『あやかしびと』。夢みたものは 一つの幸福。
『あやかしびと』感想 最終尾全ルートの攻略完了。とうとう終わっちまったのか……。物足りなかったわけでは断じてなく、ただ良いゲームが終わってしまったことが寂しい。実際、『あやかしびと』は素晴らしいエロゲだった。俺の期待の遥か頭上を剛速球で突き抜けていったような印象。魅力的なキャラクター、緩急ついたシナリオ構成、燃え尽きるほど熱い戦闘描写も良し。あらゆる要素や伏線が作品内でしっかり生かされて完結しており、『あやかしびと』が一つの作品として極めて完成度が高いことは疑いようも無い。何より、この作品は人の心の強さと脆さを根元からしっかりと描こうとしていた。燃える展開に拘る余り、日常生活やそれに付随する人物の素朴な描写を怠る愚を犯してはいない。人それぞれが、それぞれの想いを遂げるために必死で戦った。それがどんな歪んだ想いであっても、その始まりには他者への愛情がある。多くの場合に敵役である九鬼先生や薫、プレイ中は憎々しく思っていた幻咬でさえ。悪鬼となる前には、間違いなく人としての一面があったのだ。そしてそれとは対照的に、身体はどうしようもなく人外であっても、人として生きるための心だけは最後まで失わなかった者も居る。「あやかしびと」の言葉の由来にも繋がる、如月双七の凡庸な願い。その中にこそ、この作品が訴えんとする最大のテーマが在ると言って問題無いだろう。つまらなく平凡で、有り触れた願い。だからこそ何よりも大切で、守るために命をかけるべきものだ。その理想の体現者となった双七を、俺は愛しく思う。双七大好きだ。双七可愛い。半分の冗談と、もう半分には本気を込めて、『あやかしびと』で最も萌えるキャラは主人公である如月双七だったと言って置こう。もちろん愁厳や九鬼先生、上杉先輩も狩人も虎太郎先生もウラジミールもおっちゃんも、みんなみんな等しく大好きなんだが。さて、ゲームが無事に終わって新たに噴出する問題が一つ。『クロノベルト』はどうしようか…。『Bullet Butlers』は未プレイなので、それに関係する『クロノベルト』は購入を控えるべきだとも思うが、聞いた話によるとトーニャが踏んでくれるらしいじゃないか。あぁぁ……願ったものは、トーニャのふみふみ……。どうしよう……困る。