アパルトヘイト政策のなか黒人たちの権利を勝ち取り、南アフリカ初の黒人大統領となったネルソン・マンデラと彼の服役中に担当になった看守の実話に基づいた物語です。
1968年の南アフリカ。刑務官のグレゴリーは国内一の刑務所、ロベン島に配属される。赴任した時、彼は国家公安局のジョルダン少佐から特別任務を言い渡される。それは彼が黒人たちの言葉、コーサ語を理解できることを利用して反政府活動の首謀者で服役中の囚人、マンデラの会話をスパイせよというものであった。
グレゴリーの妻、グロリアは夫が大物の担当になったことに喜び、出世を期待する。
ある日マンデラ夫人が面会に訪れたとき、グレゴリーはマンデラと夫人がコーサ語で交わした会話、「息子が運転免許を取った」ということを報告するが、まもなくマンデラの息子が自動車事故で死亡したと電報が入る。グレゴリーは謀殺を疑う。
グレゴリーはマンデラと接するうち、「マンデラは共産主義者で危険なテロリスト」という白人たちの常識に疑問を持つ。そして禁制品だった「自由憲章」を手に入れ、マンデラの考えに傾倒してゆく。そんな彼にグロリアは不安を抱く。
順調に軍曹から准尉に昇進したグレゴリーであったが、1975年のクリスマスにマンデラが妻にプレゼントを渡すのを手伝ったことがばれ、周囲から「黒人びいき」として孤立してしまう。グレゴリー一家は島に居づらくなり、転属を申し出るが却下される。公安は黒人の言葉がわかるグレゴリーを手放したくないのであった。しかし、転属が通らないなら辞職するとのグレゴリーの決意を聞いたジョルダン少佐は、て島の外でマンデラたちの手紙をチェックするという妥協案を出し、グレゴリーはそれを受諾し島を去る。
1982年、政府は国際的な圧力を受けてマンデラたちをロベン島から本土のポールスムーア刑務所に移す。そして、グレゴリーはマンデラの担当となる。グレゴリーとマンデラの関係はもはや単なる看守と囚人ではなくなっていた。
原題は「GOODBYE BAFANA」ですが、邦題がいいですね。確かに、マンデラは当時のニュースで大きく取り上げられて有名人ですが、グレゴリーの方はほとんど知られていないでしょう。(著書があるそうですが)
ちなみに、原題の方はラストにセリフがあります。こちらも意味深いです。
差別はいい年した大人たちが行うもので、子供は差別とか関係ないです。グレゴリーの娘にもそういうシーンがありました。
幼少期に黒人と遊んで過ごしたグレゴリーは成長して社会生活を送ってゆくうちにアパルトヘイトに染まったとはいっても、やはり他の白人とは違う観点が持てたようです。
獄中でも堂々としているマンデラも印象的でした。テロについて詰問されても、「白人たちが対等の立場で交渉に応じない以上、われわれにはこれしか手段が無い」と。そして理想の社会を目指す。
グレゴリーの妻、グロリアの不安さも伝わります。なんせ、夫が惚れ込んだマンデラがどのような人物が全くわからないのですから。
最後、釈放されるマンデラに声をかけるのが印象的でした。
国際的圧力が高まった1980年代からマンデラが釈放された1990年までの間、私は学生でしたがニュースや新聞でよく目にしました。表に出てくるのは後に大統領にもなったネルソン・マンデラですが、その裏でこんなことがあったのか、と感じさせる映画でした。
機会があればぜひ、観て下さい。