『G線上の魔王』悔恨の残り火。
(き~みが~の~ぞむ~、すべ~てが~♪)←OPテーマ昔々、あるところに、どうしようもない小悪党がおりました。小悪党は小悪党ですから、小狡い悪事ばかりやっておりました。そんな小悪党ですが、ある時、美しい少女に恋をしました。しかし悪いことばかりやっていた小悪党には、その気持ちを伝える方法がわかりません。結局、小悪党は少女をいたぶり殺してしまいます。殺された少女には、怖い姉がいました。妹思いの怖い姉は怒り狂い、小悪党を刺し殺してしまいます。もしも、小悪党が小悪党ではなく、立派な悪党だったら、もしかしたら、皆で幸せになれたのかもしれません。めでたし、めでたし……。(花には風を 土には雨を 僕には愛を そして微笑みを~♪)←EDテーマ『キャラ☆メル vol5』を読んでいたら、『G線上の魔王』の公式短編を見つけました。題名は『炎』。無論、るーすぼーい氏の書き下ろしです。某ヒロインのバッドエンドに至った経緯を補完するための話でした。いろいろと納得です。※以下、『G線上の魔王』本編のネタバレを含みます水羽バッドエンドで、京介がユキ様に刺殺されるまでの経緯が詳しく語られました。水羽は焼死したようですよ。自分が放った炎に焼かれて。京介は水羽を利用するだけ利用し、愛情を一滴たりとも注がなかった。このルートにおける彼は、自分に都合の良いように他人を利用し、邪魔なら殺す、極めて権三に近い生き様を貫いたように見えます、外見だけは。しかし、実際は三流です。「悪とは、いまだ人の内に残っている動物的な性質にこそ起源がある」byGONZO真の悪とは、本能に逆らわないこと。本能とは、遺伝子に組み込まれた生物の行動様式の原型です。生物の最終目標は、後世まで残る何か(この場合は子孫)を残すこと。つまり、愛する異性や自分の息子を命をかけて守ることは、生物の本能の一部なんですよ。利己心ではなく保身に走れば、自ずと生物の限界も知れます。家が炎に包まれた時に、京介は我が身可愛さに真っ先に逃げ出しましたが、もし彼が本当の悪党ならば、炎の中に飛び込んで水羽を助け出したでしょう。作中で提示された『悪』で語る限りでは、愛する人を骨の髄まで利用することと、自分の全力をかけてその人を守ることは決して矛盾しません。それを理解できなかった小悪党京介には、この血みどろの結末がお似合いだと言えます。…しかし俺が思うに、もしハルの章で権三が身を以って真の悪を示していなかったら。京介は、危機に陥ったハルをあっさり見殺しにしたんじゃないでしょうか。京介が獣になり、雄々しくハルを救い出すきっかけを作ったのは、獣の王が垣間見せた悪に内包される深い愛だったことは間違い無いですから。