制だったためではないか。 2016年5月読了 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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