極刑空間

『星空のメモリア』感想　第二十九回

“小河坂千波”編

※以下、ネタバレ注意

























































今までのあらすじ。

心配するのがアホらしくなるくらいに、いつも元気な千波。

【７月１０日】

夢……。

なぜ、去り際に悲しそうな顔をするんだろう。

【７月１３日】

夢。

パジャマ姿で出歩くのは……もしかして、入院でもしているのか。

【７月１８日】

衣鈴を天クルに勧誘するため、千波に協力を仰ぐ。

千波は何の見返りも求めず、快く協力してくれた。

• 感謝する
• 内心で感謝する

ふむふむ。

ニア　感謝する

「俺も、そんなお前が好……」

「す？」

「すき焼きだ」

……。

「夜食にしては重いメニューだねお兄ちゃんっ」

こうやって半端に誤魔化すから、余計に恥ずかしくなるんじゃないの。

【７月２４日】

夢、夢。

去り際の表情は、やはり悲痛だ…。

【７月２８日】

海水浴の日。

水平線に陽が沈む頃。

「…………」

夢だ。

浜辺から出て行く彼女を、洋は慌てて追いかける。

走った。

そうするしかなかった。

うずくんだ。

だって、わめいているんだ

過去の「僕」が急かすんだ。

同じ轍は踏むなと。

夢の姿を、駐車場で見失う……車で移動しているのか？

……手放したのか？

俺はまた？

いや、そうじゃない。

俺は彼女を忘れていない。

名前は忘れても存在は忘れていない。

洋は諦めてはいない……が。 

まだ夢とは会えないのか…。

ちくしょおおおおおおおおお！！！

【８月１４日】

洋の腕の中で眠る千波。

千波は、何度も、何度も母親を呼ぶ。

• じっとしている
• 抱きしめる

……。

ニア　抱きしめる

千波も抱き返してきた。

「お母さん……」

「お兄ちゃん……」

「お父さん……」

家族か。

衣鈴ルートでも、千波は家族を求めていたな。

【８月１８日】

どうやら無事にルートに入ったな…。

小河坂千波は乙女である。

…なんか変な独り言が始まったぞ。

千波は寝惚け眼で、サイドボードに飾ったペーパーオルゴールを聴いている。

ってこの曲、このゲームのエンディング曲じゃないか。

「千波ねむねむじゃないから起きるねー」

そういう千波の目は一本線のまま。

なるほど、衣鈴はタロット占い、千波はオルゴールが遅刻癖の原因か。

千波が起きると、既に洋は朝食を摂っているいつもの光景。

洋に朝食を作ってあげようと意気込む千波だが、未だに洋より早く起きた試しが無い。

「千波はもう子供じゃないからねっ」

「バカ、子供に失礼だろ？」

「どれだけ千波のこと下に見てるのお兄ちゃん！？」

千波は一人でボケとツッコミをこなすハイスペック・おバカだな。

「あらあらダメよ洋ちゃん、千波ちゃんいじめちゃ。今すぐご飯つくるからね」

毎度のことながら、完全に寝惚けている詩乃さん。

「詩乃さんっ、だったら千波も手伝いますねっ」

二人は仲良く、まな板にはたき掛けを始めた。

もうやだこの家。

洋がミルキーウェイのバイトに出ようとすると、千波が付いてきたがる。

お前宿題とか大丈夫なの？

「千波が宿題やってると妖精さんが現れることがあるんだよっ、大抵夜遅い時間だけどねっ」

「妖精さんはどうせ夢ですからって言って千波が寝てる間に消えちゃうけどねっ」

……多分それ、守護霊のレンちゃんじゃないかな。

玄関でバタバタしていると、詩乃さんがおこづかいをくれた。

千波に三万、洋に五万……ちょっと多くないですか？

喜ぶ千波から封筒を奪い、詩乃さんに返そうとする洋。

「私があげたいから渡すのよ。それに、洋ちゃんは無駄遣いしないって知ってるから」

「多いと思ったら貯金してね」

結局、強引に渡されてしまった。

洋が遠慮するのもわかるけど、明日歩ルートを思い出す限りでは、詩乃さんはもっと甘えて欲しいと思ってるんだよなぁ…。

難しいところだ。

ミルキーウェイで千波とバイト。

「先輩っ、千波ひとりでユニフォーム着られましたっ」

「よくできました～。千波ちゃん、似合ってるよ」

「合格だ」

どうしてこうなった。

案の定、失敗を繰り返す千波。

「俺が新しいバイト先に送ってやる」

「ぐりぐりして冥土に送ろうとしないでお兄ちゃん！？」

しかし、失敗しても前向きな千波の態度は、明日歩とマスターには好評だ。

「もっと千波ちゃんを信用してもいいんじゃないかい？」

「彼女の笑顔は作り物じゃないから合格と言ったのさ」

千波の笑顔は偽物ではない。

本当にそうだろうか、と疑う洋。

「なんで疑うんだ、俺は」

そりゃお前が千波の抱える孤独に気が付いているからだろ。

実際、千波は頑張り屋だよ。

夕方、ミルキーウェイに飛鳥が来訪。

「飛鳥くん、今度の肝試しはいつになるの？」

「肝試しじゃなくて夜の張り込みな。今さらどっちでもいいけどよ」

「で、いつやるの？」

「まだなんも収穫ねえし、わからねえよ」

明日歩はどんだけ肝試ししたいんだ。

このシナリオではオカ研繋がりで飛鳥が絡んできそうだが、“飛鳥伊麻”の出番はあるだろうか…。 

【８月１９日】

洋の不満を他所に、ミルキーウェイでバイトを続ける千波。

今日は岡泉先輩が来訪……何やら、天文部伝統のカレイドオルゴールを持ち歩いているようだが。

「僕は今日、我に返ったらこのオルゴールを手にしていた。僕の手で修理を頼むのはおそらく神の啓示だと思ってね」

「完全に壊れているわけじゃないし、直せる店があるかもしれない。見つかるまで回ってみるつもりだよ」

オルゴールよりも先輩の精神の方が心配なんですけど。

とにかく、洋はメアに万華鏡を見せる約束を思い出し、音の鳴らないカレイドオルゴールを借り受ける。

「あれっ、お兄ちゃん……そのオルゴールって……」

千波は、このオルゴールを知っているようだ。

天文部に伝わるオルゴールと千波の間に、一体どんな繋がりがあんだ？

夜、展望台でメアに会う。

「万華鏡……星空みたいにキレイなのよね」

ソワソワして寄ってくるメア。

思いっきり抱き締めたい。

「模様が……ある……」

「赤……青……緑……たくさん……」

カレイドオルゴールを覗き込み、うわ言を呟くメア。

気に入ってくれたか、よかったよかった。

洋は安心して目を離し……やがて、メアに呼ばれて顔を上げる。

「万華鏡、見えなくなったんだけど」

ネジが切れたんだな、とメアに一歩近付く。

メアは後ろめたそうな態度で一歩逃げる。

「メア、オルゴールは？」

「べ、べつに」

……。

……。

「見えなくなったんだろ？じゃあネジ回すだけで元通りだ」

「元通りになるの？」

安心したように、パァっと笑顔を見せるメアは可愛いが、何を安心したのか想像するだに恐ろしい事態だぞこれは。

「はい、まずは一つめ」

「二つめ」

「最後に三つめ」

「洋くん、早くネジ回して」

洋の手には、三分割された無惨な姿のオルゴールがあった。

期待に満ちた目で洋を見つめるメアに、思わずツッコミを入れる洋だが、そもそもメアから目を離したお前が悪いんだよ？

「あのさ……おまえ、いったいなにやったんだ」

「模様が動かなくなったからがちゃがちゃやってたらこうなった」

メアの破壊活動により、さらに分解されるオルゴール……の中から何か出てきた。

「ペンダントだろうけど……。これが出てきたのか？」

「うん。バネと一緒に」

ほぅ、なんか知らんがお手柄じゃないか。

「ネジはどこ？」

いつまでもネジに固執するメアが、可愛いを通り越して哀れに思えてきた。

勿論、全部洋が悪い。