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1792年のスペイン・マドリード。
宮廷画家に任命されたフランシスコ・デ・ゴヤは王妃の肖像画を描く一方で、権力者や教会を批判する銅版画を製作していた。
教会の異端審問委員会のメンバー、ロレンソ神父は異端審問の強化を提案し、取締りが強化される。
ロレンソはゴヤに自分の肖像画を依頼していたが、ゴヤのアトリエで少女・イネスの肖像画を目にする。
ある日、イネスは異端の疑いをかけられて投獄されてしまう。裕福な商人であるイネスの父は娘を取り戻そうと、ゴヤを通じてロレンソを自分の館に招待し、教会に多大の寄付を申しでる。しかし、すでにイネスは拷問に屈して異端の罪を認めてしまっていた。激怒した父親はロレンソを責め、ロレンソに不名誉な書類に署名されることに成功する。
不名誉な書類が公になれば立場がなくなるロレンソはイネスの救出を求めるが、異端審問所長は冷徹にもそれを撥ね付けた。不名誉な書類は国王、教会の知るところとなり、ロレンソは失踪する。
15年後、ナポレオン率いるフランス軍がスペインに侵攻し、占領する。
異端審問所は廃止され、囚われていたイネスは解放されてゴヤのもとに身を寄せる。
獄中でイネスが産んだ子供を捜すため、ゴヤは占領軍の検察官を訪ねる。
その検察官は失踪してフランスに逃亡したロレンソであった。
まず最初に・・・もっといい邦題なかったのか?
原題『GOYA'S GHOST』は訳しにくいとは思うしけど。
なんかこの邦題だと、宮廷に入ったゴヤが王族や貴族たちのスキャンダルを暴く…なストーリーを想像してしまう。
ストーリーはゴヤと、ゴヤに肖像画を依頼した神父と商人の娘の数奇な運命です。
時代はフランス革命からナポレオンの没落が始まる頃まで。
この頃のスペインは反フランス革命の思想から異端審問が強化され、その後ナポレオンの侵攻があり、撤退後はさらに異端審問がひどくなるような時代です。
異端審問。「汝の隣人を愛せよ」でも異教徒は人じゃない。
私が宗教が嫌いな大きな理由のひとつです。
結局、聖職者なんて狂信的な世俗権力です。好き放題やった報いを受けると被害者ヅラするし。
主人公の一人、ロレンソ神父は高い立場にいますが、娘を思う父の強烈な一撃で落ちます。
イネスの父、よくやったという感じです。さすが商人だけあって、理屈を通して娘を救おうとしますが、どんな正論でも教会には通りません。
で、ロレンソはフランスに逃亡。革命の空気に触れて、変わります。
最後は…生き延びるために再び変節しなかったのは潔いかな?
娘を探してアメリカに送ろうとした意図は、単に自分の過去を消したい以外の思いもあったのではないかとも思えます。
一方のイネスは理不尽な理由で捕らえられ、15年も獄中生活。哀れです。
ゴヤはロレンソとイネスをつなぐ、狂言回し的な役割です。
スペインの画家の最高の地位にいながら、教会や権力を風刺した銅版画、正しく描写して醜いと評判の王妃像など、結構毒を含んでいます。
そして、なぜ『マドリード、1808年5月3日』のような絵を描くようになったのかもなんとなくわかります。この絵を思わせるようなシーンもあったし。
ロレンソ神父を『ノーカントリー』のハビエル・バルデムが演じています。
権力をバックにした堂々とした姿と、弱い人間の両方をもつ人物を演じています。なかなか良かったです。
イネスは『スター・ウォーズ エピソード1~3』のナタリー・ポートマン。
後半の哀れな姿は『V フォー・ヴェンデッタ』のスキンヘッドに匹敵するほどの変わりようです。
あと、舞台はマドリードですが全編英語です。
気にしないで字幕読めばいいのかもしれませんが。
邦題はアレですが、結構よかったです。