南部の昔っこ
鯨の八戸太郎
その昔、毎年夏になると、八戸の鮫の海に姿を現す、一匹の大きな鯨がありました。
鯨が来ると、イワシの大漁が続きましたので、土地の人々は神様のお使いとして、大切に見守ってきました。
この鯨は、人々から「八戸太郎」と呼ばれ、浜では毎年その姿を現すのを楽しみにしていました。
実はこの鯨は、毎年海から伊勢参りを続けていて、そのお蔭で仲間の鯨からも認められ、人々からあがめられる、神様の仲間入りが許される事になっていました。
ところが運悪く、紀州の熊野浦で、鯨取りの漁師の「もり」を突き刺されてしまいました。
鯨は必死になって海に潜って逃げました。
八戸の鮫の海岸では、夏になっても姿を見せない「八戸太郎」を、皆んなが待っていました。
ある日の事、漁師たちが岸辺に傷ついて打ち寄せられている大きな鯨を見つけました。
それは必死になって、八戸にたどり着いた「八戸太郎」でした。
鯨はそのまま、黒い石に変わりました。
浜の人々は、その意思の鯨を、今でも守り神としてあがめつづけています。
現在も西宮神社の社前に「鯨石」として残されています。
(蕪島の近くです)
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