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2010.12.07
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……。




※以下、『星空のメモリア』のネタバレ注意





















『星空のメモリア』において最強の隠し玉とも言える「乙津夢シナリオ」というのは、実は甘く心地よいノスタルジックな幻影を、エロゲ的文脈によりブチ壊しにしてしまった典型例だと思うわけですよ。


どういうことかと申しますと、乙津夢シナリオというのは、なんと夢とのセックスシーンの後にメアシナリオとの分岐点があるわけですね。

これ、普通なら主人公は大バッシングを受けますよね。

夢に恋していたはずのお前が、他の女に脇見すんのかよ、氏ねっ。伊藤誠乙っ。みたいな感じで。


しかし、この作品はかなり強引な手法でその本来あるべき非難を回避しています。

せっかくですから、今回はその手法を二点ご紹介します。



一つ目は、「主人公は夢を女性として愛しているわけではない」という建前を前面に出すことです。

このゲームの主人公は、何度も何度も「夢のことは気になるけど、別に好きなわけじゃない」と言い張ります。

また、夢自身も繰り返し「私に甘えていいけど、恋人にはなれない」と述べます。

この不自然さは、シナリオ中では互いの意固地として処理されてしまうのですが、端的に言ってしまえばシナリオ上の都合なのです。

後にメアと結ばれる(かもしれない)主人公に、言い訳の余地を用意するための姑息なレトリックです。



二つ目は「強引なループ構造」です。

夢と身体的に結ばれたあと、主人公は極めて唐突に時間を逆行し、前回と殆ど同じ日々を繰り返します。

違うのは二点。「夢とセックスしないこと」と「メアルートに分岐する可能性が生まれること」のみです。

これはどういうことかと申しますと、「時間逆行したから夢との義理はなかったことにしてくれ」ということなんですよね。

これは言ってしまえばすごい手の込んだヤリ逃げなんです。

タイムマシンを使ったヤリ逃げです。

そうして主人公は夢をほっぽってメアに流れていってしまうわけです。

興醒めもいいところです。




このような不自然を生んだ原因は、全て『星メモ』がエロゲであるという一点に集約されます。

作品として、なんとしてでも夢とメアの両方のエロシーンを入れねばならないけれど、シナリオの容量は限られています。

分量節約のために、どうにかして二つのルートを統合せねばなりません。

しかし、エロゲにおいてルートを統合するというのは、主人公が一つのルートで複数の女性と性交するということを意味しますから、それはそのまま純愛ゲームにおいてはシナリオの破綻を意味します。

それを打ち破るための仕掛けが上記の二点です。

『星メモ』はそれほど、主人公への非難を回避することに気を使い、結果わざとらしくなっています。非常に残念です。



こういう作品を見ると、私はエロゲにおける逆説的な表現の限界を感じずにはいられないのです。

限界と言いますか、今回は「制限」でしょうか。

この作品においては、全ヒロインのエロを入れつつ、純愛ゲームとしての体裁を整えるために、シナリオの自然な展開は明らかに犠牲にされました。

例えばの話、私は夢のエロがなくても決して怒らなかったはずです。

エロなどなくても、夢シナリオは一つの物語として見せ方が上手で、私の郷愁を刺激する心地よいものだったからです。

しかし、これはエロゲです。

理屈よりもエロが優先される世界です。エロがなければ、エロゲではない。

これは当然のことです。



しかし、私は思うのです。

エロを入れるためにエロに振り回されるようでは、それはエロゲの物語作品としての後退ではないかと。

私はご覧の通り、エロゲを物語として楽しんでおります。

エロゲには深みのある優れた物語を生む素養があると考えています。

しかし、斯様に「エロゲというのは懐が狭い」です。

メーカーもユーザーも狭量であり、作品の自由な発展は阻害されています。

ですから、本当に必要でしたか、と。

メアルートは本当に必要でしたか? と俺はメーカーさんとユーザーの皆さんに問いたいのです。

「メアのエロを入れる」という制限さえ無ければ、夢シナリオはもっと自然で豊かな物語を描けたのではないですか、と。

夢シナリオはここでエロゲという巨大な壁にぶち当たり、敗れて砕けたのではないかと私は愚考するのですよ。


まぁ今更言っても仕方ないのですけどね。

やはり優れたエロゲというのはエロ要素の処理や利用が上手いわけですから、『星メモ』ではそれが上手くいっていないように見えたというだけの話でしょうか。

でもそれがここまで気になるのは、結局は私が『星メモ』大好きだからという、それだけの理由なんですよね。

『星メモ』は夢シナリオにおいて明らかに、幼馴染シナリオの究極系……とも言うべき、何だかよくわからない素晴らしい境地に達しようとしていました。

あと一歩だったように思います。本当に惜しいです。









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Last updated  2010.12.07 20:11:45
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